第5話 JKにお持ち帰りされる

「終電・・いっちゃったよ・・」


 警官は一般市民を見捨てて行ってしまった。

 時計を見るとすでに夜中の1時近く。


 終電など、とっくに終わってしまった。

 英一は、自分の服装を見る。

 全身泥だらけ。タクシーに乗せてもらえるか怪しい。


「はぁ~・・・どうしよう」

 芝生の上に座り込む。


「英一さん、どうしたんですか?座り込んで」

 女子高生が無邪気に聞いてくる。

「終電逃したんで帰れないんだよ」

「へえ、大変ですね」

 いや、あんたのせいだかからね。

「ところで、なんで名前呼び?」

「え~?ダメですか?」

「そんなに親しくなったつもりはない」

「え~っと・・・じゃあ・・・”えいちゃん”で」

「話聞いてた!?」

「私も名前で呼んで欲しいなぁ~」

「それは無理」

「え~なんでよ~」

「名前知らないし、知りたくもない」

「私はかおりちゃんだよ~。山本かおり」

「だから、話聞いてた!?」

「さんはい・・・”かおりちゃん”・・・」

「・・・・」

「か・お・り・ちゃ・ん」

 グイっと近づいてくる。

「・・・山本さん・・・・」

「か・お・り・ちゃ・ん!!リピートアフターミー?」

 おわぁ・・・!?

 足を投げ出して座りこんでいる英一に跨って来た。

 この体勢はやばいって・・・

「かおりちゃん・・・」

 小声でつぶやいた。

 すると、女子高生は首をかしげて眉をひそめた。

「う~ん・・なんか違う・・」

 違うって何が!?

「じゃあ、試しに”かおり”て呼んでみて」

「・・・」

「か・お・り。 どぅゆーあんだすたん?」

「・・・かおり・・・」

 にぱっと笑う女子高生。

 いい加減、降りてもらえないですか?この状態は通行人に見られると非常にまずいんです。通報されます。

「じゃあ、一緒にウチに帰りましょう!!」

「は?どこに?」

「だからぁ・・私のうちに。歩いてすぐですよ」

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