第4話 初めての発明
それから、四か月が
私は『
魔法の獲得には火石や風石などの
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〇術名:【
〇説明:一定の範囲で、風の
〇呪文:詠唱破棄
〇ランク:上位
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これの材料は、Gランクの魔石一〇〇個と、風石一〇個、風の角笛一〇個だった。ちなみに、風の角笛は、平均ステータスG+の魔物――
この魔法は一定範囲を風の刃で切り裂く術。慣れると、今までの一〇分の一ほどの時間で魔物を肉片に解体できるようになったのである。
ステータスは次の通りだ。
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〇グレイ・ミラード
ステータス
・HP:F(22/100%)
・MP:E-(31/100%)
・筋力:F(29/100%)
・耐久力:F-(90/100%)
・魔力:E-(94/100%)
・魔力耐久力:F(2/100%)
・俊敏力:F+(3/100%)
・運:F(90/100%)
・ドロップ:F+(10/100%)
・知力:ΛΦΨ
・成長率:ΛΦΨ
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あれから、毎日筋トレをしているが、メインが魔法による
この点、F+ランクとなったドロップについては新たな発見があった。スライムを倒したとき、魔石とともに、水石になったのだ。つまり、このランクが上昇するほど、特殊なものをドロップする可能性が高くなるということなのだろう。
一応、山で飛んでいる
最近では、屋敷の
そして、この身体の持ち主、グレイ・ミラードの法律上の両親の夫妻が帝都から帰ってきた。何でも、新皇帝の
父――ライスの印象は良くも悪くも、自己主張の弱い内気な人物。対して、義母――ウァレリアは
無論、血の
これもその
「我がミラード家にはごく
「奥様、それはグレイ坊ちゃまにはまだ無理かと」
白髪の執事セバスチャンが、義母に
「いいよ。セバスチャン、ありがとう」
それだけ告げると、キッチンにある多数の
セバスチャンが
義母もそれは承知しているだろうし、私ができぬと泣きべそをかく姿が見たかったのだと思われる。もっとも、その程度今の私にとって
井戸の水を持ってきた桶に入れていると、背後に視線を感じたので振り返る。
悔しそうな顔の義母と目を驚きで見開いているセバスチャンがいた。
「奥様、運ぶのを手伝ってもよろしいですか?」
いつになく強い口調のセバスチャンに、ギリッと
「……勝手になさいっ!」
ヒステリックな声をあげ、屋敷へ入っていく義母。
「坊ちゃん、申し訳ありません」
「いや、構わないよ」
ステータスの筋力がFへと
それに、この程度の
それから、井戸の水汲みは私が
あれだ。
「早くしなさいっ!」
義母は一日一度、誰かの苦しむ顔を見なければ落ち着かないという頭のおかしいサディストだ。何をしても、私が
特に彼女――サテラは、率直な性格故に、
「八歳のグレイができるのよ。一〇歳のお前にできぬはずがないでしょう!」
泣きべそ掻きながら、必死で桶を持ち上げようとするサテラ。そろそろ、大人が出ていくべきであろうな。
私が出ていこうとすると、
「私が行きます。坊ちゃんが行けば、逆効果でしょう」
そうかもしれんな。あの義母のストレスの
「頼む」
口端を上げるとセバスチャンは義母の近くまで行くと、
「奥様、お茶の準備ができました。帝都からのお土産の菓子でございます」
それにしても、帝都のお菓子ね。ミラード家には金銭的余裕などないというのに、気楽なものだ。
「そう、ありがとう」
セバスチャンに笑顔で、答えると、
「ちゃんと、汲んでおきなさいっ!」
まったくもって、クズの
セバスチャンが手伝ったとわかれば、義母に目を付けられる。この男には、裏でかなり手を貸してもらっている。非常に使える男なのだ。というか、有能なこの男まで
「代わろう」
有無を言わさず、私は井戸水を汲み始めた。
水の入った桶をサテラと共に、厨房へと運ぶ。
「はい。これが水の桶と、これ本日の食材」
「グレイ坊ちゃん、いつも感謝だぜ!」
屋敷の唯一のコックである、髭面のおっさん――ダムが、笑顔で私から桶を受け取る。
「ああ。でも今日はサテラがやったんだ。
「またか、あのクソババアッ!」
太い青筋を額に
まあ、あんな最悪の食材を料理と
「彼女に、何か賄いでも作ってあげて欲しい」
「あいよ。任せてくれ!」
親指を立てると、早速私が提供した
「ありがとう」
厨房を出る際、サテラのそんな言葉が聞こえたような気がした。
今回は、セバスチャンの
都合の良いことに、今朝、あの男が、このミラージュに来ているとの
「すごいね……」
アイテムボックスから出した素材と食材、魔石の山に、心底うんざりしたように、ジレスは呟いた。
