第13話 今夜はいつもより激しい
「英ちゃん、待ってたよー。さぁ、帰りましょう!」
「あ・・・あぁ・・・」
あえて、通用口から外に出たのに。
あいかわらず、山本かおりが待ち構えていた。
「なんで、わかったんだよ・・・」
「さ!おばあちゃんが晩御飯作って待ってるよ。早く~!」
ニコニコといつも以上に笑顔のかおり。
英一は、どことなく違和感を覚えながら、かおりの自宅である道場に向かった。
英一は気づいていなかった。
かおりの眉間に少ししわが寄っていること、そして額に青筋があることに。
かおりの祖母の山本澄子が夕食を準備している間、道場でかおりの練習につきあうことになった。
「さぁ。張り切って、練習するわよ。覚悟してね」
ニコニコと笑顔のかおり。
妙に積極的だ。
その夜の練習は、いつも以上に激しいものであった。
朽ち木倒しから、片羽絞め。そこから裸絞め。
本気で、締めにかかってくる。
油断すると、決まってしまい、落とされる。
しかも、かおりが素早く、技を切り替えてくるので対処が大変である。
かおりは、英一に締め技をかけながら話しかけてきた。
「それで・・英ちゃんは、私のことを職場ではどう話しているのかな~?」
「いや、職場では・・・話して・・・いないけど・・・?」
なんとかパワーでこらえているが、油断するとヤバい。
「でも、柔道していることは話してるのかな~?」
「そ・・それは・・ちょっとは・・・言ったけど・・・」
「じゃあ、誰と柔道しているって言ったのかな~?」
「そ・・・それは・・・」
英一は、さすがに女子高生と柔道しているだなんて職場では話せなかった。
学生の練習相手をしていると言ったくらいだ。
「じゃあ、子供の相手をしているなんて、言ってないよね~?」
かおりは、さらに強力に締め上げてくる。
「ええと・・・それは・・・」
”澤木さん、柔道やってるんですか?”
”いや、素人だけど。学生の練習につきあってる程度だよ”
”学生って、大学生とかですか?”
”いや、もっと子供の相手ですよ”
そう言って、職場ではごまかしたのである。
JKと寝技の練習してるだなんて知れたら変態扱いされるに決まっている。
「あ~~!やっぱり子ども扱いしてるんだ!」
かおりは完全に怒っていた。
年の割には背が低く小柄である。
かおりにとって、子ども扱いされるのは非常に嫌なのだ。
「いや・・・それは・・・ですね・・・」
「ひどい!!英ちゃん!!私を子ども扱いするなんて!!」
英一は、言い訳を考えていて・・・反応が遅れた。
怒ったかおりは、締め技から急に関節技に切り替えた。
素早い動きで、腕を取って腕挫十字固。動作の反動も手伝って・・・
『ポキッ』
「あ」
「あ”っ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます