第8話 その夜も押し倒されたが脱出した

 昼頃。

 まだ、かおりは帰ってこない。

 俺は、澄子さんをお茶を飲みながら話をしている。


 その時、スマホのSNSにメッセージが入った。

『ごめんなさい、補習が入ったのでまだ帰れない!絶対待ってて!』

 俺は直ぐに返信した。

『どうやって登録した!!??』

『昨日寝たときに指紋を〜』

『ブロックする!』

『や〜め〜て〜!』


 夕方、4時頃。ようやくクリーニングが終わったとのとこで、ビニールに包まれたシャツとスーツを澄子さんから受け取った。

 ようやく帰れる・・


 その時、バタバタと走ってくる音がし、勢いよく障子が開かれた。

 ゼイゼイと息をするかおり。


 ちっ・・・間に合ってしまったか。


 「ちょっと!ほんとにブロックするなんてひどいじゃない!」

 「まだブロックしてない。返事をしていないだけだ」

 「それもひどい!」


 残念ながら、まだ着替えていないので柔道着のままだった。

 「すぐ着替えるから!道場で!練習するから!!」

 「がんばれ〜」

 「英ちゃんもいっしょにやるの!」


 その後、夕食まで練習につきあわされた。

 夕食もごちそうになってしまった。

 食べながら話す。

「食べたら帰るからな」

「え〜、明日も練習するから泊まっていけばいいじゃない」

「明日は仕事だから駄目だ」


 すると、信じがたいものを見る目で見てくる。


「あした、日曜日よ!?」

「大人にはなぁ・・休日出勤という言葉があるんだ。非常に残念なことだけど」

「安息日って決まっているはずよ!」

「絶対にキリスト教徒じゃないだろ!?」

 言い合う我々を、澄子さんはニコニコして見ている。


「じゃあ、明日仕事終わったら連絡して。迎えに行くから」

 ニッコリ笑う女子高生。

「・・・・」

「連絡して!!」

「・・・・」


なんとかその日は帰ることができた。

スーツはクリーニングされていたが、やはりあちこち穴が空いていた。

ぐすん・・・


ーーーー


 次の日。朝から休日出勤。

「澤木なんか疲れてないか?」

「あぁ。通り魔に狙われていてな」

「それ、警察呼んだほうが良くないか?」

「警察には言ったけど無視された」

「は?」


 やはり休日出勤だと捗る。

 夜の20時。仕事を終え帰宅しようとする。

 正面玄関を物陰から偵察・・・よし、いない!

 正面玄関から出て、駅に向かう。

 今日は、捕まらずに帰ることができそうだ・・あとは改札をくぐれば・・・


 その時、肩をぽん!と叩かれた。


 そこには、頬を膨らませた女子高生。

「お〜そ〜い〜。連絡してっていったじゃない、さ、帰りましょ!」

「俺の家は、改札を通らないと帰れない!!」

「いいから!晩ごはん用意してあるんだから!」


 そうして、連行され道場での練習につきあわされた。

 次の日も仕事だと泣きついたので、なんとか終電までには帰らせてはもらったが。


 ただ

「会社なら、ここに泊まったほうが近いのに」

 という、かおりが言った言葉に対し。

「そうね〜」

 と澄子さんがうなずいたことが気になったが・・


◇◇◇◇◇◇◇

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