第13話 イリアという女性#1

朝…私はベッドで目を覚ます。


遮光カーテンの隙間から朝日がこぼれている。


昨日飲んだ缶ビール・タバコ・コンビニで買った食品がテーブルのうえに乗っている。


今日は日曜日だったか…時計代わりの携帯電話を探すために床を見渡す。


安い化学繊維で出来た絨毯のうえには充電器のみで肝心の電話がない…


まぁいいか…今が何時であろうと予定などあるわけでない。


私はもうひと眠りするのだった。






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前世の夢を見たのは久しぶりだ。




土魔法で作った小屋は乾燥し亀裂が入っている。


何もしなければ明日あたり崩れるだろうか…


私のオリジナル建築魔法、その名も”プレハブ”は名前のとおりの四角形の箱状の建物だ。


簡単・丈夫というメリットを持っており、現世では工事現場の仮の事務所だったり


倉庫であったりと重宝される存在だ。




「もう少し魔力と時間を使って強度を上げよう…」


瞬間的な魔法によって練り上げた建造物はあまり長い時間もたない、


しかし、土の量を増やし圧力を強めればもっと強度のある建物になる。


私は外に出た、お腹は満たされている。


アルスの肉料理はおいしかった、特に豆と肉を煮込んだスープはこの世界に来てから最も美味しかった!


味付けがほぼ無いので…前世で大学生の時に初めて一人暮らしをしたときに作った失敗作の料理の味に近い。


だが、この世界で最高の絶品だ!


アルスたちエルフの食事は1日に2食だ、昼と夜の2回、


もっと正確に言うと狩りに出る前と狩りから帰った後の2回だ。




「おはよう~アルス」


「おう!ゲンキ、今朝は遅いなぁ」


「いや…アルスが早いんじゃないのか?いつ起きたの?」


「日の出から間もなく目覚めたさ!」


早いな…流石おじいちゃん…いや、みんなそんなものか…日本も昔はそうだったて言うしな


しかし、寝坊だけは治らないなあ…前世では死ぬまで治らないと言っていたが撤回せねばな…


「寝坊は死んでも治らないからな~」


「あぁ?のんびりした事言ってるなぁ」


「それより今日の予定は?」


「予定?そんなもんねぇよ、獲物は充分残ってるし、俺は村に行って交換に行ってくるだけだ。」


そうだよなぁ…会社勤めとは違う、勤務時刻があるわけではないからなぁ


ただ逆を言うと、みんな日々の生活で精一杯なんだ…私も今より豊かな生活のために出来ることをしよう。


「じゃあ…付いていって私も何か手伝うか?」


「ーーー…いや、それはいい、いくら俺と一緒なら村に入ることを許可されたとはいえ…流石になぁ…」


「んああ…そうだわな、了解!行ってこいよ、私は家をもう少し加工することにする。」


「おお、分かった。」


気まずい沈黙が二人の間にしばし流れる。




アルスは微炭酸激マズどんぐりビールをクイッと飲んでから、気を使いながら私に聞く。


「テバシイでも飲むか?やはり一日のはじまりはーーーー」


「それだけはいらん!!」










アルスが村に行った後に、私は地面にドスンと座り考え込んだ。


いや、私としては柔らかく座ったつもりなのだが、いかんせんオーガの巨体は制御が難しい。


「この世界に来てからいろんなことがあった、だか、少し頭のなかを整理しよう。」


今までは生きるのに必死、まさに生存のために駆け抜けていった。


運がよかったことと、オーガの肉体の頑丈さのおかけで、軟弱な私の精神でもここまで生きてこれた。


そして今は、この世界の住人と接点を持つことが出来、アルスという知己も得た。


これからの生活をもっと豊かにするためにも、一度立ち止まって考える必要があったのだ。








ここエルフ村は自然豊かな土地で


北には山脈、東と南は家畜を育てるのにも適している。


私達がいるのは西の森側、危険な魔物や獣たちが生息するやっかいな森だ。


アルスはそこで狩りをして生活している。


仕留めた獣の革や肉を、生活に必要なものと交換してもらっているという。


エルフの村の文明レベルはとても低い。


木と葉、革の素材しか使えない。


他にも東にいくと他部族のエルフ村があるが、生活はどこも似たレベルだという。


他部族とは協力関係にあり、やはり物々交換で交易をしているのだという。


定期的に部族の長たちは会合を開き、いろいろな取り決めを行っている。内容は政治的なものであったり、宗教に関わる儀式のこと、部族間の婚姻や懲罰に関連したことと様々なようだ。


また、アルスが持っていた鉄製品なんかはどこで手に入れたのかを聞いた。


どうやら年に2~3回ほど商人が来て市を開き、そこで鉄製品なんかを手にいれるのだという。


商人はエルフではない。


獣人という種族だそうだ…


「いるんだぁ…獣人…」


獣人と言われ、私は昔の日本妖怪が主人公のアニメに出ていた、猫耳少女をイメージした。


「うーん、これじゃない感…駄目だ、想像できん…しかし、聞けば聞くほどエルフたちの暮らしぶりは豊かとは言えないなぁ…」


アルスは怒るだろうが、率直に言って過去の栄光にすがり、森で細々と暮らす部族…ってところかな。


もしかしたら、ここからもっと東を目指して


獣人の暮らす場所をめざした方がいいのかもしれない…


だけど…私はイリアを思い出す…


「あの子は素敵だしなぁ~」


そんなことを言いながら…ゴロンと地面に寝転ぶ




すると私のすぐそばに見たことのある素敵な足が近くにある。


透き通るような白い足と赤茶色の綺麗な髪をなびかせ


好奇心旺盛な笑顔でこちらを見てほほ笑む


「こんにちはオーガさん♪」


イリアが私のすぐそばに来ていた。

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