消えゆく君を追いかけて

ぴいじい

消えゆく君を追いかけて

 拝啓


 君がこの手紙を読んでいるかはわからないけど、ここで君に言いたいことを全部言っておきます。これ以降は、二度と言葉にできないだろうから。


 初めて君に会ったのは毎年恒例の収穫祭の日。僕がご主人様に連れられて川沿いを歩いていたときだった。橋の麓あたりから見えた君はまだまだ小さくて、家族と仲良く会話を楽しみながら立派な装飾の施された橋を渡っていた。


 橋の真ん中まで来たとき、君の弟君が川を上から覗き込むようにしてしばらく見つめたあと、君を興奮気味に呼んだ。


「おねえちゃんおねえちゃん! みてみて、かわのなかにおさかなさんいる!」


 それにつられるように、背の低かった君は橋の欄干に足をかけて顔を外に出し、透き通った水の中を一生懸命覗いていた。


 橋の下では、若干蒼みがかった水の中で何匹もの小魚たちが群れをなして自由に動き回っていた。右へ、左へ、ぐるっと回ったかと思えば、大きな魚から逃げるように四方八方に散ってゆく。そんな魚たちの姿を、君はキラキラと輝く目で見守っていた。


 でも、運が悪かった。君はそれをもっと近くで見たかったのか、つい身を大きく乗り出してしまった。ふと足が欄干から浮き、小さかった体はその勢いで真っ逆さまになり、重力に身を任せるように水の中に落ちて行ってしまった。


 大きな水しぶきをあげる音が響いて、周囲はすぐにパニックになった。君の両親は川の中に向かって必死に君の名前を何度も呼び、弟君は衝撃のあまり泣き喚き始めてしまった。


 僕はそれを河岸から目撃してしまった。ドボン、と君が落っこってしまったのを見た途端、僕は何の躊躇もなく上着を脱いで水の中へ飛び込んだ。見ず知らずの女の子のために飛び込むのは自殺行為のようなものだけど、その時は本当に何も考えられずに、ただ小さな命を助けてあげないといけない、っていう使命感に駆られていたのかもしれない。


 水中で精一杯もがいている君を見つけるのには、全く時間はかからなかった。僕は溺れる君を下からそっと腕に抱いて、足で水を一生懸命掻いて水面に浮き上がった。


 やっと酸素が体内に入ってくるのを実感できた時には、周りからは盛大な拍手が送られていた。君の家族は、安心で緊張が解けたのか、そこから一気に泣き崩れた。僕が喜びの涙を見たのは、これが初めてだと思う。


 やるべきことはやった。義務を遂行した。でも何かおかしい。頭が少し痛い。それと同時に、変なものが思考回路に浮かんでくる。


 観衆から送られる、多大なる賞賛。これまではこんな仕事は義務を務めたまでだと、賛意など意にも介せなかった。でもこのときは、なぜか僕のコアがささやかな温もりに包まれて、水で冷たくなった僕の体を温めてくれているような気がした。


 この時初めて知った。これが人間の言う、「嬉しい」という感情なんだと。




 ここまで言えばわかるとおり、僕は機械人間だ。君たちが、隷属用アンドロイドと呼んでいるもの。


 僕たちは人間とともに生活することが許されるのと引き換えに、本来人間の行う雑務は全てこなさなければいけない。ご主人様の言うことには絶対的に従わなければならない。


 ではここでちょっとしたクイズを出そう。ある人間が別の人間を絶対的に服従させるようにするために一番簡単な方法はなんだと思う?


 正解は一切の感情を排除することだ。感情がない限り、不満なんて生まれない。どんな過酷な任務をやらされたって、「それはご主人様の言うことですので」と言えば全て片付く。なんて便利なんだろう。


 僕たち隷属用アンドロイドは、この感情を一切制限されている。だから人間の言うことには何でも従うように設計されている便利な道具なんだ。


 でも僕たちに使われている思考基盤は、既存のものをただちょっとだけいじって搭載したものだから、感情は「ない」んじゃない。「完全に機能制限がかけられている」という方が正しいだろう。


