第20話 女子大生と一夜を……。(1)
俺は熱いシャワーで身体の芯から温まると、Tシャツとハーフパンツというラフな格好で風呂場を出た。
いつも風呂上りは「うー、さむっ」とか言いながら無計画にパンツ一丁で、部屋で服を適当に探して着てるんだけど、さすがに今日は自重した。
俺も人並みの常識くらいは持ち合わせておりますゆえ。
「えっと、上がったぞ……?」
お風呂上りというシチュエーションで、女の子にいったいどんな態度を取ればいいのか皆目見当がつかなかった俺は、ユキナの反応を伺うように小さな声でそっとつぶやいたんだけど、
「すー……すー……すー……」
しかしユキナはというと、既にぐっすりと寝入ってしまっていた。
「ま、先に寝ていいって言ってたしな」
時刻はもう既に深夜1時半を回っている。
寝るには遅いくらいだ。
正直ユキナが眠ってくれていてホッとしている自分がいた。
これでお風呂上りにどんな会話をすればいいのか、必死に頭を働かせる必要はなくなったから。
「しかし無防備な寝顔だなぁ。男の部屋に泊まってるのに安心しすぎだろ。俺に襲われるかも、とか考えないのか? それとも俺ってそんなに人畜無害そうな顔してるのかな?」
「んゅ……すー、すー……」
ユキナは出会ったばかりの男の部屋に泊まっているとはとても思えないほどに、平和そうな寝顔ですやすやと眠っていた。
血色のいいほっぺがぷにぷに柔らかそうだ。
「まったく。あんまり気持ちよさそうに寝てるとほっぺた突っついちゃうぞ?」
「ん……す……」
まぁしないんだけどな。
相手が寝ているのをいいことにセクハラするとか、人として終わっている。
「もしかしてユキナって意外と遊んでるのかな? なんせ見ず知らずの俺にいきなり話しかけてきたくらいだもんな?」
「ぇへへ……」
俺の疑問をよそに、なにか嬉しい夢でも見ているのか。
ユキナは寝ながら小さく笑い出す。
控えめに言ってすごく可愛かった。
この可愛さなら、男を手玉にとるような小悪魔人生を歩んで来ていても不思議は――、
「ってやめやめ! そういうことを考えて低俗なレッテルを貼るのはユキナに失礼だし、俺も変な気分になっちゃうからな」
俺はアホなことを考えるのをやめた。
それに今はそれよりももっと大事な問題が俺にはあるのだから。
それが何かっていうと――、
「なんでユキナは俺のベッドで寝てるんだよ!? 来客用の布団をちゃんとセッティングしておいただろ? 狭い賃貸なんだし見えなかったはずはないよな?」
なんと言うことだろうか!?
ユキナは俺のベッドですやすや眠っていやがったのだ!!
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