第24話 ユキナと食べる朝ごはん
「いただきまーす♪」
「いただきます」
俺とユキナは座卓で向かい合って、日本人らしく両手を合わせてから朝ごはんを食べ始めた。
熱々のお味噌汁。
しっかりと甘い玉子焼き。
俺が適当に作る、野菜を摂取するためだけのものとは全然違った、レンチンしたニンジン(温野菜っていうの?)なんかが入った彩り豊かでオシャレな野菜サラダ。
そして日本人のソウルフードである白米が朝食の献立だ。
冷凍してあったのをレンジでチンした白米以外は、全てユキナが一から作ってくれたものだった。
「うん、どれもすごく美味しい。ユキナは料理が上手なんだな」
「料理って程はたいしたものじゃないけどね。でもカナタさんの口にあったみたいで良かったー♪」
「ほんと美味しいよ。薄めの味付けが絶妙にプロっぽいっていうか」
「それは多分関西の味付けとの違いかな? 関東のご飯はやっぱりちょっと濃く感じる時もあるから」
「なるほど! つまりこれがよく言われる東と西の味付けの違いってやつだな? 実際に関西人の手作り料理を食べると、上辺だけの知識じゃなくてものすごく実感が伴ってくるよ。それにも感謝だな、うん」
これは実に創作に生かせそうだぞ?
この一食はしっかりと味わって食べて、関西の味付けを記憶に刻んでおこう。
それと誰かに作ってもらったご飯って、なんでここまで美味しく感じるんだろうな?
いつもの冷凍米ですら、レンジで戻しただけなのにいつもより美味しく感じてならない俺だった。
一人暮らしが長くなるにつれてしみじみと感じるようになったのが、ご飯を作ってもらえるということのありがたさだ。
しかも若い女の子の手作り料理とあっては、どうにも嬉しさを隠しきれないのは仕方のないことだろう。
だって若い女の子の手作り料理を食べさせてもらって、それで嬉しくならない男なんていないだろ?
「今年は実家に帰省しなかったから、誰かの手料理を食べるのって一昨年の夏に3日だけ帰省した時以来なんだよな。あー、出来立ての熱い味噌汁が心の奥に染み入ってくるよ」
「え、カナタさんお正月も実家帰らなかったの? 家族の人心配しない?」
「スーパーのバイトは年末年始は休めないからさ」
「あれ? そうなんだ? でもスーパーでバイトしてる友だちって、冬休みはみんなしっかり実家に帰ってたような?」
ユキナが可愛らしく小首をかしげた。
「だからだよ。年末年始は学生バイトが全員帰省するから、その分俺たち社会人バイトはマストで出ないといけないんだ」
特に俺は牛乳やパン、納豆なんかを扱うデイリー部門のバイトリーダーであり、独身社会人という最も時間に都合がつく便利な存在だ。
よって穴の開いたシフトを率先して埋め合わせしなければならなかった。
でないとシフトが回らない。
他にもシフトを作成したり特売コーナーを作り替えたり。
よく分からない労働組合の業務をこなしたり、デイリーの部門会議にも出席したりと、発注・商品出し以外の様々な仕事もこなさなければならなかった。
その分、俺の時給は平バイトより100円高いんだけど。
わずか100円である。
……はぁ。
テンション下がるから考えないようにしよう。
「ふーん。なんかバイトって、普通に正社員で仕事するより楽そうなイメージだったけど、結構大変なんだねー」
「その口ぶりだとユキナはバイトはしてないのか?」
「うちはまぁ仕送りがそれなりにありますので、てへへ」
「なんだ、ユキナの家って実は金持ちだったのかよ」
俺の何気ない質問に。
しかしユキナから返ってきたのは、
「まぁ実家はそこそこ裕福な感じ? お父さん会社経営してるし」
俺の想像をはるかに超える衝撃の回答だった!
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