第1話 目覚め
「これ、血だな」
立ち上がり、全身を確認すると、
「小さすぎる」
これは、
混乱する中、頭を数回振ると、近くの岩に腰を下ろす。
――
転生ということは、私は死んだのだろうが、死因どころか、生前の記憶が断片的にしか思い出せない。そして、それは次第に強まっているようだ。
ともかく、この出血量だし、この身体の持ち主は、
「とすると、この衣服の血は
この幼子の服装は古いが、しっかりとした生地だ。身なりからいって、中流家庭の子供だろう。ならば、まず、今のこの姿を見れば、
岩から腰を上げ、
「うむ、気持ちがいいものだな」
上着を脱ぎ、水で洗う。ズボンも脱ごうとも考えたが、腰に布を巻きつけただけの代物であり、こんなものフルチンと大して変わらない。幼子といえども、ストリーキングをする
もっとも、問題がないわけではない。今直面する問題は、そもそも、この身体の持ち主がどこの誰かということだ。
体つきや水面に映った
とりあえず、
上着の水を絞り、木の
その間に、少し情報を整理しておきたかったのだ。
まず、私は転生して、この異界アルテリアの地にいる。とすれば、あのゲームの特別ボーナスは
「これだろうか?」
視界の左上には、《魔法の設計図》のテロップがある。テロップを押すと、タッチパネル式のキーボードと共に次のものが出現した。
――――――――――――――――
〇魔法の設計図:特定の
――――――――――――――――
よくわからんが、素材を用いて、魔導書を創造するらしい。魔導書を得れば魔法を
他の三つのギフトについては――。
――――――――――――――――
〇ギフト:スキルの上位互換であり、超常的力。
・円環領域:自己を中心とした半径三キロメートル以内の完全把握。
・万能アイテムボックス:無限に収納できる収納箱。この中では、時の流れは停止する。
・万能転移:一度、場所を記録すれば、距離の制限なしに移動することが可能。
――――――――――――――――
円環領域は、
そこには、水色のブヨブヨした透明の液体が弾んでいた。
「ほう、スライムか」
直に目にすると中々
ともあれ、これは便利だ。
次に最初の略式地図の画面に戻る。どうやら、三キロメートル以内のみ、このビデオカメラの効果が使えるらしい。
丁度、私が目覚めた崖の上にある北方に村落があるようだし、あそこで、情報収集すればよかろう。
次が、アイテムボックス。
「アイテムボックス」
叫ぶと、私の目の前に空欄が浮かび上がる。試しに、石を掴み、『
さて、身体と衣服が
……
…………
………………
あれから、二時間ほど休んでいると、周囲は薄暗くなってきた。日が完全に
立ち上がり、干して置いた上着を取り、身に着けた。
さて、少々予定は狂ったが、今からあの村まで移動し、情報を収集しよう。
ここで、使えそうなギフトは一つ。万能転移だ。
円環領域の略式地図を開くと、村が映る。やはり、円環領域の効果により、半径三キロメートル以内なら、一度訪れたとみなされるらしい。これなら、転移で村まで一足飛びに移動することも可能だが、この世界でも転移は珍しかろう。見られれば悲鳴の一つは上げられると思われる。そうなれば、情報収集どころではなくなる。
とりあえず、誰もいない崖の上まで転移してから村まで歩くとする。
略式地図の一点を触れると、その地点が赤く染まる。転移と念ずると、私の足元に光の円が浮かび上がる。円の中にいくつもの真っ赤な幾何学模様が生じては消え、その十数秒後、視界が歪み、私は崖の上に
「これは便利だ」
円環領域で確認すると、無数の蠢く赤色のマーカー。注意深く映像を見ると、
人々の服装は私が今身に着けているものよりも格段にみすぼらしいもの。だとすると、この身体の持ち主はそれなりに
ともあれ、今の私は、七、八歳の幼子。武器を持っているようにもみえないし、会って直ぐ殺される可能性はそこまで高くはあるまい。ならば、保護を求めてみるのも一考かもしれない。
私は、村人達の方へ歩いていく。
「いたぞぉ!!」
たちまち、村人達に、取り囲まれる。
武器を向けられているわけでもないことから、おそらく、私は
村人達を
「よかった。グレイ」
女性の声に、泣き声が
「ごめんなさい」
私はとうの昔に置き忘れてきたその言葉を
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