第6話 未開惑星4
「現在サーチ中……」
テレッサは人の話を無視して惑星の解析に入っていた。確かに残り時間は3時間を切っているから降りれるかの判断を急がなくてはならい。先ほどから船内の温度はどんどん下がってきているのは明白だ。酸素も今のところは息苦しさもないがもうすぐそうなるだろう。
これから降りるかもしれない星の地表をスクリーン越しに見た。緑の惑星というだけあってどこを見ても森や草原ばかりだ。
だが所々に川や湖や池も随所に点々としていて意外と水もあることがわかる。大きな違和感があるとすればそれは起伏だろう。俺の知る星は大小なりとも山あり谷ありが惑星というものだがこの星はほとんど平らだ。
「サーチ完了」
「お、どうだった?」
「この星の大気は地球と類似しており、人間の身体への影響はありません。また重力もほぼ同じ1Gで平均気温は24度です」
「よし!」
思わずガッツポーズをとってしまった。これで地上に降りることが出来る。命が助かる。
「ただ……」
突然テレッサは何かを言おうとするが、「ただ」などと言われてはもうその先の言葉は不吉な予感しかしない。ここまで不幸が続くと不幸の連鎖を断ち切れている気がしない。
「この星はゼツリン宇宙地図によれば生命を育むような星ではなかったはずです」
テレッサは俺に見えるよう地図をサブモニターに表示してくれる。星の情報では赤茶色い星の写真が表示されており、緑の『み』の字もないような星だ。
大気成分をみても人が住めるような環境ではなく、生物や植物リストには『無し』とある。つまりこの星には生物すら育めるような環境ではなかった。だが俺の目の前には写真とはまったく異なる星が映っている。
「じゃぁ……この緑の大地はなんなんだ?」
「恐らくテラフォーム……。だれかが意図的に
テラフォーミングなどとずいぶんと壮大なことをするやつがいたもんだと感心してしまう。テラフォーミングは惑星を生命を有することが可能な星に改造する手法のことである。元の惑星の状態にもよるが、ほぼ間違いなく莫大な金と時間が必要される。
「だがそのおかげで俺は助かるのだからいいじゃないか」
「ずいぶんと短絡的に考えるのですね。さすが童貞」
「な、なんだよ、なんか問題あるのかよ?」
「問題だらけです」
「俺には分からん!」
「いいですかクリフ。テラフォーミングのような重大な事業を行うには行政手続きを行い承認を得なければなりません。そして改造が始まったら地図には改造中と表記されるよう惑星情報を書き換えるものです。ですが地図はそのままです。つまりここのテラフォーミングは非認可で行われたことということです。そして謎のジャミング……」
テレッサの説明でようやくことの重大性を認識した。非認可で惑星改造、ジャミングはそれを知られないようにするため。どう考えても犯罪の臭いしかしない。そしてそれを知ってしまった俺たちは……
「ひいいいいい!」
お先真っ暗な未来しか見えない。真実を知ってしまったために悪いやつらから狙われ襲われる日々! そして捕まると拷問を受けたあげく、最後は魚の餌だ……この惑星に魚がいるかは知らんが……
「どどど、どうすりゃいいんだ!?」
「どうするも、方法は一つしかありません。私たちが見つかる前に先にジャミングを解除し救援を要請、警備隊が来るまで逃げ隠れるしかありません」
「めちゃめちゃ冒険してるじゃないか」
「他に方法がありますか?」
確かにジャミングを何とかしなくては救援は永遠にこない。隠れていてはいずれ見つかってしまう。誰が何のためにこんなことをしたのか分からないが生きて帰りたければやるしかない。
「生命反応多数」
「生命反応? 人か?」
「今のところ小動物ばかりです」
テレッサはフロントのサブスクリーンに生命反応の結果を表示した。黄色い点が生物を表しており、大きな動物ほど点が大きくなる。だがかなり小さい小動物まで捕えているために点で画面が埋めつくされてしまっている。
テレッサはダイレクトにデータを見ているので判別できるのだろうが俺にはただの黄色一色だ。だが一つ分かったのはこの惑星は小動物が大量に生息しているということ。
「テレッサ、点が多すぎるフィルターをかけて小動物を排除してくれ」
「分かりました。人サイズにフィルタリングします」
画面に表示されている点は一気に消えた。消しすぎではないのかと思われたが所々に点はある。だがそれらは一カ所に点が集中していた。拡大してみると点と思われたものはさらに点が集まった塊であり、それが複数固まって存在していた。
「これは?」
「どうやら生物の集落か群集のようですね。捕えた映像を表示します」
再びサブスクリーンに点の塊の一つを上空からリアル映像として映し出された。そこには人型の姿をした生き物が生活してるようである。家があったり畑があったり洗濯ものが干されていたりしていた。大人らしい生物や子供らしい生物もいる。
間違いなくそれは集落であるが、生活文明水準はあまり高くないようだ。
「どうやら現地人のようですがジャミングとは無関係かと思われます」
恐らくそうだろう。彼らがジャミングを行えるような文明でないのは一目瞭然である。そういえばジャミングはどこから発生しているのだろうかという疑問にあたる。これからどこへ向かうのか場所を把握してく必要がある。
「ジャミングが発生している位置はどこだ?」
「画面に表示します」
テレッサはジャミングの発生ポイントを同じ画面に赤い点で表示した。しかしながら上空からの映像で見た限りではその場所には崖と森だけで人工物らしきもはない。森の中に隠されているのだろうか、はたまた地面の中とか? いづれにせよここに何かあるのは間違いない。ただそれにしてもこの位置は……
「こ、これは……」
「一致してしまいましたね」
それは黄色い点の集団の近くであった。正確には少し離れた北側に位置する。無関係かと思われたがこうなると無関係とも思えなくなってきた。
どうすべきかと悩むが、そうこうしているうちに体がどんどん冷えてくる。そろそろ急がないと船内は危険な領域に入りそうだ。だがこんな時の便利サポートメカだ。
「誰がメカですか、私はアンドロイドです。訂正を要求します」
またしても口に漏れたらしい。
「悪かったよ。で、どうすれば良いと思う?」
「……正しい判断は正しい情報の元に成り立ちます」
「つまり?」
「降りて彼らを観察しましょう。接触は避けつつ情報収集です」
「分かった」
確かに現時点ではどうして良いのか情報が少ない。テレッサの判断は正しいだろう。見た目や言葉に問題があっても一応相棒として支給されただけのことはある。
「降下シャトルの準備はもうできていますのでご自分の部屋から荷物を持ち出しておいてください」
さすがアンドロイド、手際がが良い。俺たちの宇宙船『陽気なエンゼル号』には万が一のためにシャトルが用意してある。
ちなみにシャトルは今回初めて使うことになる。通常、船の乗り降りには
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