第2話 鬼ヶ島
「我は、これより二日後、鬼ヶ島へ財宝探しの旅に出る。そこで手に入れた宝はお前たち領民に等しく分け与えよう。志ある者は明後日の巳の刻、再びこの海辺で会おうぞ。」
領主はそれだけ言うと大勢の家来を連れ、去っていった。すると、とたんに村の女たちが身を寄せて話し始める。
「いやだね、領主の金儲けに手を貸すなんて。私らにゃ、一銭も分けてくれないのにねぇ。」
「ほんに、ほんに。前にどこぞの山で取ってきた宝だって全部屋敷に持ち帰って大事に蔵にしまってあるって話じゃないか。」
「しかも、鬼ヶ島っていったら、あの人食い鬼が住む島だろう?ただでさえ、生きてくのに必死な私らに領主様はわざわざ死にに行けってのかい。」
「冗談じゃないよ、まったく。」
「
話の輪から少し離れたところで、今にも帰ろうとしていた娘に女は言った。
「……。」
桃瀬と呼ばれた娘は女の方を向くと、目は伏せたまま、小さく会釈してその場を立ち去った。
「なんだい、あの子はいつも、いつも。口はきかないし、愛想もないし。」
「
「茂さんといえば、奥さんを最近見ないねぇ」
「それがさ、……」
女たちは、次は自分たちに無関心な娘の家に話題を切り替え、井戸端会議を続けた。
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