第29話 パーンのシェルリンクス#3

パラパラ…


着地の衝撃で小石が崖の下へ落ちていく


私はアルスを抱きかかえたシェルリンクスを引き上げた。


「本当に危なかった、ありがとう!シェルリンクス!」


「かっかっかっ!なんのなんの、しかし久しぶりに肝を冷やしたわい。」


事も無げにシェルリンクスが言う


「アルス!アルスは大丈夫か!?」


私はアルスの肩をゆすり意識の確認をした。


「ゲンキ…もっと静かに…移動はできないのかよ?…」


辛そうなアルスがなんとか返事をする。




「かっかっか!大丈夫なようだな」


「ああ、シェルリンクスのおかげでな」


「シェルで構わんよ、ゲンキ。ところで君は土魔法を使えるのだろう?なぜ足場を作って移動しなかったのだ?」




あ…。




いや、忘れてた。というかそういう方法もあったな…考えもつかなかった。


ダメだな…時々オーガの頭は興奮して考えが浅くなることがある。


いやオーガであることを言い訳にしているわけじゃないぞ。


「忘れてた。」


私は気まずそうに言った。


「忘れてた・・・・かっかっかっか!そうか!忘れてたか!ならば仕方ないな!かっかっか!」


豪快にシェルリンクス…シェルは笑った。




「まぁ…なんだ、逆に良かった。この入口はとても険しい場所でな、一族の中ではここの出入り口も使えないような未熟者は出入りする資格の無い者と言われるからな。」


「待てよシェル、ってことは魔法で足場作っていたらどうだったんだ?」


「どうもせんさ、魔法も実力の一部さ。ただ、そうさな…ゲンキ、君を気持ちよく迎え入れよう。ようこそパーンの隠れ里へ」


シェルはホテルのドアマンのように大げさに洞窟をへ誘導するようにして言った。


どうやら、魔法を使わずこの道のりをクリアしたことでシェルの心をつかんだようだった。


まぁ、次があったら絶対に魔法使って移動しようと思った。不必要な危ないは橋を渡ることはない。






洞窟へ入ってパーンの跡を付いていく。


不思議と洞窟はぼんやりとした明かりがあり、まったく見えないということはない。


先ほど聞いた限りではここら辺は魔力を有する石が一部あり、こんな風に真っ暗ではないらしい。


魔力を含む石が何かを聞いてもよくわからんとのことだ。まあシェルたちもよく分かっていない、不思議な明るい石ってことか。


しばらく移動して、途中で湖のように水が広がる場所があり、そこで休憩をすることとなった。


「結構移動しなきゃならんのだな。」


「ああ。」


洞窟の中で通路を抜けた先にあった、その空間はとても広く地下水が込み上げてくるのかクリアな水が溜まっていた。


そこで水分補給をして、アルスにも獣の皮で出来た水筒を使って水を飲ませた。


相変わらず辛そうで、意識は朦朧としている。私はまたしても不安な気持ちになった。




「ゲンキ、お主とそのエルフはどういう関係なのだ?」


シェルが改まって不思議そうに聞いてくる


「旅の仲間?いや違うか友人かな?」


よく考えると答えに困る問だった。


「うーむ、不思議じゃの~ちなみに私とは友人か?」


「なんでやねん?」


「いや、私の知っている友人の意味とは違うのかもと思ってな。かっかっか!そうかお前らは友人か。オーガとエルフはいつの間にそんなに仲の良い種族になったのだ?」


「種族間のことは知らんさ、俺とアルスはこうなだけさ。俺もアルスも異端だからな。」


「ふーん、異端ね。まあ二人で協力して狩りをする姿や、エルフを必死に介抱して守るオーガはそうだろうな。」


「そんなことまで見てたのか?ということは昨日から見られていたのか?」


「かっかっか!そうさ、あの鳥の魔獣を警戒していたらお主等を見つけた。」


「気づかんかった。それがなんで今朝になって声をかけてきたんだ?」


「まあ最初は警戒してたんだ、こんな所に来る連中ってだけで珍しいのに、それがオーガとエルフの二人組だってんだから当然であろう?だけどもあの鳥の魔獣を狩るお主等のことも気になったんでな。観察しておったんだ、一番驚いたのはゲンキは土魔法を駆使しておることだな。」


「そういえば、魔法を使えることも知ってたもんな。」


そういえば洞窟の入口の段階でシェルは土魔法のことを指摘してたっけ。


「しかし、かなり警戒したぞ。なんせこんなヤバい奴らが我が隠れ里に攻めてきたらどうするかとな。」


「マジかよ…じゃあ、私の前に姿を現して案内しているのは真逆の行為じゃ」


「かっかっか、そうだな。だが、それ以上にお願いしたいこともあったし、お前さんがエルフ殿を必死になって助けようする姿を見たからな。信用できると踏んだんだよ。」


「ふーん、あ!そうだ条件の最後のやつ?それって何?お願い事?そろそろ教えてくれよ」


「まあまあ、村に付いてからでよかろう?ほれ行こう、もう少しだわ。」


私は再びアルスを背負い、荷物を持ちシェルの背中に付いていった。


何度かの分かれ道や上下左右に洞窟を移動して付いた。




そして、しばらく進むと


狭い通路を抜けて洞窟の中にさらに開けた空間、6階建ての建物くらい入るであろう高さもある


グランドのように広い広い場所についた。




「さて付いたぞ、我が村だわ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る