第35話 この世はなんだかんだで弱肉強食

 結局、なんだかんだで世の中、弱肉強食なんだよね。

「どうしたの?おじさん。もっもっ」

 ロリちゃんはチラシの上で、ビワをむいて食べている。

「ビワってさ、結構むくの大変なのに、中身は種ばっかりだよね」

 美味しいんだけどね。実が少ないよね。

「ブドウのほうが好きだなー」

 …また今度ね。

「はーい!楽しみ」

 にっこりと笑うロリちゃん。うーん、癒しだなぁ。


 話をもとに戻すと、世の中、平等云々と言ってるけど。嘘だからね。

「ぶっちゃけたよ」

 この世は、不平等ってことをしっかり認識しとこう。

「そうなの?」

 まず、諸君らが体験する不平等は、学校、幼稚園の先生による、えこひいきだね。

「えぇ…先生は平等じゃないといけないでしょ?」

 建前はそうだけど、先生も人間だからね。

 ロリちゃんは、おとなしい子とやんちゃな子どっちが好き?

「えっと…中間ぐらいの子かなぁ。あんまりおとなしいとおしゃべりしてくれないし、だからって落ち着きがなさすぎる子もやだ」

 つまり、そういうことだよ。先生にも性格が合う生徒と合わない生徒がいる。なるべく、平等にしてるだろうけど、やっぱそういうのってどうしても滲みでるんだよね。

「へぇー…」

 開き直って、あからさまな、えこひいきする先生も世の中いると思うよ。

「や、やだなぁ」

 良い先生にあたることを祈るしかないよね。ま、例え合わない先生だったとしても1~2年の我慢だよ。そのぐらいで担任変わるからね。社会に出たら、性格が合わない人とも仕事しないといけないからね。 

「やだなぁ…もっもっ」

 チラシの上にはビワの種と皮が積み重なっている。空気に触れるとビワの皮はすぐ茶色くなる。


(閑話)


 言葉の意味をそのまま受け取ってくれない人や、裏をかいてうがった見方で批判する人がいる。


 人間の感情は複雑だ。

 歪んだレンズだ。

 そのレンズを付けたままじゃあ…納得できる答えを導き出せないと思ってしまう。

 そもそも…人の感情が関わる問いに対して、万人が納得する答えって不可能だ。


 というかね!この世界は強くて運がある雄しか交尾は許されなくて…さらに、これまた強くて運がある雌しか子供を産んで、育てることしかできなかったの!

 さらに!自然も猛威を振るって、環境に適応できなかったら『絶滅』!という鬼畜仕様なのだ!これが、世界の理なのだ。

 じゃあ、いまの人間社会は何?って話だけど、人間はそれじゃあ、あんまりだと考え、ルールを作って、不平等の傾きを多少、平等になるように調整してるにすぎないと、おじさんは思う。

 そして、これからちょっとだけ『どうして人を殺しちゃいけないの?』の話もしようと思う

「え~?人を殺しちゃいけないって話につながる…?」

 なるなる。だからさ、殺しちゃいけない理由って自然界で考えるとないんだよね。弱肉強食だからさ。強いものが弱いものを食べる。自然の摂理だ。

「ぶっちゃけたよ」

 そんな感じだから原始時代とか、自然界のルールに忠実だからね。同じ人間であっても、ムカつくから殺したっていう理由でもまかり通っていたんだよ。

「えぇ…」


 人間が1人だったら、そもそも法律はいらないんだよ。

 たくさん集まって暮らすようになったから、たくさんのルールを設けないと人間同士で殺し合ってしまうから。


 おじさんが、法律を見た時の違和感。

 例えば、ペットは法律上、物と同じ扱いになる。


 道徳で命は平等。大事にしなければならないと教えてるのに、私はそういう所に違和感があった。そして、それに気が付いたとき、道徳が薄っぺらく感じた。


 それはそのはず。法律とはそもそも人間が人間のために作ったルールで。そのルールを守るのは人間しかいない。自然界は、今日がオリンピックだから、地震を起こさないでおこうなんてことはない。人間が地球代表の顔して、環境破壊がーというとなんだか、自然界すらも人間のルールに従ってくれてる錯覚に陥るけどね。


 自然界の弱肉強食と人間が作った法律ルールが混ざり合って、矛盾を感じていたけど。そもそも、全部同じ土俵の上で考えるからごちゃごちゃするんだよね。

「…なんで法律ルールが必要になったんだろうね?」

 不条理にむかついたからじゃない?

 強い人が弱い人を殺しても罪にならないけど、弱い人が強い人を殺したら罪になる。昔はこういう不条理が多かったと思う。

 でも、その時代を生きた人たちがそれを良しとしなかった。

 ムカつくから殺していいなんて、おかしいって声を上げた人たちがいた。

 人を殺したら、罪に問われる。

 そういうルールを定めた。

 それが、いまの法律ってやつだね。

 お互い安心して暮らしていけるルールの一つだ。

 当時、そう定めた時、活気的だったと思うよ。

 でも、私たちは生まれた時から、すでにあるからさ、正直ありがたみがよくわからなかったんだよね。最近までは。

「う~ん…なんとなく言いたいことはわかるけど。おじさんが10代のときに『どうして人を殺しちゃいけなにの?』の欲しかった回答ってこれでいいの?」

 いや。まだまだ、納得はしてないけど、何度も考えて文章にするって意味のあることだと思う。道徳的な話はね…やっぱ正直、う~んって感じだった。

 世の中に、法律ルールを破っても平気な人間がいるって知ったから。

 そんな人に、道徳的なことを言っても意味はないんじゃないかって思うから。


 自分たちは牛や豚を生きるために殺してる。だけど、同じ人間は殺しちゃいけない。…不思議だと暇を持て余したあの頃の私は考えていた。


 だから、そもそも人間が安全に暮らせる法律ルールと自然の仕組みを同じに考えるな。人を殺しちゃいけないってルールは、人間が人間のために作ったルールで、それはその文章以上に意味はない。

 そして、法律ルールも完璧じゃない。

 時間がかかるかもしれないけど、法律ルールは変えられる。新しく法律ルールを作れる。ってことを知っとかないといけない。

「ふーん…そんなことあるの?」

 例えば、同性婚とかね。認めてる国も出てきたしね。ひと昔前は、認められなかったけど。

「主張してきた人たちがいるってこと?」

 そうだと思うよ。

 あきらめずに、しつこくね!それが、最後に勝つ秘訣だよ。

「ふーん…まぁ、その考え、頭の隅に置いとくよ」

 ありがとう。

 おじさんが伝えたいことは、この世は不条理で…物語ほど夢はないけど、現実は時として、物語の向こう側を見せてくれるから…面白いと思うよ。

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