第11話 自殺について話すよ

「おっも!!!!本当にこの話するの?一話のノリはなんだった!?」

 いや~~~おじさん、元来、陰キャなの。暗いの。一話は頑張ってうぇ~い系でやっただけで…。

「一話もウェイ系じゃなかったよ!」

 今回、自殺について話そうと思ったのは、若者の自殺率が急増したって言うニュースを読んだからなんだ。

「う゛~~」

 まー自殺の理由って千差万別。一概に知識もない童貞ニートおじさんがズバッと解決はできないんだけど…。実はおじさんも自殺しそうになったことがあるんだ。

「……ま?」

 うん。

 そんなあからさまに聞きたくなさそうな顔しないでよ。ロリちゃん。

「あ゛ぁ~~~次の話はハッピーな話にしてよぉ…」

 わかった。次回は創作は何故美少女が多いのか?ってテーマにするから。

「それも、やだけど…重暗いよりマシね…」

 ロリちゃんはため息をつきながら、今日のおやつを食べた。今日のおやつは、真ん中に穴が開いてるさくさくのドーナツである。


 じゃあ、おじさんが自殺しそうになった話をしよう。

 最初の会社はね、嫌なことがあって、忙しくて疲労困憊ひろうこんぱいで辞めたんだけど…。

 退職願を出す前にね。横断歩道で歩行者信号が赤なのに渡ってしまったことがあったんだ。案の定、おじさんは轢かれそうになって車の運転手に怒られた。

 もちろん、運転手に申し訳ないっと思ったけど…正直…あの時…。無意識だったんだ。死のうと思って渡ったわけじゃない。ふら~~っと体が勝手に動いたんだ。運転手の怒鳴り声で、はっと意識が戻った感じ。

 でも、第三者から見たら、急に飛び出してきた自殺願望者だろうね。

 すごく気軽だったんだ。なんてことないような、いつもの日常の延長線で気軽に、無意識に死のうとしたんだ…。

 それから、電車に飛び込んで自殺する人の認識がちょっと変わった。彼らは、一大決心して飛び込んでると、ずっと思ってたんだけど…。おじさんみたいに精神的に疲れ切って、無意識に体が動いた人もいるんじゃないかって…ね。

「そんな…ことって…あるの」

 なったことある人にしか、わからない感覚だと思うよ…。


 それから、心療内科を受診して…精神的に疲労困憊って診断されて、診断書もらって、会社に提出して有給全部使って退職したんだ。そのあいだ、おじさんは上司の前で泣きまくって、会社ドン引きさせたよ。

「逆に、強さを感じる…でも、なんで、心療内科行こうって思ったの?」

 ちょっと普通じゃないかもって思ったからねー。

 風邪ひいたら内科の病院に行くけど、心が病んだら心療内科の病院に行くってあんまり思いつかないよね…。病んだら、心療内科行くって義務教育で教えてたほうがいいのではって思う。根性だけじゃあ、どうにもならない。

「ふーん」

 再び、さくりとドーナツを食べるロリちゃん…あんなに食べれるなんて…若い。


『男が泣くな』って言葉あるじゃん。

 おじさんもね、泣くのは恥ずかしいことだと思っていた。

 言い方悪いけど、悲劇ぶってる感じがしてね。強い人は泣かない。ヒーローは泣かないじゃん。

 だから、家に帰って悔しさやら、いろんな感情が溢れて一人で泣いたとき、こんなことで泣くなんて情けないやつだって思った。

 心療内科を受診した時に、先生にそのことについて話したんだ。些細なことで泣きそうになる時がある。恥ずかしい情けないって言ったら、心療内科の先生がさ。

『涙は貴方の心を守ってるんだよ。恥ずかしくない。貴方の体が貴方に、心の異常を訴えてるんですよ。だから、貴方は正常だ。大丈夫』

 って言ってもらったときは、……泣いた。

 まさにその言葉は目から鱗だったよ。

 辛かったら、泣いていいのか…って。当たり前のことだけど。そのときの私にはすごく沁みたんだ。それから、泣きたくなったら泣くようにした。


 だから、おじさんが言えることは一つだけ。

 泣けるときにしっかり泣きなさい。大声だして。

 こんな片隅で叫ぶぐらいしかできないけど

『男だって、女だって泣きたいときに泣いていいんだ』

 泣いたって現状変わらないけど、少しだけすっきりする。

 涙は効き目の薄い回復魔法で、精神防御バフだ。

 

 あともう一つ言えることは、心でも体でもおかしいなって思ったら、病院行きなさい。もちろん、病院にもいろいろあるからね。病院の先生との相性もあるから、やだなーって思ったら、別の病院に行こう。


 あと、涙の死線を潜り抜けるとね…人前で泣くの恥ずかしくなくなるよ。次の職場の時、人前で泣いて相手をびびらせたしね。

「まじ…?ちょっと、それはひく」

 回復防御バフ魔法だからね。大丈夫だ。問題ない。

「問題ありでしょ。まわりには混乱と動揺を与えてるよね」

 それでも、おじさんは、今日も、死なずにしぶとく生きているよ。

「……ほんとだね…じゃあ、まー、いっか」

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