第4話 サナエ

 降り立った場所から、階段が見える。


 香菜は木々が生い茂るほうへ進む。


 鬱蒼として、森みたいだ。


 香菜が階段をずっと上っていくと、公園のような場所に出た。


 1人の女性がそこにいた。


 女性のそばから見下ろすと、谷がずっと下に見えている。


 女性は下を見つめて、溜息をつく。


「どうかなさいました?」

 香菜が声をかけると、女性は振り返る。


「放っておいてください。コロナで失業して、結婚してないのに出会いもなくて」


 自殺したら、楽かな。

 女性はそう呟く。


「未練はないんですか?」と香菜は尋ねる。

 やりたいこと、やってこなかったこと。


「あるけど、今さら無理だし」


 本当にそうだろうか。


「諦めないで、挑戦したらいいんじゃないですか? 死ぬ勇気があるなら、挑戦してからでもいいと思うんです」


 女性がサナエと名乗る。


 洋裁をしたい。サナエの言葉に、香菜は何かが繋がったのに気づく。


「もう少し、お話しませんか?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る