第3話 初めまして

「準備はできたか?行くぞ?」

今はルトさんと一緒に冒険者の登録をしに行くため、ギルドへ向かうところ。まだ家から1歩も出てないけどね

「えっと、朝ごはん食べてないからお腹が空いてます。それ以外は大丈夫」

「あぁそうだった忘れてた、パンでも買って行くか、それでいいだろうわしも食べたいし」

「ルトさんも食べてなかったんだ、僕もアルマ(パン屋の名前)のパン好きだからそれでお願いします」

ルトさんも好きなのか朝食はいつもアルマのパンだ。そのおかげで僕も好きになったのだが

「剣はとりあえずわしのお古を渡したし大丈夫だよな、よしそれじゃあ行くぞ」

因みに僕の力についてはまだ話していない。いつか話す事になると思うけど。

「はい大丈夫です」

ルトさんの後ろをついて行きながら村を出る。その途中にパンを買ってパンの入った紙袋をルトさんから貰った。

「ここから歩いてラルドルフ、ギルドのある町に向かうからな。大体2日あれば着くからな」

「結構遠いんですね、あれ?その間ご飯ってどうするんです?」

「ご飯か、もちろん現地調達だが?」

「ですか、もしかして魔物を食べるとか」

「安心せい、流石にわしも魔物は食べたくない。食べたら死ぬとも言われておるからな。普通に動物や魚を捕まえて食べるぞ」

「あぁなるほど、それなら大丈夫ですね」

ルトさんとラルドルフのギルドへ行くために村を出て4時間ほど経った時、

「そろそろ昼飯にするか、準備をしておくからカルトはその辺で休んでるといい。近くに弱めの魔物とかも居るから腕試しをしてきてもいいがな」

「(弱めの魔物なら神さまから貰った力を試してみるのもアリだな)それじゃあ僕は近くで魔物で腕試しでもしてます」

「そうかわかった、お昼の準備が出来たらコールを使うからな、やり方は前に教えたからわかるよな」

こっちの世界に来て1週間程経った時にルトさんにある程度日常でよく使う魔法を教えて貰っている。コールもその1つで遠くの人と話が出来るというもの。

「大丈夫です、それじゃあ行ってきます」

「おぉ、強い魔物は出てこないと思うが万が一があったらすぐにわしに連絡をしろよ」

「分かりました、ルトさんの教えの通り強い魔物からは絶対に逃げます」

「そうじゃな、わしを頼るといい」

僕はルトさんから借りた剣とまだ食べてなかったパンの入った紙袋を片手に森へと入っていく。

「そいえばルトさんに修行を見てもらうことはあっても、実際に魔物と戦うのは初めてだな」

宿屋の仕事が休みの日に、ルトさんが「力はつけておいて損は無いぞ」と言って僕に稽古をつけてくれた。それをやっと実践できる時がきたようだ。そして森を歩いているとすぐにでも魔物に出会した。

「ガルルゥ」

僕がこの世界に来て初めて会ったわんちゃんの魔物だ。殺されかけた事もあって少しトラウマがあるのだが、今の僕には神さまからもらった力とルトさんから教えてもらった技術があるから大丈夫だろう。

「よし、行くぞ!」

左手に意識を集中して青い剣を出す。ルトさんの剣?それよりも僕はこっちの剣を使いたいです。そして剣を出したと同時にわんちゃんが飛びかかってきた。

「これでも喰らえ」

ザシュンッ、飛びかかってきたわんちゃんを縦に真っ二つに切り裂く。

「切れ味凄いなこの剣、あとルトさんの言うとうり四足歩行の魔物は攻撃の時に隙ができるんだな」

切り裂かれた魔物が黒い煙となって消える。そいえばルトさんが言ってたな、倒した魔物は魔素の濃い煙となって消えるって。

「よし、まだ時間はあると思うし続けよう」

森の中を歩き回り、20体ほどの多種多様な魔物を倒した。その時に赤の剣や蟹になる力を試したが、赤の剣は思いのほか重く上手く扱えず叩き切る様な感じになってしまった。

蟹になる力の方は口から出した水で魔物を倒したり、巨大化してハサミで潰したり。そして極めつけは魔物と話す事ができること。まぁ大体敵だとみなされて攻撃されるのだが。

「ふぅ疲れたな、お昼まだかな。あぁそいえばパンまだ食べてなかったな」

お昼ご飯もまだできてないし朝ごはんも食べてないのでお腹が空いてきた。という訳で木に凭れてパンを食べる。いや食べようとしていたら突然近くでドゴォーン、と大きな音がした。

