第25話 社長令嬢な箱入りお嬢様ユキナ
「か、会社経営だって!? ってことはユキナの親はしゃ、しゃしゃ社長ってこと!? ってことはつまりユキナは社長令嬢!? いわゆる箱入りのお嬢さまってやつ!?」
すごい!
俺の人生で初めて社長令嬢さんとお知り合いになったんだが!?
超ヤバくない?
だって社長令嬢だぞ社長令嬢。
30代バイトワナビとはまさに月とスッポン。
異次元パワーワード過ぎてヤバすぎなんだけど!?
あ、でも。
それなら昨日奢った1450円、返してくれないかな?
社長令嬢のユキナにとっては取るに足らないはした金かもしれないけど、俺にとって1450円ってかなり切実な金額なんだよね……。
「んー、多分カナタさんが想像してるのとは違うと思うかなー」
「そうなのか?」
「会社っていっても小さい個人経営の会社だし。社長令嬢とか箱入りお嬢さまなんて言われたこと自体が初めてだもん。学校もずっと公立だし」
「またまたぁ。そんなこと言って、でかい庭付きの一戸建てに住んでんだろ? 車は外車かレクサスで、ゴールデンレトリバーとか飼っててさ」
俺がお金持ちに抱いているややテンプレートなイメージを伝えると、
「そんなに大きくはないけど庭付きの一戸建てではあるね。車はよく分かんない、日本の車だったような? でも2台あるよー。みんなで乗れる大きな車と、お父さん専用のカッコよくて速い車」
ユキナはそんな答えを返してきた。
しかも概ね間違ってないっぽいときた。
「うおおっ、車2台持ちとかすげー!? しかも1台は多分スポーツカーだよな!」
そうか、ユキナの実家はお金持ちなのかぁ。
いいなぁ。
いいなぁ……。
いいなぁ…………。
「あとうちは先祖代々からの猫派ですので犬は飼ってないの。あ、写真見る? うちのミントはすごく可愛いんだから」
「ミントだと? 猫の名前もタマやミーと違って、そこはかとなくブルジョワっぽいじゃないか」
「タマやミーってそんな昭和な名前、今どき付けないし……」
「俺は昭和の最後らへんの生まれなんだよ。うん、せっかくだし後で見せてもらおうかな。俺も猫は好きだし」
「やっぱ猫だよねー。枕元とかで抱っこして~ってすりすりって甘えてくるのがとっても可愛いの♪」
「いやどっちかって言うと、犬と比べて猫は孤高な感じがして人生観的に共感できるからだ」
「え、あ、うん、そうかもね……猫は、うん、孤高感あるよね……」
どうやら俺とユキナの猫に対する見解には、少しだけ相違があるようだった。
「なぁなぁそれよりさ?」
「なに?」
「やっぱ社長令嬢ともなると、か、海外旅行に行ったこととかもあるんだよな? パスポートも持ってたりするんだよな?」
「そりゃ海外には何度も行ったことあるけど」
「何度も!? 海外に何度もだって!? すごい!」
「えっと、カナタさんはないの? 今どき海外とか高校の修学旅行でも――」
「残念ながらない。沖縄に1度家族で3泊4日で行ったのが俺の最も遠い旅行先だ」
「そ、そうなんだ……」
「ちなみに修学旅行は長野にスキーをしに行ったんだけどさ」
「長野いいよねー。白馬山のゲレンデってすっごく見晴らしがよかったでしょ?」
うぉう、長野にも行ってるのかよ?
社長令嬢パネェ……!!
「それがその年は超大雪だったから、行きも帰りも普通の2倍くらいの時間がかかった上に、ゲレンデも全日閉鎖されてたせいで正直スキーをした記憶はほとんどないんだよな」
「あ、うん、なんかごめんね……」
ユキナが可哀そうなものを見るような目を一瞬してから、そっと目を伏せた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます