耳が見えるよのころ「見えた」もの

耳が見えるよ

https://kakuyomu.jp/works/16816452218641590341


第一回川辺の創作怪談会

https://kakuyomu.jp/user_events/16816452218507668648



 そういや全然書いてなかった。当時のことをいろいろと思い出しつつ……ただなんでそれ考えたの?ってあたりが実はこの話さっぱりなんだよな。



<お題の調理>


 今回のお題の肝である、「創作」怪談。階段をパロディするとかではなく、怪談を書く。レギュレーションは


・自身の怪異の体験を振り返って語る形式

・もしくは、他者の怪異の体験を伝聞調で語る形式

・語られる怪異の内容については創作とする


となっている。なので創作の部分は怪異に寄るのだろうなという解釈をした。


 さて、調理するにも第一の課題がさっそく出てくる。蒼天、ホラーの引き出しがめちゃくちゃ少ない。見るのも読むのも。なので「怖い話って?」という所からのスタートとなる。というか怪異ってなんだ。トンチキではないのは流石にわかるとはいえ。うーん……


・しょうがないので既存の怪異から情報を抽出しようとする


 そんな状態だったので、先に投稿されている参加作品やホラータグの物をちらほら見に行った。こういう時、「見えなきゃ書けない」が転じてあまり他作品に影響受けづらいのはいいよな。なんかホラーの楽しみ方とずれている気がするが、以下の傾向を抽出する。


・怖い、と語り手が感じたものは何らかの悪意をそこに見出すようなものである

・よって怪異の対象が「こちらに向いている」とわかった時に恐怖になりえる


 おお、なんかこれならある程度理解できる要素になってきた。2番目の要素のおかげで、怪異自体にもトレンド?的なものがあることも把握。こちらに向く、なので手、こちらに向かってくる音、向かってくる足、見てくる視線、手繰り寄せられる感覚、etc...。


 さて、ここから考えると、「ただなんかそこにあるもの」は案外怖くないのではないか。気持ちは悪いがこちらに向かってこないものが指向性を持った瞬間にそれは怪異たりえるのではないか。生理的な気持ち悪さで言うと虫とかだが、動くからな……というか目にする、その場にいるのがアウトってのもあるしな……


 ……耳って話読んでても見なかったな。確かに、音の受容体でその場から動かないしな。浮く耳は知らない。ならこれって弄れないだろうか。でも指向性を持った耳なあ……ありえないものが突然出てくるとか?耳に何があるよ。穴?穴から……穴から、穴…………


 そうだ。耳の穴から吐瀉物だそう。


 ……


 …………嘘みたいな事に、ここ一発なんですよ。手とか視線とか虫とかじゃなくて、最初からまさかのゲロなんですよ。なんでだよ。本当になんでだよ。疲れてたのかお前。ここだけ謎の爆速で今思い出しても不思議だ……お前の引き出し時々核弾頭出てくるの何なの……?



<話を「見よう」とする>


・舞台

・人物

・人物の行動

・雰囲気


 これらが固まると映像が見えるので「見える」と呼んでいるのだが、この時点で全く見えていない。何なら耳からゲロがマーライオンという前代未聞の怪異しか見えていない。いやこれだけ見えてんのも嫌だけど。

 この辺りでようやく「怪談」という話の構造に戻る。誰かが語る恐ろしい話。つまりこれは、語る誰かがいるのだ。怪異からの生存者かもしれない。人伝に聞いて何かに気が付いた人なのかもしれない。ゲロ、かかりさえしなければ匂いがきついだけで命は奪われないかもしれないということで、語り手は生存者に。嫌な理由だなあ。


 この辺で、一つ勘違いをしていたことを謝罪。怪談と言われて想像していたものが、完全に「百物語」に固定されていた。これの何が枷というと、「数人集まって怪談を話し合う」までがセットと思っていたのだ。なので、語り手が怪異を見た者である場合、「何かしらの影響を受けたかもしれない誰かがその語る場にいる」という所までが見えるか見えないかの対象になっていた。

 後に、講評と他の参加作品の終わり方を見てようやく気が付いた。そういう意味では人を選ぶかもなあ……耳からゲロって時点で人を選ぶのはそりゃそうなので無視するとして…………


 耳だけでは怪異にならず、ゲロを伴って怪異になるという説明だけだとそこそこ意味不明の怪異になってしまったので、主人公もかなり最初は侮るだろうと思って一度安心させる挙動を取ったりした。そこからの転落のオチをどうしようと思った結果が上記の「語り手がその場にいる」問題。耳はともかくゲロに意味を持たせず、何処から来たのかがわからないし今度はそっちにも指向性が向くぞ、までを物語とした。イメージが「世にも奇妙な~」の話後のストーリーテラーなんだよな。



 怪談ってなんだろうなあと思って話を書いたのが今回初めて。「普段自分が書かないもの」をお題に据えられるあたり、面白いなあと思ったりしています。



 出てきたのが耳から吐瀉物なんで、変な扉もついでに開いた気もしますが……

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