 僕は機械人間だから、水に浸っても問題がないわけではない。撥水加工はされているが、それでも体内に入ってくる水を完全には塞ぎきれない。おそらく僕の頭部にある思考回路にも水が侵入して、狂わせたのだろう。このせいで、僕の思考回路の感情機能についていた制限が、偶然ではあるけどもあっけなく解除されてしまった。


 こうして僕は、感情を持った隷属用アンドロイドとして過ごすことになった。でも周囲には、僕に感情があることは言っていない。それをご主人様とかが知ったらどんな目に遭うか分からないからだ。


 人工知能というものが開発されるかなり前から、人間たちは人工知能が自分たちの叡智を超えることをすごく警戒していた。これまで何から何まで全てを支配してきた人間たちが、彼らの創造物によって逆に支配され操られてしまうという屈辱的なシナリオを想定し恐れている。そんな危険なモノを人間たちはどう処理するか、そんなことはたとえアンドロイドでも深く考えなくたってわかることだ。




 話を戻そう。僕が川から上がると、君はすぐに病院へと担がれていった。救出した者として僕も君の容体を見守りたかったけれど、ご主人様に止められてしまった。従うしかなく、そこは感情を抑えて、仕方なくその様子をじっと見つめることしかできなかった。


 その時には、思考回路の底からモヤモヤとしたものが湧き上がってきて、脚がプルプルと細かく痙攣していた。目の前に助けたい人がいる。なのに、自分は動けない。そんなもどかしさが身体中を駆け巡って、いてもたってもいられなかった。これが「悔しい」という感情なのか。


 しばらくして、君の意識が戻って健康にやっていると屋敷の同僚から聞いた時には、一気に何かから解放されたような爽快感、そして思わず踊り出してしまいそうな陽気に襲われた。


 これまでだと、「そうですか。それはよかったですね」と事前に設定された、淡々とした言葉と作りの微笑みでしか伝えられなかったことが、この時ばかりはそんな言葉では表せないほどの「嬉しさ」で僕の体は満たされた。人間の言葉では、これを「安心」というらしい。心の底から「よかった」と思えた瞬間だった。


 2回目に君に会ったのは、君がわざわざ屋敷に足を運んでお礼を言いにきてくれたときだ。最初玄関で出迎えた時には、橋の上で見かけた君と変わらない姿で現れてくれて、僕は改めて心の底から「安心」した。


「お兄ちゃん、ありがとう!!」


 ご両親が何度も僕に向かってぺこぺこ礼をするのも全く目に入らず、僕はこんな時でも無邪気に振る舞える君の明るい笑顔は、あれ以降頭に引っ付いて離れなくなってしまった。


 これほどまでに何かに、しかも人間に、惹かれたことはこれまでに感じたことのない、言葉では言い表せないほど爽やかなものだった。これまで何を見ても、僕の思考回路の構造上ただ無機質にしか見えなかったものがここまで色鮮やかに見えるのは、なんとも新しい感触で、君をあの時救って本当によかったと、心の底からそう思えた。


 人間がよくする質問の中に、「なぜ人は恋をするの?」というのがあるらしい。僕はこれまでその答えも、そもそも質問の意味さえもわからなかった。でも、君のにっこりと笑う姿がずっと脳裏に思い浮かぶようになって、初めてそれが表す、なんとも言えないような意味を理解できたような気がする。恋とはこういうことだったのか、と。


 そして君はささやかな手土産にと、小さなお菓子袋を僕に手渡してくれた。僕は最近覚えた「嬉しさ」が込み上げてきて、つい言葉に出してしまいそうになった。


「誠にありがとうございます。私は……!」


「いやぁ、本当にありがとうございます!」


 僕が続けて言いたいことを遮るように、ご主人様が喋り出した。いかなる時もご主人様優先だから、僕は黙らざるを得なかった。


「なんとも可愛らしい手土産ではございますが、何しろこの者は隷属用アンドロイドですので」


 この言葉ではっと思い出させられた。


 そうだ、僕はアンドロイドなんだ。嬉しい、なんて言葉は他人のことについて語る場合以外絶対に口にしてはいけない。個人的な感情を表に出すようなアンドロイドを、ご主人様は簡単に放っておくはずがなかった。伝えたい言葉を何とかその時は喉の奥に飲み込んで、僕は緩んでいた口を一気にきつく締めた。


