第32話 リゾートでのラブを期待していたJKに責められる

 月曜日。

 出社した英一は、社内の雰囲気がいつもと違うことに気が付いた。

 特に、総務部のある方が騒がしい。


「おはようございます、先輩。何かあったんすか?」


 隣の席の安藤先輩にあいさつ。

 すると、安藤先輩は英一をじっと見つめて答えを返した。


「どうも、労基署が踏み込んできたようよ」

「ローキショ?」

「 労働基準監督署。お役所ね」

「へ~」


 お役所と聞いて、英一は自分に関係ないと思い生返事になった。

 すると、じっと見つめてくる安藤先輩。


「澤木君。あなた去年は有給何回使った?」

「え?やだなぁ。一回も使っていないですって」

「じゃあ、今年は?」

「今年もですよ」

「先月の残業時間、何時間だっけ?」

「先月は少なかったから・・100くらいでしたっけ?」


 安藤先輩は、大きくため息をついた。


「これは・・・やばいわね・・・」




 夕方。フロアに全員集められて社長から通達があった。





「それじゃ、英ちゃんにも夏休みがもらえることになったの!?」


 物凄く嬉しそうなかおり。

 今は夜の稽古につきあっているところである。


「まぁ・・・有給休暇だけどな。なんか、急に強制的にとることになったんだよ」

「じゃあ、どれくらい休めるの?」

「5日分だな」


 労基署によって、英一の会社(総務部・人事部)はひどく怒られた様である。

 法律違反ともなる長時間労働。

 有給休暇未取得の人員が複数いる。


 ちなみに、有給休暇は年5日以上取ることが義務化されている。


「ほんと!?やったーー!遊びに行こうよ!」

「はあ・・・まあ、暇だからいいけど」


 うきうきと、嬉しそうににやけているかおり。

 寝技の抑え込みをしている最中なのだが、にやけ顔がとまらない。

 海に行って・・・水着・・・。水着買わなきゃ。


「でさ、いつからいつまでなの?」

「順番で取ることになっていてなぁ。たしか、7月の26日からだったな」



 その瞬間、かおりの表情が固まった。

 


「おいおい・・・痛いって!」

 バンバンと畳を叩くが、かおりは力を緩めない。


「な・・な・・なんでよ~~!!よりによって、柔道部の合宿と同じ時期に休むのよ!!遊びに行けないじゃない!」


 さらに、ギリギリと締め上げる。


 バンバンバンバン!

「ギブ!ギブ! ギブアップ!!」


「日程変えられないの!?」

「無理!無理!」

「なんでなのよ~~!」


 

 その後も、英一はかおりからさんざん責められた。

 ちなみに、日程は会社から勝手に決められたので英一には何の責任もないのである。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る