第12話「カナタさんと一緒のベッドでもいいよ?」
「だってそろそろ眠たくなってきたし、寝る前にシャワー浴びてさっぱりしたいもん」
「はいはい分かった、とっとと入ってこい。風呂場は左の奥だから、タオルは適当に使ってくれていいから」
「覗いたらダメだよ?」
「覗かねーよ」
「前振りじゃないからね?」
「お前は吉本芸人か」
「もしかしたらなっちゃうかもよ? 花の十代、まだまだ可能性は無限大だからね」
「否定はしないよ。俺もいい年してまだ夢を追ってる途中だしさ」
「うわっ、今のめちゃくちゃイケメン主人公っぽいセリフだし! キリッ!って感じ! さすが作家志望だね」
「イケメンじゃないのにイケメン主人公っぽい似合ってないセリフ言ってすんませんね」
「もう、褒めてるのに」
「めちゃくちゃ笑いながら言ってるじゃねーか。じゃあとっとと入ってこい。俺はユキナがシャワー浴びてる間に、来客用の布団とか着替えを出しとくから」
「そこまでしなくても、カナタさんと一緒のベッドでもいいよ? なんちゃって、ぽっ♪」
「たしか買ったまま開けてない新品のヒートテックがあったはずだから、ちょっとサイズがでかいだろうけど、寝る時はそれとハーフパンツで寝てくれな」
「完全にスルーですか、そうですか」
「ユキナは生産性がない無駄な会話は嫌いなんだろ?」
俺はここぞとばかりに言い返してやった。
「ぶぅ……。あ、そうだ、替えの下着はある?」
「うちに女物の下着があるわけないだろ。お前は俺をなんだと思ってるんだ」
「『もう遅い?いや遅くない!ラノベ作家を目指す30過ぎのボクに、ある日高校生の彼女ができました』の作者さん?」
「オッケー、いい加減分かったぞ。おまえ俺で遊んでるだろ?」
「えへへ、バレちゃいましたか。反応がいいのでついつい」
「ま、今は俺とユキナの2人きりだから、タイトルを朗読されても痛くもかゆくもないんだけどな」
ここは俺の部屋だし社会的なアレコレとか失うものは何もない。
俺は特に深い意図もなにもなく、ただその事実を言ったんだけど、
「ふ、2人きり……うん、今部屋に2人きりなんだよね……」
ユキナが突然、自分の身体を敵から守ろうとするかのように腕で抱きながら、上目づかいで呟いたのだ。
「べ、別にそういう意味で言ったんじゃないっての……」
「う、うん……」
その言葉を最後に室内を静寂が支配した。
時間は深夜、かつ住宅街のアパートの一室ということもあって、お互いの呼吸の音が聞こえそうなくらいに静かだった。
く、空気が重いぞ。
すごく気まずい。
「…………」
ユキナが無言でジーっと俺を見つめてくる。
その上目づかいがとても可愛いくて、俺の心臓は驚くほどに激しく高鳴ってしまう。
自分の部屋という圧倒的なホームで、可愛い女の子と2人きり。
改めてその異常すぎるシチュエーションを認識させられてしまった俺は、ごくりと喉を鳴らしてしまった。
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