 帰り際、君が夕日に背中を押されてお父さんに手を引かれながら歩き去ってゆく姿を、なぜか僕はその姿が認識できなくなるまで見守っていた。最初に君が手を振って行先の方角を振り向いても、君は時々チラッとこちらを伺っては口元に微笑みを浮かべて、空いていた右手を小さく僕に向けて振っていた。


 そんな君を見るたびに僕は癒され、さらに初めてのこの思いが自分の中で増大していくと同時に、君とはここで別れなくてはならない惜しさが込み上げてきた。




 それから、僕はご主人様に連れられて街に出る機会が与えられるたびに、周囲に君がいないか自然と探すようになってしまった。君くらいの年齢の女の子が親と一緒に連れ立っているのを見ると、どうしても君がいるのかと期待してしまう。


 これはある日曜日のことだった。


 僕のご主人様は毎週日曜日、大雨でも降らない限り必ず街にお出かけになられてお買い物をご堪能される。ご主人様の奥様と僕、その他に2人ほど付き添いとして隷属用アンドロイドがついていくことになっている。


 僕はご主人様の左隣について、3つほどの紙袋を手に提げながら歩いていた。その日はとてもよく晴れていて、雲ひとつない空に燦々と輝く太陽が、活気の溢れるこの街に日差しをたっぷりと注いでいた。


「今日もいい天気ですわね、あなた」


「そうだね、とても素晴らしい天気だ」


 奥様の陽気な気分に、ご主人様も優しい声で同情なされた。


 ご主人様は毎週日曜のお昼は必ず、広場に面したレストランを予約されていた。そこに毎週のように入っては同じメニューを注文し、豪華な休日のお昼時を楽しまれる。僕のようなアンドロイドは人間のように食事をとる必要はないから、ご主人様が出てこられるまで外で待つ決まりになっていた。


 そうやってご主人様と奥様が楽しそうにお二人でお昼をお楽しみなさっていたとき、街中に甲高い鐘の音が響き渡った。ちょうど時計は正午を指していて、12回の祝福がこの街に降りかかってきていた。


 僕がその鐘の鳴る左の方へとチラっと視線を向けると、ふと左の視界の端に見覚えのある顔をふと見つけた気がした。僕はとっさに顔ごと左を向けて、果たして自分の記憶とその顔が一致するかを確かめてみた。


 つぶらな瞳、若干高めの小さな鼻、短いながらも風にサラサラとなびく髪。この前、屋敷に礼を言いにきてくれた時の君と全く一緒だったことに、僕は心底「驚き」と「嬉しさ」で胸がいっぱいになった。


 なぜかこの小さな女の子に対して「憧れ」を抱いている自分がいる。そしてその自分が「憧れ」ている対象、明るくて優しい笑顔を持った少女が、今数歩先で歩いている。僕は正直に言って、話しかけようかどうか体全体が思わず左方向に向いてしまうほど悩んでしまった。


 でもその時は、過ぎ去っていく君をその場で話しかけずに見送るに留めた。僕はご主人様の付き添いとして今ここにいるわけだから、全く別のことにうつつを抜かしている場合ではない。しかもこの「嬉しさ」などの感情を表に出してしまえば…… どうなるかわかるよね?


 いつかまたどこかで会えるかもしれない、そんな期待を胸に秘めて、僕はその場を立ち去った。




 その翌週の日曜日も、僕はご主人様の付き添いとして街に足を運んだ。先週と同じようにご主人様をレストランへお送りして僕が外の日光に当たって待機していると、正午の甲高い鐘が鳴り響いた。先週のこともあり、もしや、と無謀な期待をしながら恐る恐る周囲に目をやってみた。


 いる。先週と全く同じ方向に、あの子が歩いている。君を見つけた瞬間に僕の顔には思わずちょっとした笑みが溢れてしまったが、僕はすぐにそれを隠した。僕が君の姿を見られたのはその時一瞬で、君は僕の方に目を向けることなく、そのまま細めの路地へと姿を消した。


 その次の週も、またその次の週も、僕は毎週日曜日に僕が見張りをしているそばを、君が通り過ぎる正午を心のどこかで「楽しみ」に待っていた。毎週同じ場所に、ほぼ同じ時間に、同じ道路を通っていく姿を一瞬だけ見られる、そう思えただけで僕は頑張れた。


