第23話 「料理のできる男性、プライスレス♪」
でもマジな話、バイトで得られるなけなしの給料で一人暮らしを成立させるには、何よりまず自炊が不可欠だ。
もちろん自炊といっても主食のコメと、あとは時間のかからない簡単なものばかりなんだけど。
「手の込んだメインディッシュは作れないし、作れてもやっぱり時間がかかるし。俺は何より執筆時間を確保をしないとだから、普段は冷凍食品とかチルド総菜を買うことが多いんだよな」
最近はプライベートブランドも随分と美味しくなって、しかもハンバーグが100円以下とかで買えるのだ。
いい時代になったよなぁ。
そういうわけで、執筆の気分転換にファミレスに行くのは俺的には結構な贅沢だった。
もちろん毎日は絶対に行けない。
月にせいぜい2、3回が限界です……。
そんな金銭状況なので、多い時は月に5000円くらい――すみません見栄を張りました――2000円くらい入ってくるカクヨムのPV連動型インセンティブは、俺には地味にありがたかったりする。
読者のみんな、いつもいっぱい読んでくれてありがとな!
俺の文字数(1話/約1500字)だと、読者が25ページくらい読んでくれるたびに1円が入ってくる計算だ。
それが積もり重なって毎月2000円とかになってくれるのだ。
それはさておき。
「なるほどなるほど。料理のできる男性、プライスレス♪」
ユキナが懐かしいフレーズを口にした。
「だから料理はそんなにできないんだってば」
「謙遜しなくてもいいってばー」
「ほんと謙遜はしてないんだけどな……。あと俺はアルコールは全く飲めないんだ。だからビールは入ってない」
「うんうん、最近の若者はお酒飲まないもんねー」
「まったくもって俺は最近の若者ではないんだけどな? むしろ最近の若者なのはユキナの方だろ?」
「わたしもお酒は飲まないよー。成人した日の記念にビールを飲んでみたんだけど、すっごく苦かったもん。なにあれ、みんな苦行してるの?」
「だよなぁ、ビールって苦いよなぁ。ほんと何がおいしいんだろな、あれ?」
「だよねぇ!」
お酒が飲めない者同士、ビールの苦さについて意気投合したところで、
「ところでそれって朝ごはんか?」
俺はできあがりつつあるアレやコレやを指さした。
「うん、お味噌汁と玉子焼きと野菜サラダを作ったの。ご飯も冷凍してあったのをチンしてるから一緒に食べよ?」
「気を使ってもらったみたいで悪いな……あとありがと」
「いいのいいの、ただで泊めてもらったお礼だし。なんかね、人の家に泊まるのって、修学旅行みたいで楽しかったし♪」
「そ、そうだな、泊まったんだよな……」
だからやめろよな、そういうの。
女子大生に泊めてもらったお礼とか言われたら、変に緊張するだろ。
ワードがデンジャラス過ぎるんだよ。
「うわっ、何そのいやらしい反応? もしかして今さらわたしの身体に欲情したの? もう、カナタさんのえっち!」
ユキナがわざとらしく自分の身体を抱きしめる。
「だからそういうのをやめろって言ってんだよ。心と身体に消せない傷がついてからじゃ遅いんだぞ?」
「はーい分かってまーす」
本当に分かってるのかなぁ。
その妙に近い距離感がダメだって俺は言ってるんだからな?
まぁ俺はユキナの保護者でもなんでもないから、これ以上は言わないけど。
「じゃあ俺は顔洗って着替えてくるから」
「はーい。着替えたころには全部できてると思うから」
「ありがとな、ユキナ」
「だから泊めてもらったお礼だってば」
「でもやっぱりありがとうはありがとうだよ」
俺はもう一度感謝の言葉を告げると、洗面所へと向かった。
冷たい水で顔を洗ってさっぱりすると、ちょっと小ぎれいな服に着替える。
ぺ、別にその、女子大生に爽やかアピールするとかじゃなくてだな? 来客に対して人として最低限の身だしなみをするのは当然だろ? だから変な誤解はしないでくれよなっ!(早口)
まったく説得力ないですか。
そうですね、俺もそう思います。
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