12
「先輩、わかりやすすぎですよ? 昨日の今日でそんな半袖を着てくるなんて。そんなに素肌で触れ合うのが気持ちよかったんですか?」
「っ……そっ、そんなこと……」
「少しでも触れ合う肌の面積を広くしたかったんですよね? だから慣れない半袖まで買って、期待しながら私の家まで来たんですよね?」
「ち、ちがっ……ぅ」
「安心してください先輩。昨日私が言った通りです。その期待に、応えてみせますから」
「ぁ……ぅ」
「さ、先輩。こっちを向いてください。これから私は先輩にキスをしますけど、嫌じゃないですよね?」
先輩は何も言わなかった。
ただ肩を強張らせて、きゅっと目を瞑った。
「それじゃあ――」
いただきます。
軽く唇を触れ合わせ、その柔らかさを堪能するようにゆっくりと押し付ける。
昨日のハグで距離が縮まったのか、それとも先輩も慣れてきたのだろうか。
先輩の口は閉ざされていなかった。
むしろ、まるでこちらを迎え入れるように小さく口を開けている。
「先輩? それは、舌を入れてもいいってことですか?」
「……っ、こっちの方が、呼吸が苦しくないってだけ」
「舌、入れてもいいですか?」
「別に、今更だし、キリちゃんがしたいなら好きにしたら……」
「それじゃあ、先輩。舌を出してください」
「なっ、なんで? この前は別にそんなことしなかったけど」
「あれって疲れてしまうんです。私が舌をいっぱいに伸ばさないと先輩の舌に届かないので。だから、先輩にも伸ばしていただきたいんです」
「つ……疲れるなら、別にしなければ……」
これほどまでに私を受け入れる姿勢を見せつけているのに、先輩はまだそれを認めたくないようだ。
羞恥心が勝っているのか。
それともまだ完全には警戒心が解けておらず、弱味を見せたり下手に出たくないのか。
どちらにせよいじらしいことには変わりない。
「そうですよね……私のわがままですもんね。すみません、先輩。私、自分だけの都合で勝手なことを言ってしまって。恥ずかしいところをお見せしました」
「い、いやっ、その、別にそういうわけじゃ……」
「いえ、いいんです。私が忘れていました。先輩は嫌なことをはっきりと言えないこともあるってことを。だから、大丈夫です。むしろ、気を回せなくてすみませんでした」
「だ、だからキスは別に嫌なわけじゃ……」
「無理しないでください。私は先輩に気を遣って欲しくないんです。これ以上嫌われたくないので」
「で、でもキリちゃんはしたいんでしょ?」
「もちろんです。先輩と絡み合って、先輩に私の気持ちを直接お伝えしたい。この前と同じように……いえ、せっかくの自室ですから、この前以上に。たっぷりと先輩にしてあげたいと思っています。……私は、ですけれど」
「……っ、わ、私は、キリちゃんがそんなにしたいなら、し、してあげても」
ここまできても、先輩はそのスタンスを崩したくないらしい。
だったら仕方ない。
先輩がそう来るのなら仕方ない。
ずっと思っていたこと。
ずっとしたかったこと。
先輩のその意固地な性格、ここで快楽に堕としてあげますね。
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