第33話 偶然が続くと必然になる

「澤木君、休みの日は予定あるのかしら?」


 月曜日の午後、コーヒーを飲んでいると安藤先輩に聞かれた。


「いやあ、突然だったので何もないです。部屋の掃除とかですかね」

 英一は頭を掻きながら言った。


 正直に言って、このような休みなど久しくなかった。中学生以来である。

 学生の時も、休みは部活でつぶれていたからである。


「そう・・・もしよかったら、一緒に遊びに行かない?海に行くとか・・・」

「いや、安藤先輩、休みの日程違いましたよね。

 というか、同時に二人いなくなると困るって、わざわざずらしましたよね」


 すると、安藤先輩はため息をついた。


「そうなのよね。本当に残念だわ・・・」




 月曜日。

 クラスの全員が、シンっと静かになっていた。

 世間話をする余裕もない。


 原因は簡単。

 かおりが、物凄く不機嫌だというオーラを振りまいていたからである。


 だれも、かおりの逆鱗に触れるような無謀なことはしたくない。

 皆、遠巻きにして目を合わせないように必死に努力していた。



 昼休み。

 クラスに、柔道部の1年生が飛び込んで来た。


「かおり先輩!大変です。顧問の山田先生がぎっくり腰になっちゃったそうです」

「え?」

「このままだと、合宿は中止になるかもしれないって聞きました」

「ほんと!?」

「まだ決定じゃないそうなんですが・・・」

「そうなんだ。もしわかったら教えてね♪」


 その後、かおりは打って変わって嬉しそうなオーラを振りまいていた。

 皆、遠巻きにして目を合わせないように努力しているのは変わらなかったが。




 15:00

 また、クラスに柔道部の1年生が飛び込んで来た。


「かおり先輩!大変です!山田先生は合宿は何としてもやるつもりみたいなんです!」

「あ”!?」

 物凄い形相で、後輩をにらみつける。

 すぐにでも、殺してやる・・・という眼差しである。


 後輩は、背筋に冷たいものを感じながら続きを話した。

「なんでも、サポートしてくれる保護者を探して合宿をやり遂げるつもりらしいんです」


 サポート?


「サポートが誰だか決まっているのかしら?」

「いえ、これから決めるらしいんですが・・・」

「そう・・・」


 考え込むかおり。

 予礼のチャイムが鳴るころ、急に席を立って担任に話しかけた。


 そして、スタスタと教室を出て行ってしまったのである。




 ザワザワと動揺する教室。



 しかし、しばらくしてかおりは教室に戻って来た。

 満面の笑みを、その顔に浮かべて。



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