第37話 地を喰らうモノ#2

コン…コン…コン  コン…コンーーー


アルスが小さな石を投げる、高さは直径5mはあろうかと大きなトンネルはいったいどこまで伸びているのか、石ぶつかる音がいつまでも響いている。




「かなり長いな、この穴は。」


アルスが深刻そうに呟く


「この穴は自然物か?」


「まあ…自然っちゃあ自然だわな」


私の問いにシェルは中途半端に答える。


「どういう意味だ?」


「ここまでの通路、ゲンキが屈みながら歩いてきた通路は我々が掘り進めた洞窟だが。この大穴はグランデ・クロウラーの食い進んだ後だ。」


「うげ…なるほど、土の中を食い進んでくるんじゃ折角の防衛用の通路も意味がないな。」


「そうだ、我々パーンはこの森で危険な大型生物から身を守るために何代にも渡ってこの洞窟の村を築いてきたというのに、このクロウラーのせいでそれが崩れる。」


「まずいな、通路が生活圏の場所にまで及べば。クロウラーをどうにかしても大型の魔獣が入り込めるようになってしまう訳か。」


「そうじゃ、しかもこのグランデ・クロウラー自身も相当やっかいな敵でな。動きは先ほどの小さなクロウラーがまるまる大きくなった感じだが。とにかく頑丈なんじゃ。」


うーむ…かなり厄介な敵のようだ。馬鹿でかいクロウラー…さっきの狂暴なミミズか。


岩盤を食い進む大型魔獣、パーンたちには天敵のようだ。


さて、そうなると私に協力を頼んだのは何故…


「ひとつ聞くが…私たちに協力を求めたのは?私たちに何をさせるつもりだったんだ?」


「ああ、そうだなーでは作戦を説明するか。」


そう言ってシェルは作戦を説明してくれた。




規格外の大きさのクロウラーはスピードは遅いらしく、岩盤を食い進む場合は老人の歩みくらいだそうだ。だが、その皮膚は厚くミミズのような体の構造は非常にシンプルで生命力が高いのだそうだ。


体を傷つけても血液はすぐに凝固し傷口を塞ぐ、心臓は複数個あるのだそうだ。


「無敵じゃん!!!何それ!心臓複数個って!そんなんあり?」


思わず叫んでしまった。


「うむ、小さいクロウラーを解剖した結果分かったことなんだがな、長い体に血液を循環させるための太い血管が複数個あって、心臓の役割をしているようだ。」


「じゃあ、弱点は無いってことか?」


「頭の方に小さな脳があって、それが弱点と言えなくもないかの。あとは塞ぎ切れないほどのダメージを与えるしかないかの。」


完全に化け物じゃないか。


「そのうえ土の中を移動しているグランデ・クロウラーを仕留めるために我々が想定しているのは、開けた場所での一斉攻撃による決戦を想定している。」


「なるほど。」


「そのためにゲンキにはクロウラーの足止めをしてほしいんじゃわ。ゲンキが魔獣を仕留めるために使った土魔法を見てワシは思ったんよ。」


「シェル、そんなところから見てたんか…そういえばいきなり声かけてきたんで、そこまで見ていたとは知らなかった。てか、一晩観察してたってことか!?」


「そうじゃな、信用にたる人物かどうか探っておったわ、実はあの場所、あの滝つぼにお主等が来た時から観察しておったんよ。まあ最初は警戒しておったんだがの、オーガであるゲンキとエルフであるアルスが協力しているを見て協力を仰げないかと思ったんじゃ。」


「そしたら、うまいタイミングでアルスが倒れるという交渉材料が出来たわけだ。」


「かかっか!悪い言い回しじゃが、そういうことかの。」


話をしながら私とシェルは笑った、アルスはなんとも気まずそうだ。


「まったく、何がおかしいんだか、んで!俺はどうすればいい?」


「んん、実のところアルスを戦力の勘定に入れておらなんだ。逆に聞くが何ができる?」


「俺はエルフだ!もちろん弓を使う。」


「弓か、正直この洞窟内では使いまわししにくいのでは?」


「んぐ…!」


弓の射線は山なりになるため、この洞窟ではどうしても使いにくくなってしまう。


「アルスは魔法は使えんのか?」


「いや、あ、戦闘に使えるようなものはー」


「そうか、ゲンキの共だからな、すまん常識外な力があるかと思ったわい。」


「悪かったな!常識的で!!」


アルスが地団駄踏みながら抗議した、普通が一番なのだよアルスくん。


でも待ちなさいアルスくん。


「アルスは魔法使えてたでしょ、ほら!火を付けてたじゃん!」


「むっ?そうなのか?」


「いや、ゲンキ勘弁してくれ。俺の魔法は魔法陣の補助を受けて種火にする程度の火しか生み出せん。」


アルスは先ほどの地団駄以上のパワーで手を顔の前で左右に振って否定する。


「なんじゃその程度か、期待させるでないわい」


「おい!ゲンキのせいでいらん恥をかいたぞ」


怒られた、健康になったアルスは相変わらず怒りっぽい。


ライターも無いこの世界じゃ火付け魔法はとてもありがたいというのに。


火…か。


敵はミミズのでっかいの…




…ああ…もしかして。




「ソロンさん!クロウラーを1匹、生きてるやつを探してください!アルスは火の準備を!」


私はソロン爺さんとアルスに指示をした。私の予測が正しければもしかすると…


考えを巡らせていると、唯一指示を出していなかったシェルが声をかけてきた。


「何かいい考えでも思い浮かんだかの?」


「わからん、もしかしたらアルスが役に立つかもしれんな。」


「ほぉ…」






もし、このクロウラーが現世のミミズと同じ性質であるならば


あるいは…

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転生オーガライフ  ~最強オーガに転生して、異世界でも元気に生活しよう!~ エルマー @elmer0926

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