11

 待ちに待った休日。

 二度目の自室での先輩とのふたりきり。


 しかし先輩は見るからに緊張していて、警戒心を剥き出しにしていた。


「先輩、そんなに固くならないでください。以前みたいな無理やりはしないですから」

「う、ぅん……っ」


 先輩の緊張は一向に取れそうにない。

 このままでも私は楽しめるが、少し先輩の意識を逸らしてあげたほうがいいだろう。


「先輩、そのシャツ可愛いですね。もしかして、最近買いました?」

「あっ、う、うん……。昨日、学校の帰りに」

「とてもよくお似合いです。先輩は色白なので、ピンクのワンポイントが映えてて可愛いです。それに先輩は学校でも長袖しか着ないから半袖も新鮮で、とってもいいと思います」


 先輩は夏でも長袖を着ている。

 なるべくなら肌を出したくないという子は校内でも珍しくなく、先輩もその部類なのだろう。


「あ、ありがと……」

「普段着は結構半袖が多いんですか?」

「う、うぅん……基本はやっぱり長袖だけど……」

「そうなんですね。私が来てるみたいなキャミソールとかも似合いそうですけど。じゃあその半袖は先輩的には冒険してみたって感じなんですか?」

「ま、まあ、そうかな……」


 安心しきったネコがお腹を見せるように、私に肌を見せる程度には信頼をしてくれているということだろうか。


 しかし、前回家に先輩を招いた時は長袖だった。

 あの日私への信頼は確かに一度崩れ去ったはずで、つまり露出が増えたのはあの日から積み重ねたキスとハグのおかげということだ。


 だとしたら、どうして先輩はいま体を固くしているのだろうか。

 普段は着ない半袖をわざわざ買うほどには信頼を置いてくれているはずなのに、どうして……。


「……」

「ど、どうしたの?」


 もしも、先輩が抱いている感情が警戒とは真逆のものだとしたら……。


「先輩?」

「な、なに?」

「もしかしてですけど……期待しちゃってますか?」

「っ、な、なにが?」


 その反応で合点がいった。

 泳いだ視線。

 紅潮した頬。

 震えた声と唇。


 先輩は嘘を吐くのが本当に下手で、そんなところがまた可愛いらしい。

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