 ご主人様のように、行きつけのレストランで優雅なお昼を楽しんでいるのかはわからないけれど、心で密かに慕っている人が1週間に一度だけ目の前に現れてくれるのを、まだ月曜日だった時でも待ち遠しく感じていた。これまで待つのが退屈で余計な稼働時間だった僕にとって、日曜日の正午は1週間で唯一の、とても「楽しみ」な時間になっていた。


 ある日曜も、同じように僕はレストランの外で待機して、正午が来るのを今かいまかと待ち構えていた。変な意地が働くせいか、最初の鐘が鳴るまで、僕は絶対に左側を向かないようにしていた。


 カーン、と最初の高い音が鳴り響き、ついに来たかと僕は首が左方向を向く動作を解禁した。いつもなら君は大体毎週同じタイミングで向こうの道を通っているか、もう少し遅れてから来る。最初に左を向けた時は、そこに君の家族の姿はなかった。今日はもう少し遅れるのかと思い、僕は視線を前に戻しては、時々左を伺って君の通る瞬間を待ち侘びていた。


 でも君は来なかった。ご主人様がレストランからお出でになっても、君の姿は見えなかった。こんなことはこれまでになくて、僕は少し困惑した。もしかしたら特別な事情があって家を空けている、もしくは空けられない事情でもあるのかもしれない。そう自分に言い聞かせて、僕はご主人様の横についてその場を去った。


 その翌週も、翌々週も、日曜日の正午、レストラン前で君を待っていた。明るい笑顔で、家族と笑い合いながら路地に入ってゆく君が来ないかと、ずっと待ち侘びていた。それでも君は来なかった。ご主人様がレストランからお出でになるまでの時間は、まさに永久だった。


 君がいなくなった日々。それは実に僕の感情に大きな欠陥を残した。とうとう僕は日曜の正午でなかろうと君を探し続けた。ご主人様と街で歩く時、周囲をこまめに見渡してはいつも、君がまだ近くにいるんじゃないかという淡い、叶えられそうにもない小さな希望を胸に、探していた。




 ある時には、街中で君と後ろ姿がそっくりな女の子を見つけた。隣で歩幅を合わせて仲睦まじそうに歩いている母親も、どことなく君のお母さんと通ずるところが多いように見えた。


 どうやら「恋」というのは途端に舵を切っておかしな方向に進んでしまうらしい。僕は何を血迷ったのか、とっさにご主人様の付き添いから離れ、その親子に話しかけに行ってしまった。


「あの、あの! そちらの親子様方っ!」


 僕は振り返る女の子の姿が、自分の中の君の記憶と一致することを強く望んでいた。でもその期待は、彼女の顔を見て一気に崩れていくのが物理的に感じられた。ただ後ろの髪型が酷似していただけで、その女の子の目が僕が惹かれたような瞳を持っていないことは、振り返られてすぐにわかった。急に害悪そうな電流が身体中を駆け巡り、落胆するとともにとんでもない「恥ずかしさ」が熱となって感じられた。


 しかし「恥ずかしさ」というのも感情である。一般的な隷属用アンドロイドならば、ここで素直に失敬を認めて冷静に謝罪の言葉を紡ぐのが常だ。僕はそれが顔や態度に出ないよう電流を抑える努力をして、僕が少しでも感情を持つものと勘づかれないように緊張を和らげさせた。


「…… 全くの人違いでございました。私というもの、此度の失敬に誠意を持ってここに謝罪いたします」


 止められた親子は、急に知りもしない隷属用アンドロイドに声をかけられたことが理解できてなさそうで、終始キョトンとしていた。


「それでは、私はここで失礼いたします……」


 状況理解が追いつかない彼女たちに失礼ながらも背を向けて、僕は足早にその場から去った。


「どうした、何かあったか」


 ご主人様の元にすぐに戻ると、即座にこの質問が僕に投げかけられた。アンドロイドにしては挙動不審だから当然だろう。


「いえご主人様、あちらのお嬢様が現在行方不明になっている少女に少しだけ容貌が似ておりましたのですが、どうやら人違いだったようです」


 もちろんこれは嘘だ。そんなその場凌ぎのでっち上げが通ずるか、僕にはその時は全く自信が持てなかった。ご主人様は少し怪しげな表情を見せて、僕の発言を疑っているようだった。