これはほんの一〇〇分の一にも満たないのは言わぬが花だろう。
ジレスも、アイテムボックスの機能を有する魔道具を持っているようだからこの量も問題はあるまい。
「今回はいくつか購入したいものがあります。あと、腕の良い職人に作ってもらいたいものも」
ジレスから購入するのは、多量の塩と羊皮紙、頼んでおいた魔導書関連の本。
塩は、この頃、料理に
「おーけー、見させてもらうよ」
少しの間、眺めていたが、ジレスの顔は
「どうかしましたか?」
「全てが恐ろしく新鮮だ。まるでさっき捌いたかのよう」
「それはそうでしょう。僕の貯蔵スキルは、貯蔵庫内の時間を停止させる効果もありますし」
「ははっ……冗談きついよ。グレイ君」
「いや、冗談じゃなく本当ですけど」
そう、断言する。
「……」
頬をピクピクさせていたが、
肩を数回
「き、君はその能力がどれほど
「まあ、便利ではありますね」
よくて、鍋ごと貯蔵しておけば、いつでも熱々のスープが食べられる。その程度の力に過ぎない。
ジレスは、顔を掌で覆うと、大きなため息を吐き出す。
「僕ら商人にとって、その能力は
「そんなものですかね」
「そうさ。ねえ、グレイ君、もし君がよければ、ストラヘイムに来ないかい?」
「それは今すぐってことですか?」
「ああ。君の
今すぐ、このミラード家から出るか。考えたこともなかったな。ジレスはミラード家が私を囲い込むと考えているようだ。あの義母の性格からすれば、それは絶対にありえない話なのだが。
「少なくとも僕は、今ここを出られない訳があります。四か月後にジレスさんが来るまでに考えておきますよ。それで構いませんか?」
この状況で、サテラを置いてはいけない。仲が良い悪いは関係ない。大人が子供を
「そうだね……少し僕も
「ええ、その際には是非」
確かに、サテラの件に片が付けばそれもいいかもしれないな。このとき自然にそう思えたのだ。
売却代金は、全部で六三三万
本来他の街で販売する分の塩と胡椒は、購入することはできない。今回に限りそれが可能となったのは、私がジレスに多量の新鮮な肉や食材を売却したことに起因する。
ジレスの魔法の
ジレスが旅立つ前日、いつものように宿屋の一階の食堂で、夕食を共に取っていた。
懐から昨晩
「腕の良い職人に、この通りに作ってもらいたいのです。金銭は、二〇〇万
「これは?」
興味深そうに眺め、
本来、設計図は、それで全てが完結されていなければならない。だから、設計部分しか書いていないこの設計図は不完全もいいところなのだが、如何せん、今の私はこの世界の読み書きができない。このミラード家には本がない。いや、正確には私が読むのを許されている本がない。
昨日、義母の目を盗んで、セバスチャンに数字や長さの単位の表記の仕方を教わり、なんとかこの設計図を完成させたのだ。
「井戸の水汲みを簡略化する
日本でも、大正時代に開発され、水道による井戸の消滅まで、日本の家庭を支えた文明の
「井戸の水汲み……」
ジレスの目の色がギラギラしたものへと変わる。
当然だ。昨日のセバスチャンの言が正しいならば、大貴族や富豪は水の確保に、水石を使用し、井戸など使わない。当然のごとく、水石はそれなりの値段がするし、直ぐに使えなくなる
「この棒を押して、水を汲み上げる仕組みか。でも、水を汲み上げる原動力となる魔法道具が設置されていないようだけど?」
「圧力ですよ」
圧力を利用し、シリンダー内をピストンが上下に
「あつりょく?」
「ええ、自然界には、そういったエネルギーがあるんです。このポンプは、それを利用します」
「
「感謝します」
「御礼を言いたいのはむしろ僕の方だよ。このような、胸の踊る商談に立ち会えるのだから」
「はは、では、説明するのでメモをお願いします」
私は、頭を下げると、『手押しポンプ』についての詳しい説明を開始した。
説明が終了し、一息ついていると、ジレスが恐ろしく
「一つ聞いていいかい?」
「なんです?」
「君、本当に八歳の子供?」
「そう言ったはずですけど。それに、村で僕の噂を聞いたなら間違いないでしょ?」
「そうなんだけどね。君のその知識、言葉遣い、
だろうな、実際に年上だし。
「あのですね、そんなことより、次回までに、注文したいものがあるんです」
「何だい?」
身を乗り出してくるジレス。
「ソイと、リーソを次回、仕入れて来て欲しい。ソイは出来る限り多く、リーソはある程度あればいいです」
ちなみに、ソイが大豆。リーソが米だ。昨日ダムに尋ねたら、快く教えてくれた。
ソイは北西部での主食としていることもあり、多量に仕入れることも可能らしい。リーソは東側の国の食材であり、ストラヘイムなら普通に市場で売っているようだ。
「ソイにリーソか、奇妙な組み合わせだね」
当然だ。この二つから
「かもしれませんね。それじゃ、
「了解さ。では、お互いの利益を祈って。
「
私は、ジレスから提供された果実のジュースを飲み
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