第26話 狂喜乱舞 アクイド
サガミ商会の
「ズルいよな。団長達だけ、あんな格好いい魔法をもらえるなんてさ」
最年少団員のロシュが口を
「お前の魔法、どれほど貴重かわかって言ってんのか?」
うんざりした顔で、ゼムが
それもそうだろう。ロシュとその姉がグレイから与えられたのは回復系の魔法の魔導書。この帝国では、聖女、勇者、賢者の三名のみの使用が可能な奇跡の魔法。所持しているだけで、聖人たることを
「知らないよ! 俺は戦いに役立つ魔法の方がいい!」
「阿呆」
心底呆れ果てたように、掌で顔を覆うと、ゼムはいつもの
(皆、はしゃいでいるな。当然か)
団員達は例外なく皆、浮かれ切っていた。無理もない。『聖』は、教会の
つまり、グレイ・ミラードにとって、あの魔導書は、その程度の価値しかない。そういうことだろう。さらに、一億Gをいとも簡単に
だから――。
「グレイ・ミラード、奴は一体、何者だ?」
向かいに座るジュドに、その疑問を尋ねたのだ。ジュドは、少し間を置き、
「至上の
そう端的に答えた。
「いや、そう意味じゃなくてだな――」
「俺にとって、大将は村を救ってくれた恩人であり、
「そうか」
言われてみれば、あんな非常識な存在につき、何者かなど考えるだけ無駄なのかもしれない。
この度、ミラード家の
当然だ。ミラード家が派遣するのはまさに、戦力的には魔法師の大隊規模の戦力そのものなのだから。しかも、その魔法師は、全員、聖属性を操ることができる部隊。それは、いわば神話に出てくる幻の軍に等しい。良くも悪くも教会は
(大騒ぎになるだろうな)
これが、
(さて、どうなることやら)
アクイドは、《銀のナイフ》の名物――ビールとやらを喉に流し込む。喉で
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