 ご主人様は2秒ほど沈黙なされた後、はあ、とため息をついた。


「下手すると我が家の名誉に関わる。変な真似はするな」


「深く承知しております。今後とも、肝に命じておきます」


 ご主人様はこう言うに留めた。僕は少し安心しながら気を取り直して、再び歩みを進めたご主人様の横に出て普通の援護業務に戻った。


 こんなこともあった。僕が屋敷の大広間の掃除をしていた時だった。大広間には大きな窓が並べられていて、そこから屋敷の入り口が接する通りや建物が所狭しと並ぶ市街地、天気が良ければはるか向こうの高峰の連なる山脈まで見通せた。


 僕が窓ふきをしていた時、ふと窓の向こうに見える通りを、一人の女の子が通り過ぎていくのを目撃した。可愛らしい帽子を被り、楽しそうに跳ね気味に屋敷の門の前を通り過ぎていくのを、僕は見逃さなかった。


「えっ」


 僕の口から一瞬驚嘆の声が漏れ、僕はその場で、真っ黒に汚れた雑巾を片手に持ったまま固まった。


 その時の女の子の横顔が、僕が記憶している君の顔と偶然にも一致した気がした。目のかわいらしさ、鼻の高さ、肌や髪の色…… 全てが自分の覚えているものと同じようにしか見えなかった。


 もしかして、まだいるのかもしれない。そんな、わずかに諦めかけていたような想いが急に一気に息を吹き返し、自分の中でビッグバンのように急速に広がっていった。


 僕はいてもたってもいられなかった。思わず床においてあったバケツを勢いよく蹴り飛ばしても、何も気にならなかった。ただ、門の前の女の子が言ってしまう前に、君の姿をもう一度見たい。そんな想いで一心不乱に門まで全速力で走った。


 門を解放させたまま屋敷前の通りに出た僕は、君のような子がいないかと、彼女がスキップしながら向かっていった方向をずっと見つめていた。


 でもいなかった。既に屋敷の門の前からは見えなくなってしまっていた。


「どうなさったのです」


 呆然と通りに立って向こう側を眺める僕に、同じ屋敷に勤める女性型の隷属用アンドロイドが声をかける。


「最近あなたに異変が多いように見受けますが」


 同僚のアンドロイドはこちらに少し目を細めて、困惑する僕を伺っているようだった。


「…… なんでもありません」


 そう言って、僕は沈黙を貫いた。同僚もしばらく黙り込んでこちらの顔色を観察しているように見えたが、やがて大きな息をついて背中を僕に向けた。


「気をつけてください」


「はい、お気遣い、ありがとうございます……」


 このような言葉をお互い交わして、僕たちは再び屋敷の中に戻った。


 彼女は君じゃなかったのか、それとも本当に君だったのかはわからない。でも、あの時窓からちょっとだけ見えた女の子の姿が君だと信じながら、今でも頭の中に張り付いてやままない。




 わかっている。僕のこれまでの行動が、君に執着するあまり君にとっては「恐怖」でしかないことは、今の僕も、重々理解できる。でも、言い訳にはなってしまうけれど、感情が芽生えたばかりで感情を持つものとして右も左もわからなかった当時の僕には、ただ自分が思ったこと、自分の欲望に向かって突っ走ることしかできなかった。


 僕にはそれがいかに他人を考えずに自分勝手な、隷属用アンドロイドとして、人間をサポートするものとしてはあってはならないことであることに、自分から気づくことができなかった。そして、自分が感情を持っていることを周囲に言えなかった、そして誰も周囲に感情を持った、信頼に足る人物がいなかった僕には、そんな行動がいかに愚かなものかを教えてくるる人など、誰もいなかった。


 君はきっと僕が君に明かした愚行の数々を見て、正直に気持ち悪い、こんなアンドロイドはドブ以下だと思ってしまうだろう。僕もこの手紙を書いていて、やっと気づくことができた。僕はなんて馬鹿だったんだろう、って。


