第12話 俺と幼馴染と妹と

 俺と夏希が付き合いだしてから数日が経過した。

 今日から家の前で待ち合わせて登校することにした。

 数分歩いただけですでに汗をかき始めている。本格的な夏が近づいて来ている証拠だ。


 いつもとは違う夏になりそうな予感―― 

 お互いにそこは何となく意識してしまっている。同じことを考えていたようで、口元がふっと緩んでいる夏希と目が合った。


「あ、あき君、海にでも行きたいね」

「そうだな。予定立てないとな」


 少し甘えるようにそっと夏希が近づいてきた。

 わずかに顔が赤に染まってはいる。


「だから、通学路でいちゃつかないで欲しいのよね!」


 陽がそうはさせじと俺と夏希の間に入る。

 よっぽど補導されることを心配しているらしい。



 俺はガルルと威圧するような態度で夏希を睨んでいる陽をみる。

 夏休みの前には期末試験が控えている。陽に勉強を教わらないといけないな。


 デートに誘えたのも、そのデートが成功したのも陽のおかげだ。


「陽ちゃんはどこの海に行きたい?」

「ふぇ? な、なななな、なんであたしに聞くのよ?」


 夏希は緩めていた口元をさらに緩めて、笑顔を作り俺をみて小首を傾げる。

 どうやら思っていることは一緒らしい。


「俺たち、まだ2人きりで旅行にいけるとは思ってない。陽はしっかりしてるから、一緒なら安心だ」

「っ!?」


 陽は何やら嬉しさを覚えたのか、目にうっすらと涙を溜める。


「大丈夫、陽ちゃん?」

「だ、大丈夫……よ。し、仕方ないわね。このあたしが浜辺のデートプランを授けてあげるわ。ふっ、ふふ」


 なんだかとっても薄気味悪い笑みを浮かべる。

 だけどその笑顔はなんだか楽しそうで、魅力的なものだと俺は感じた。

 今度はみてなさいよとでもいうように大きなガッツポーズまで飛び出す。

 なんだかこのところ元気がなさそうだったけど気のせいかな。


「……」

「……」


 俺と夏希は陽のその様子を見て、顔を見合わせ自然と笑う。


 陽の言葉に従っておけば問題ない。

 次のデートもきっと大丈夫だ。



 これは、幼馴染と付き合うようになった俺が妹の助言を聞きながら愛を育んでいく物語だ。

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