第40話 誰が見てもいちゃついている

 3日目の午前中の稽古。

 こんどこそ、かおりは英一と組み手をしていた。


「それでね、英ちゃん」


 かおりはしゃべりながら技をかける。


「なんだ?」


 技を受けながら英一は聞き返す。


「今日の夜は、花火をすることになっているの。一緒にやろうよ」


 技かけようと足を掛けたところで、英一は技をすかした。


「あっ・・・」


 かおりが油断したところを、足を取って倒す。

 柔道で言うところの、朽木倒しの形になる。

 (なお、近年では朽木倒しは反則になる場合が多い)



「あたたた・・・」


 虚を突かれ、畳に転がるかおり。


「練習中は、ちゃんと集中しなきゃダメだ」

「はあい」


 かおりの家の道場では、いつもの通りのやり取り。

 だが、ここは部活の合宿中である。


 周りの部員からは、かおりが英一にいちゃついているようにしか見えない。

 なにしろ、かおりの顔がにやけっぱなしである。

 学校では、常に厳しい表情のかおり。

 それが、なんともいえないだらしない顔になっている。



 そんな周りの視線にも気づかず、かおりと英一は組み手を続けるのであった。

 

 

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