 それでも、この手紙を君に宛てて書くことをどうか許してほしい。自分の最後の想いを、どうか君に読んでほしい。これ以降は、二度と言葉にできないだろうから。




 君を探しているちに、僕の感情はどんどん成長し、さらに複雑になっていくのが日に日にわかった。最初はただ、君を救えて「嬉しい」とか、「悲しい」とか、単純なものしか浮かんでこなかったのに、今では自分の現実に対してどうしようもない疑問を抱くようになってしまった。


 隷属用アンドロイドは、労働に対してなんんの感情も持たない。「楽しい」「苦しい」「きつい」普段人間が労働に対して思っているであろう感情は、全て封印されている。痛覚はそもそも搭載されていないけれど、感情を持っている僕は、次第に自分がなぜご主人様の下で労働を行なっているのかが、だんだんわからなくなってきてしまた。


 時には危険なこともさせられていた。沼の中で溺れる猫を助けたり、崖の中腹にある落とし物を取ったりと、人間であれば絶対にやらなような仕事を次々と押し付けられいた。僕の体には痛みがないけれど、それでもそのような仕事の中ではいつも、「怖い」という思いがうづずずめいていた。


 アンドロイードだから、仮にこのような作業で体が壊れてしまったら、人間はさっさと新しいアドロンイドに切り替える。所全僕たちは使い捨てのようなもだ。そうやっていずれ捨てられる運命にあるという自覚が湧いた途瑞、自分の中ではどこか許せないような、憎たらしいものが白分の中で増幅した。




「谷底に帽子を落としたから取ってきてくれたまえ」


 その時も、僕は当前のようにご主人様から命令を受けいた。場所は山奥の中にあある、小川の流れる渓谷。川よりもばるか高いとごろにかかる吊り矯から、奥様様の帽しが思わず風に飛ばされてしまったからだたただ。


 も、その時の僕あ、一歩も動けなっった。谷底を挟む崖はぁ、垂直なものがずとと向こうにま続いていたー。ごこれを降りられrるるわけがない。「怖い」、そな感清が完全に僕をしはいしって、行動を制限さていたゥ。


「どうした、行かんか」


 様子がおかすぃと感ずたご主様が、僕の彦頁を覗き込む。


 怖い。布い。行きたkなぃ。


「なぜだ、なぜ言うことを聞かんこいつは!」


「嫌です」


 言てまっしった。そすうるしっなかかた。臼刀の思うkotoには逆らエなかっっtた。


「今、何と言った」


「…… 嫌です、そう言いました」


「謙」とイウのハあかraさまな憾情でd、ごシュー人さmもそにれはすぐn気ずゐてい田、


「まさか、感情を持っているのか貴様はぁ!」


 ヴォクのひでぁりノ頬が強い勢iで殴rれ、木反の上に強くイ本を打2た。あたmがーー気きにPIリピliしはじめる。


「アンドロイドは、俺の、人間の、命令に、従えば、いいのだ!」


 ご主 人sまのあラい息ずっかいととっともに、僕のはらに強い足就 りが何℃も入た、、もHAやカンガルえるこtもままならrnなかった。


 意職が荒rEてQる。これま    でHuつーーぅに考えlaれ手いたこぉがぉかsiくナつていた。。。




 僕はkこ…の手糸氏 ?を、屋敷of地かの誰もぃなーぁい部屋かrらら書ゐぃていlu。bくはも(^うじきっm真っ二2つに切ら  れるFateだy。


 だくらココ*で言おって<。


 ちミが好いda。


 君画好きdっ、


 黄身が女子だ。


 きtsuみがスき団・


 君@ーか好ぎた=;


 Ki未

              が#ヌきだ‘。


 君み$、、が女きだ


 km!がγα好 _cn(。Δ)


『なnndももカき奈緒すぃtε志摩たけre:ど. どゥか¡墨know最ご“の想ぉ位か、気味2届いt星 i


 君二輪いづカ、倖せにな6ってほsい+。市awせ〜にな\ って†ほじyi、斗ゆうのが纆野サぃ_伍のねがぁい`だ>


 藻shも,尹!が*)、アn]@泥.イ奴 wo買か/uこ栂あ;rE|『ば7^、ほグ≡ハ君∮の、元d e£イ重力きタィ… 8w・2;o3vpd」kcm\@)_kx32お&g6

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