第14話 寝技で折れるのはアレとは限らない

「折れてますね」

「折れてますか~」

「はい、綺麗に折れていますね」


 深夜。夜間にやっている病院に来た。

 医者は、英一の腕のレントゲンを見ている。

 左腕の骨が綺麗に折れている。


「まぁ、綺麗に折れているのでつながるのも早いでしょう」

「はぁ」

「ギプスをして、安静にしていてくださいね」

「あの、仕事は・・?」

「パソコンを使ったりする仕事ですが」

「それなら右手だけでやってください。力仕事じゃなきゃいいですよ」

 どうやら、仕事を休むことはできないらしい。


「一応、明日にはかかりつけの病院に行ってください」

「はい」


 診察室を出ると、そこにはかおりと祖母の澄子さんが待っていた。

「英一さん。診察結果はどうでしたのかしら?」

 澄子さんは、微笑みながら聞いてくる。

「単純骨折だそうです。ギプスをつけて安静にしてればいいらしいです。ご心配かけてすみません」

 かおりは、うつむいてシュンとした表情。

 かおりの眼からぽろぽろと涙が流れた。

「ごめんないさい・・わたしのせいで・・・」

 英一は、かおりの頭をポンポンと叩いた。

「そんな顔すんな。これくらいの怪我は大したことないから。それより明日も学校があるんだろ。早く寝ないと」

「・・・・子ども扱いしないで・・・」

「はいはい。それじゃあ、帰るぞ」


 タクシーを呼んで、道場に戻る。

 それにしても、片手でスマホを操作するのはかなり難しいな・・・


 タクシーの中。

 かおりは黙って、泣き続けていた。

「大丈夫だから、そんなに泣くなよ。おれが、余計なこと考えていて不注意だったんだから。

 お前のせいじゃないって」


 それでも、黙って涙を流し続ける。


 道場に戻ってきて、うつむいたままのかおりを部屋に連れていく。

 ベッドにうつぶせになる、かおり。


 やがて、泣き疲れたのか眠りについた。



 英一は、寝息を確認して居間に戻ってくる。

 澄子が、頭を下げてくる。

「英一さん、今回は誠に申し訳ありませんでした」

「いえいえ、私が不注意だったんです。自業自得ですね。

 幸い、大怪我ではないようなので大丈夫ですよ」

「そうですか・・それでも、申し訳ないです」

「それより、かおりさんの方が心配です。明日、フォローしていただけないでしょうか?」

「はい、わかりました」


 おそらくは、相手を怪我させてしまったことは無いだろう。

 かなりショックを受けているようである。

 精神的なトラウマにならないといいのだが。


「ところで、明日にかかりつけの医者に行けと言われたのですが、整形外科とかわからないんですよ。どこか、いい医者をご存じないですか?」


 すると、予想外の回答。


「うちの旦那が、整形外科を経営してます。そちらに行っていただければ、しっかり診るように言っておきますよ」


 マジですか。逆に怖いんですが。


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