第51話 超絶技巧フィンガーテクで女子大生を落とす俺……(滝汗

 太ももはまずいだろ、太ももは。

 いやほんと、太ももはまずいだろ太ももは。


 とても大事なことなので2回言いました。


「えっと、いや……」

「どうしたのカナタさん? 下から順番に上がってきたから次は太ももをやって欲しいんだけど」


「……」

 本当にいいのか?

 マッサージと称して女子大生の太ももをモミモミ触っちゃっていいのか?


 うつ伏せに寝転んだままのユキナの表情は、俺からはうかがい知れない。

 状況から判断するしかなった。


「カナタさん、まだー?」

「……」


 くっ!

 このまま答えを返さずにいると、エロいことを考えていると変に勘ぐられるもしれない。

 だがしかし30代の男が、女子大生の太ももを揉みほぐすことがこの日本において許されるのか!?


 俺は今、人生最大の決断を迫られている――!

 どうする俺!?


「カナタさん、どうしたのー? なんかあったー?」


 だめだ、既にもう不審がられている。

 悩んでいる時間はないぞ。


 ええい、ままよ!

 あまり上の方まで触らなければ大丈夫のはず!


「い、今からやるから」

 俺は悩みに悩んだ末に、ユキナの太ももをマッサージする決断を下した。


 膝裏の少し上の辺りにそっと手を置くと、さっきまでと同じようにグイグイと揉みほぐしていく。


 グイグイ。

 グリグリ。


「あーそこそこ、はぅ、いい感じ……あん!」

「……」


 グイグイ。

 グリグリ。


「あー、あっ、いい気持ち……あー、はぅん、ひゃう……」

「……」


 グイグイ。

 グリグリ。


「はー、あん、あっ、あんっ……」


 狭い俺の部屋に、なんとも艶めかしい声を響かせるユキナ。

 しかし次第にその声は静かになっていった。


 代わりに、

「すー、すー……」

 と、小さな寝息が聞こえてくる。


 どうやらユキナは俺の超絶技巧フィンガーテクによって気持ちよくなり過ぎてしまい、寝落ちしてしまったようだった。

 俺のベッドで、だらしなく身体を緩ませながら気持ちよさそうに寝ているユキナを見下ろしながら、俺はしばらくの間マッサージをやり続けたのだった。


 もちろん『くくく、やっと寝やがったぜ。さてと楽しませてもらうか』などと思ったりはしていないから、安心して欲しい。

 俺は極めて健全な作家であるからして。


…………


……



「どうだった?」

「すっごく気持ち良かったよ。途中、気持ち良すぎて寝ちゃってたし。ふわぁ、良く寝たぁ……」


 ユキナが手の平でお上品に隠しながら、小さくあくびをする。


「それはもうグースカ寝てたな。もしかしなくてもユキナの方が疲れてるんじゃないか? ちゃんと寝てるか? 6時間は寝ないといけないんだぞ?」


「ちょっと、それさっき私が言ったことじゃん! なのに、さも自分が教えてあげるみたいな言い方だし! それはパクリって言うんだよカナタさん」


「さっきの今ですぐに自分の知識として活用したんだ。スポンジのような俺の脳の吸収力を褒めてくれていいんだぞ?」

「開き直ってるし……っていうか、私、グースカはしてないでしょ、グースカは。私そんなはしたない寝方しないもん」


「おやおや? ユキナは寝ている時の状態を認識できるのか? 寝ている当の本人が分かるわけないだろ?」


「分かりますー! 私はそんな寝方なんてしてませんー!」

「はいはい、そうですね。俺が悪かったよ」

「分かればよろしい」


 そんな会話をしている内に終電の時間が迫ってきて。

 ユキナは俺の執筆の邪魔をしたら悪いと思ったのか、それとも俺が疲れていると思ったのか。

 いつもと違って割と素直に帰っていった。


 しかしユキナが帰ってすぐに俺は大変なことに気付いてしまう。


「ユキナのやつ、脱いだタイツ忘れて帰ってるんだけど」

 女子大生の脱ぎたてのタイツがベッドの上にあった。


「……ごくり」

 俺は一瞬いやらしい妄想をしてしまったものの、鋼の心でもって邪念を制した。


「今は年に一度の大事な大事なカクヨムコンの真っ最中だ。邪念は捨てて執筆に打ち込まないとな」

 でないと俺はいつまで経ってもプロにはなれないから。


 俺はユキナの脱ぎたてタイツを指先でつまみあげると、目の細かい洗濯ネットに入れてから、洗濯機の中に放り込んだ。

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【ファミチキ!】ファミレスでWeb小説を執筆していたら女子大生に声をかけられたが、俺はチキンなのでスルーした。 マナシロカナタ✨2巻発売✨子犬を助けた~ @kanatan37

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