第3話 ペガサス

 風がさらさらと吹いている。


 木の葉が舞い、光が見えた。


 見上げると、天から何か舞い降りてくる。


 ペガサス?


 翼を持つその馬は、白い毛並みにピンクのたてがみ。ペガサスはふつう、白い。


「まあ、でもペガサスだよね」


「お疲れみたいだね」

 ペガサスが話しかけてくる。


 香菜は小さくうなずく。うなずきながらも、ふつうじゃないと感じてる。


「どうしてここに?」

「道に迷って、世界の橋を渡ったよね」

「え?」

「ここは僕たちの世界だよ」


 確かにきれいな橋を渡った。


 あれが世界の橋だったんだ。


 渓谷は渓谷でも、想像してたのとは別の場所だった。


 だいじょうぶ、ちゃんと連れ帰ってあげるから。


 ペガサスはそう約束してくれる。


 ペガサスと遊ぶなんて、夢みたいだ。


 香菜はペガサスの背中をそっとなでてみる。

 上質な毛は滑らかで、なでると気持ちいい。


「乗ってもいいよ」


「うわっ、乗れない」

 大きいから、脚を曲げてくれないと乗れなかった。


 香菜は恐る恐るまたがってみる。鞍なんてない。しっかり挟まないと、落ちそうだ。


 ペガサスは、香菜を乗せて飛んでいく。


 仕事が終わってから来たせいで、もう外は暗くなってきている。


 空にいると、星がきらきらとよく見える。


 上空から見下ろすと、香菜はそこが自分の住む町でさえないと気づく。家はまばらで、町とは呼べない。


 ペガサスはひゅーっと降下して、地面にトンと脚をつく。


 離れた瞬間、泉が湧き出した。


「え? 魔法?」


 あれ、今笑った?


 なんか、ペガサスも楽しんでるみたいに見える。


 ひゅーっと下降するのは、なんだかジェットコースターみたいに重力がない感じで、緊張する。


「だいじょうぶだよ」

 ペガサスが声をかけてくる。


 そして地面に降り立った。


「それじゃ、またね」


 ペガサスは去っていく。


 でも、またね、だって。

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