第4章 社畜はJK達と泊まり込む

第31話 第4部 プロローグ

「それでさ~。英ちゃんは夏休みに何するの?旅行とか?」


 かおりが練習しながら聞く。

 来週から夏休みなのだ。


 その瞬間、綺麗に技が決まる。


 なんとか受け身を取った英一は畳から起き上がりながら言った。


「いや、社会人に夏休みなんかないぞ?」

「は?」


 かおりは、今聞いた言葉が信じられなかった。


「え・・・夏休み無いの?」

「無い」

「お盆休みも?」

「無い」


 多くの会社では、お盆休みがあるところもあるのであろう。

 だが、英一の会社では決まった夏休みなどなかった。


「マジ?」

「マジ」


 かおりは茫然とした。

 あわよくば、夏休みに一緒に遊びに行こうと誘うつもりだったのだ。


「じゃあ、今週の土日は?」

「土曜日は休日出勤だな」


 まさに社畜である。


「月曜日は海の日・・・」

「デスマの最中だからな。出勤だ」


「マジ?」

「マジ」


 聞いた内容が、理解できなかった。

 土曜日も、祝日も出勤・・・?

 3連休じゃないの?


 かおりは、茫然としながら言った。


「私、会社員には絶対になれそうもない・・・」



 かおりは知らなかったが、英一の会社が特殊なだけである。

 ただし、日本国ではそんな会社はいつまでも許されるわけではない。

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