「うぅ、なんか凄い音がしたな。でもお腹すいてるし、でも気になるな」

見に行ってみるか、そう思い音のした方へ向かう。そしてそこで見たものは

「うぅ〜」

そう言いながらお腹を押さえて苦しんでいる僕と同じ年位の龍人の少女だった。

「えっと、大丈夫ですか?」

恐る恐る声をかける。龍人なんてルトさんに聞いただけで初めて会うしね。

「オオォォォ」

「、、、お?」

「、、お腹すいた」

「、、、おぅ、お腹が空いてると」

どうしよう食べ物はある。確かにあるけどこれをあげると僕が辛いし。でもまぁ仕方ないかな

「えっと、良かったらこれ食べます?」

そう言ってパンを差し出すと彼女は黄色の目を輝かせながらこちらに向けて

「いいのか?本当に?」

「勿論ですよ。どうぞ」

パンを受け取って行き良いよくかぶりついた。そんなにお腹空いてるって、どうしたんだろう

「ありがとう、おかげで助かった。君がいなかったら私はどうなってたか」

「どういたしまして、僕はカルト。今はラルドルフに行って冒険者の登録をしに行くところなんだ。因みにどうしてこうなってたか聞いてもいいかな?」

「あぁ私は、ヒュドラの血が混じった龍人で名前は、、、思い出せない。と言うかその事以外何も分からない。気づいたら空を落ちてて、そしてお腹が空いてきて動けなくなってでもそこに君がカルトが来てくれた。それ以外は何も」

覚えてないか。益々放ったらかしには出来ないな。

「そっか、それなら僕と一緒に来る?嫌ならいいけど」

「嫌では無いし嬉しいがそこまでお世話になるのも」

「それじゃあ決まりね」

彼女と一緒に行くことが決まった。それと同時に『キィーン』ルトさんからのコールの連絡が入った。

「どうした?カルト?」

「あぁちょっと待ってて、ルトさんからコールが来たから」

「ルトさんって?」

龍人の少女が何か言ってたが無視してルトさんとのコールに出る。

『カルトか俺だ、ルトだ。昼ごはんが出来たから帰ってこい。ちょっと手こずったが豪華になったぞ』

「ルトさん、それなんですけど1人増えても大丈夫ですか?龍人の少女なんですけど」

『龍人の少女か、安心せい。さっきも言った通り今回は豪華だ。1人増えた所で対して変わらん』

「ありがとうです。それじゃあ今から向かいます」

『あぁ気をつけてな』

ルトさんとのコールを切る。少女の方を見るとしゃがみこんでこちらを見つめてきてる。

「えっと、大丈夫だっただろうか。私は迷惑になったりとか」

「いやいや、全然そんな事ないよ。ルトさん、僕と一緒に来てくれてる保護者?的な人も大丈夫って言ってたし」

「そうか、それなら迷惑になる。よろしく。あと出来れば私に名を付けてくれると助かる。このままでは不便だし」

「、、僕が?君の名を?いいの?」

「あぁ君に、カルトに付けてもらいたい」

「んんーどうしよう」

名前って言われても思いつかないし。どうしようと考えていると龍人の少女にあげてもう空っぽになったパンの紙袋が目に入った。

「えっと、それじゃあアルマなんてどう?」

「アルマ、うんそれでいいありがとう」

良かった。理由を聞かれなかった。聞かれても何となく、そしか言えないけど。そりゃパン屋の名前から取ったなんて言えないよな。

「それじゃあ行こっか。ルトさんが作ってくれた美味しいご飯が待ってるよ」

「うんっ」

黒く長い髪を揺らして彼女、アルマは僕の手を取り、一緒にルトさんの元へと向かった。

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