第10話 玉ころの思惑

 斜めに落ちていく中。集う者たちを見つける。人間を基準にすれば、異形の姿。玉ころの気を引いたのは、別の事。内包する力を使う。勢いを削ぐ。


 チッ、余計な力を使ってしまった。


 地に足をつけて立つ、人間の男。背中に回した手の中。玉ころが、ひとつ。惹きつけるほどの力の量。源を見て、不満を抱く。自分と同じ、山吹色。


 まがい物と叫んだとしても。色が悪い自分には、不利。勝ち目を探るために、観察する形が不完全。砕けるのは、時間の問題。


 音符がひとつ飛ぶ。玉ころは移動。内包する力を使って、回り込む。弾き出して、自分が収まる。触れた瞬間、力と記憶を吸収した。


 出された不完全な玉ころ。ヒビが入り、砕ける。砂になって、自然に還った。


 玉ころは満足する。80%、内包する力が増えた。


「本部で、争奪戦が開始された。我々も、始めるぞ!」


「オー!!」


 高らかに宣言する男の向こう。集うは、誰もが異形の姿。知性と品性があるが。感づいた者はいなかった。皆、肉体を壊さぬ程度まで引き上げた、力の量の持ち主なのに。


 少しずつ、玉ころは彼らの力をいただく。自分の力に変える。ちりも積もれば山となる。地で行く。ほぼ、100%になった。


 しめしめ。玉ころは笑う。いかに、効率的に力を使うか。課題だったが。解決した。無駄に力を使うまい。自分が気に入る者のところまで、連れていってもらおう。




「えっ」


 男は意表を突かれる。布団に横になった自分を思い返していた。


「わわっ!」


 辺りを見回して、男は腰を抜かす。嫌というほど、尻を打つ。視力で捉えられない床があった。


 月が無い。満天の星。遥か下に、丸みを帯びた惑星。男の脇に、扉がひとつ。


「……!」


 扉の向こうから、自分の名前を呼ぶ声。行かなくてはならないと思わせた。


 右肩が淡く赤い光を放つ。促された。立ち上がって、取っ手を握る。手前に引っ張り、扉を開く。初めて見る風景。励まされて、男は足を踏み出した。

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