03 ENDmarker01.
ゆっくりと、歩く。
環状道路の、歩道。
ここは、わたしの住む街、その外縁をぐるっと繋ぐ重要な道。そして、車ばかりが通っている。
この道路に歩道があることを、ほとんどの人が知らない。わたしだけの道。心がくるしくなると、いつもここを歩く。
環状だから。どこにも行けないし、どこにも辿り着かない。元来た場所へ戻るだけ。それに、歩きでは。どうやっても一周なんてできない。
恋人が、消えた。
ただ恋愛が終わったのだと、なんとなく思った。初恋だった。お互いに好き合っていて、ずっとこのままだと。そう思っていたから。いなくなったとき、衝撃よりも先に、夢から覚めたような感覚があった。ああ、幸せな夢だった。起きてごはんを作らないと。そう思ってしまった。恋人の不在を、受け入れて。その瞬間から、ひとりで生きて。
「なんて薄情な」
ひとりごとは、通る車がかき消した。タイヤが道路を踏みしめる、低くて落ち着く音。
「わたしは」
どうしたいのだろう。
こんな、環状道路の、誰も知らない歩道で。ひとり歩いている。遠くに街のネオンが見える。星空も。ネオンの明るさがあるのに、星空は満天で綺麗。流れ星も時折流れていく。
きれいな景色なのに。わたしはまだ、ここにいる。恋人を失ったまま。
「違う」
失ったのは、わたしのほう。
恋人のもとを去ったのは、わたしのほうで。
わたしはひとりで、ここにいる。
「しにたかったのかな、わたし」
心が、凍ったみたいに、冷たくなって。静かになっていくのを感じる。
「ここでしねるのなら。それでもいいかな」
環状の、歩道で。どこにも行けずに、静かに消える。わたしの終わりとしては、ちょうどいい。夜に、手を伸ばした。虚空。なにもない。
「ばいばい、夜の女神。好きだった。好きだったよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます