第23話 再会Ⅱ
バーグとマリエラの二人が消えてしまった後、一体何が起きたのかという疑問をあえて口にすることなく、まずはマッシュの回復に努めた。その後、他のパーティーメンバー達は、まずはハルト達の救出する為、罠の解除装置を部屋の探す事と、倒したゴブリンから魔石を集めるチームに分かれ、各々が仕事に取り掛かった。
「うー、面倒くさい、なんでこんなに死んでるんだよ」
半分ほど終わったところで、フェリアが愚痴り始める。
「これは後にお金になるんだから、テキパキ働きなさい」
「へいへい」
なんだかんだ手際よく石を取っている姿を見ると割と向いてるんじゃないかと思う。
正直50体ほどのゴブリンだが、一体辺りの魔石の大きさは微々たるもので、例えすべて集め終わったとしても、二パーティー+二人で分けても金貨一枚もらえるかどうかだ。後は、アクセサリーと調度品に期待するしかなさそうだ。
しばらくすると、祭壇の裏辺りを調べていたアリサから声が掛かる。
「あったよ、罠の装置」
しかし、アリサは複雑な顔をしている。
「う~ん、魔法装置じゃなくて、歯車使った大掛かりなカラクリ部類だねえ、ちょっと難しいな・・・」
「ふふふ、あたしの出番だね」
フェリアが得意げにアリサの所に赴き、何かいじっているとガゴンッ!と大きな音がしたと思ったら、天井の鳥かごがガラガラと軋みながら、ゆっくり下がって来た。
「へーやるもんだ」
アリサが感心する。
「こういうのは割と得意なんだ、多分この部屋の罠は同時に解除されたと思う」
降りてきた鉄の籠には古い錠前が掛かっていたが、アリサが出向くまでもなくジェイクが長剣を使って、梃子の原理で外すと、鈍い音と共に扉が開く。
「大丈夫か、ハルト!」
「ああ、感謝するぜ、みんな」
よろよろと立ち上がり、倒れているパルシェを担ごうとするが、ジェイクに制止される。
「そいつは俺がやるからお前は取り合えず体力ポーションを貰え」
そう言いつつ軽々パルシェを担ぎ上げ鳥籠から出した。
回復したリンダが気を失っているパルシェを介抱している間に、撤退準備を始める。
「バーグのやつ一体どうしちまったんだろ」
ポーションのおかげで体力を回復したハルトはバーグの心配をしている。まったく私も人の事は言えないがお人よしだ。でもどっちかと言えば、鈍感かもしれない。
「その話は帰ってから考えましょう。今は取り合えず街に無事に帰ることが先決でしょ」
「ああ、すまないアンジェ、怪我人もいるしな」
そうして、ジェイクがマッシュを運び、フェリアがパルシェの背負うと私は置きっぱなしの荷物を背負って祭壇の間を後にする。遺跡入り口のベースに戻った時はすでに日が暮れ始めていた。翌日出立する為、夜明けまでキャンプをし、その後街に移動だ。
食事をしながら改めて遺跡を見る。この遺跡は五百年前魔神が討たれた後、魔神の遺物を封印する為に作られた物なのではないかと思う。魔法の影響が出ない為にミスリル鉱石を含む石が使われているのも納得がいく。それがゴブリンの根城にされたことで、封印の一部が漏れ出し短剣の呪いが、負の感情を持つ者を呼び寄せたのではないかと考るのだが、討たれた後に災いを起こす為に残したのか、それとも復活後、再び討たれることを予見してたのか分からない。
どちらにしても欠片が複数ない事を祈りたいがどうだろうか。数については神様は何も言っていなかったが。
「フードの神様、私達の力で封印までたどりつけるでしょうか・・・」
夜空に向かってぼそっと呟くと、隣で肉をかじってるハルトが声を掛けてくる。
「ん、なんか言ったか?」
「別に、早く帰ってマダムの手料理食べたいなって」
「ああ、そうだなあ、食料を失ってからどんなに恋焦がれたか」
「「はははは」」
二人で笑っていると、一人の少女が寄って来る。
「ハルト君」
「おお、パルシェ!もう大丈夫なのか」
「ええ、お陰様で」
「紹介しておくよ、こいつは同じ家の同居人のアンジェリカだ」
と言われた瞬間、彼女は目を輝かせガバッっと抱きついてきた。
「ああ、やっぱりアンジェリカ様!お会いしたかったです」
「!やっぱりあなたなのね」
抱きとめて頭を撫でると、こちらをジッと見つめてくる。ちょっと照れるんですが。
「魔族の姿がお美しい、わたしが思っていた通りのお方です」
「なんだ、お前ら知り合いか?」
ハルトが不思議そうな顔で見ている。
「そ、そうなの猟師やってた時にちょっとね」
適当に誤魔化そうとしたが、パルシェがさらに要らないことを言い出す始末。
「何を言っているんですか!あなた様はわたしの魔族であった苦しみを解放してくださった偉大なお方ではないですか!」
「ちょ、違うから」
手を左右に振り、慌てて否定したがハルトが近づいて小声で耳打ちしてきた。
「分かる、この娘、変な宗教的な妄想癖あるからな」
どうやら二人でいた時に、何かあったらしい。それはそれで助かるが、ちょっと複雑だ。
「あーやっぱりそいつ、あのパルシェか」
フェリアが寄ってきて抱きついてる彼女を見る。
「ああ、フェリアさんもいたんですね」
私の胸に顔を埋めながら横目で見て興味もなさそうに言い放つとコメカミに怒りマークをつけてフェリアがニヤリと笑う。
「いたんですよ」
「「ウフフフフフフ」」
お互い嫌な含み笑い声をあげる姿を見て、これから先を考えると頭が痛くなってきた。
帰りの道中は、行きの時よりカオスになっていたが、四日目ともなると、皆慣れて各々本を読んだり、寝たりしている中で私の膝枕争奪戦が今日も始まっていた。
「貴様、新参のくせに今日もアンジェ枕を奪おうとはふてー野郎だ!」
「太いのはあなたの図太い神経だけでお腹いっぱいです」
私を挟んで、今日も左右で取っ組み合いを始める。
「おい~、うるせーよ寝られねーだろ」
向かいで、腕を組んで寝ていたハルトが不平を漏らすと、私は二人の頭を両手で抱きかかえて黙らせる。
「ごめんねハルト、ちょっと黙らせるから」
「#$%&!」
といいつつ、つい力が入りすぎて胸に挟まれ二人ともあえなく撃沈。
「あ、ごめん・・・」
とはいいつつ、何か幸せそうな顔で気絶してる二人をみるとイラっとくる。
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