5

 次の日。

 また、いつものように私と先輩はふたりきりになった。


「先輩」

「……また、するの?」

「お願いしてもいいですか?」

「わかってると思うけど……」

「はい、1回だけですよね、それじゃあ――」


 いただきます。


「んむっ」


 今日は最初から食むように。

 優しく、ねっとりと先輩の唇を愛撫する。


「ん、ふっ……」


 先輩は相変わらずキスの最中は呼吸を止めてしまっている。

 私はキスをしながらの呼吸なんてわけもないが、先輩には難しいのだろう。少し苦しそうだ。


「んっ、はい、先輩」

「ぷはっ」


 唇を離すと先輩はいつものように呼吸を整え始めた。

 ゼーハー、ゼーハー、と肩を上下しながら何度も。


 そして先輩の呼吸が整い始めて、息を吸ったそのタイミングを狙って、私はその口をもう一度塞いだ。


「んんっ!?」


 驚いた先輩が一瞬体を強張らせるが、すぐに私の肩を掴んで思い切り押し返してきた。


「えっ? 先輩、どうして止めちゃうんですか?」

「そ、それはこっちのセリフでしょ!? 1回だけって約束じゃ――」

「先輩が苦しそうだったので、息継ぎの間を取った方がいいと思いまして……だから1回離れたんですけど……」

「そ、それは、確かに助かったけど……」

「……あの、もしかして今日の1回ってさっきのでお終いですか? あんな途中で、無理やり区切って明日までお預けなんて……」

「うっ……」

「ねえ、先輩。今日のご褒美はあれでお終いですか?」

「そ、そりゃ、一回だけって約束だし……」

「……」

「――っ、わ、わかったわよ。無理やり終わらせた私が悪かったし、もう1回なら……」


 これで1日1回という決め事は形骸化。


「ありがとうございます、先輩! それじゃあ――」


 いただきます。

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