第5話 ☆妹の苦悩と決意
「ばかな、バカな、そんな馬鹿なっ?!」
あたしは1人リビングで発狂しかけていた。
テレビの画面ではホラー作品が映り、そのヒロインの絶叫が今まさにリビングに木霊する。
音量はご近所様の迷惑にならない程度、だが、いつもより2倍の大音量。
「あの子狐、小タヌキ、甘える子猫みたい目、いつもさせやがってえええええ」
あたしにデートの誘いが上手くいったと報告した幸せそうなお兄ちゃんは現在お風呂。
そのお兄ちゃんにあたしの大絶叫を聞かれるわけにはいかない。
「あの恥ずかしがり屋の王者の異名(勝手にあたしが名付けた)を持っている、あのお兄ちゃんがプロポーズスタイルでのデートの誘いなんて出来るはずが……」
そもそも今朝みた小学生カップルのような初々しさ丸出しの態度をみたら、話さえまともに出来るはずなんてないのに。
「それがなんでよー?! おのれ、おのれ、夏希いいいいいいっ!!」
あたしのお兄ちゃんを、あたしのお兄ちゃんに告白だと!
当然、天才的な灰色の脳細胞を持つ、あたしは夏希のお兄ちゃんを見る目が普通じゃないと気が付いていた。
幼稚園の時から、小動物っぽい動きと仕草を武器としてお兄ちゃんに近づき、離れず、頭撫でられたり、撫でたり、したりされたりしていた。
う、うらやましぃいいい?!
あの子はあたしを知っている。おそらくお兄ちゃんよりあたしのことを熟知している。
あたしが夏希を親友と思っているように、向こうもそう思ってくれているはず。くれてるよね???
だが、それとこれとは話が別だ。
実際、お兄ちゃんが惚れるのもわかる。
夏希は可愛さではこのあたしとタメを張れるくらいだし。
告白されたことがないのは、いっつもお兄ちゃんと一緒に居るからだし。
あのスーパーかっこいいお兄ちゃんが告白されない理由も同じだし。
「
ハッとして顔を上げると、タオルで髪を拭きながらお兄ちゃんがあたしを気遣って声を掛けて来ていた。どうやら30分くらい経ってしまっていたらしい。
「ううん、なんでも……」
「そっか。具合悪いなら無理するなよ」
「ありがとう、お兄ちゃん」
「……そういえばさ、デートって具体的にどうすればいいんだろ?」
あたしを信じ切っているお兄ちゃんは、頬を掻きながら少しだけ申し訳なさそうに聞いてきた。
「っ!?」
「どうかしたか?」
「ううん、なんでもない……よかったら、デート内容もあたしが相談に乗るよ……」
「本当か、助かるよ」
ぐふふふ、鴨が葱背負ってやってきたー。今度こそ目にもの見せてやるわ、夏希。
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