第50話 女子大生の生足をマッサージ

 グリグリ。

 グリグリ。


「あっ……はぅ……そこ、そこそこ……あっ、気持ちいい……」


 ふくらはぎの下、ヒラメ筋と呼ばれるあたりを親指で押していくと、ユキナが何とも言えない気持ちよさそうな声をあげる。


「ここは歩くと一番疲れる場所だからな」


 俺も立ち仕事なので、ヒラメ筋をマッサージした時の気持ちよさはよーく知っている。

 まぁ俺の場合はマッサージをしてくれるような相手はいないし、マッサージ店に行くお金もないので、マジで疲れが溜まった時に仕方なく、自分で自分の足をマッサージしているわけなんだけど。


 俺は基本は弱めに、時々少し強く押してアクセントを付けながら、ユキナのひらめ筋をマッサージしていった。


 グリグリ。

 グリグリ。


「ぁ……あぅ……あっ、ぁん……」

「結構凝ってるな」


 グリグリ。

 グリグリ。


「ぁ、はぁ……。ん、気持ちいい……、ぁんっ」

「そ、そうか。それは良かったよ……」


 グイグイ。

 グリグリ。


「あ、そこ、そこいいよぉ……奥までグリグリ気持ちいいよぉ……入ってくるぅ、あっ、ぁんっ」

「…………」


 なんていうかその、な?

 俺がしているのは別にいかがわしいことでもなんでもない、小学生にだって推奨できる極めて健全な足マッサージなのに!

 ユキナの声がバチクソつやっぽいんだよ!!


「あっ……ん……はぅ! あっ、そこそこ、奥まで入ってる! あっ、はぅ、奥が絶妙にイタ気持ちいいよぉ……あんっ、あふぅ! カナタさん、あっ!」


「………………」


 落ち着け、落ち着くんだ俺。

 俺がやっているのは200%健全なマッサージだ。

 なにもやましいことなんてありはしないんだ。


「はう、あん、あーそこ! そこグリグリされるの気持ちいい……あふぅ、はぅん……」


 大丈夫、大丈夫だ。

 わらわのごとくみさおただしい俺の心は、決していかがわしいことなんて考えていないし、今なお正しく理性を保っている。

 こんな誘惑に負けるな俺!!


「じゃ、じゃあ? 次はふくらはぎと膝裏をやるな?」


 俺はユキナに内心の動揺を万が一にも気付かれないように、軽く息を吸って吐いてして心を落ち着けてから、なるべくいつも通りを意識してユキナに言葉をかけた。

 声が若干裏返っていたけど、気付かれてはいないはずだ。


「はーい、お願いしまーす……ぁっ! ひゃう! あっ、そこっ、はぅん! いいよぉ……!」


 しかしユキナの声は、マッサージをする箇所を変えても容赦なく俺の理性を溶かしにくる。


「あうー、気持ちいいよぉ……ぁん、あっ!」

「…………」


「あっ、そこだめ! あぁぁん! はぅ、あ、あっ!」

「き、気持ちいいみたいで良かったよ……」


 ぶっちゃけ、ユキナのつややかな反応にどうにも心がざわついてしまうのは、これはもう男なら仕方ないだろ?

 生物学的に当然の反応だろ?


 逆にこの状況でまったく何も感じなかったとしたら、それはそれで心か身体に深刻な問題を抱えちゃってる可能性があると思うんだが!?


「あー、いいよぉ……カナタさんの指が深いところまで入ってきて気持ちいいよぉ……あっ、そこ奥グリグリ気持ちいい……変な声出ちゃうぅ……はあんっ!」

「お、おう……」


 一応言っておくけど、膝裏の深いところまでって意味な。

 膝の裏側はかなり深いところまでグイグイと指が沈み込むからな。


 ただそれだけ。

 うん、ただそれだけだ。


 だから俺の心よ、勝手に余計な方向に変換しようとするんじゃない!


「あー、生き返るぅ……気持ちよくて」


 しかも俺の理性を溶かしにかかるのは声だけじゃなくて。

 タイツの中に隠されていた染み一つない真っ白な足は、もちもちのやわやわですべすべで、得も言われぬ触り心地だった。

 その感触が俺の手にダイレクトに伝わってくるのだ。


「こ、こんなもんか?」


 理性を総動員してどうにか平静を保ち続けた俺は、ヒラメ筋からふくらはぎ、そして膝裏のマッサージを無事にやり切ったのだが――、


「じゃあ次は太ももね♪」


 ユキナの口からはさらに信じられない言葉が飛び出していた。

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