第2話 必要以上に関わりになりたくない奴
あれだけ
丘咲家で僕は日常的に痛めつけられている。そのたびに、瞼を閉じて痛みを僕が想像で生み出した箱のようなものに入れることをイメージすると、嘘のように痛みは消えてしまうんだ。このオマジナイにより、僕はこのクソのような家でどうにか生活を続けられていた。
急いで私服に着替え、ランドセルを持って屋根裏部屋をでる。
極力物音を立てぬよう気を付けながら、屋敷から飛び出す。
僕、
玄関を開けると、汗だくの黒髪の少女とばったりと出くわす。
「あっ……」
この杏と瓜二つの女は
「おはよ」
目を合わせず、軽く会釈をして通りすぎようとするが、
「待ちなさいっ!」
右腕を掴まれてしまう。
「何?」
鬱陶しいから無視するのが最良だが、それをすると後が厄介だ。この女、結構根にもつし。
だから、語気を強めて尋ねた。
「身体は大丈夫なの?」
不貞腐れたように叫ぶ美柑に、
「ああ、この通り」
できる限り簡潔に答える。美柑は僕の全身をぶしつけに眺めていたが、大きく息を吐きだすと、
「いくらこの軟弱者でも、少し転んだくらいで大怪我などするわけがないじゃないッ! まったく杏子の心配性も困ったものね!」
腰に両手を当ててそっぽを向きながら、声を張り上げる。
「あ、そう」
もういいだろう。この女とは必要以上に関わりになりたくはない。
そう述べると美柑に背を向けて玄関の扉を開けて外に出る。
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