第4話 公園でくんずほぐれつ

 その夜。帰ろうとして正面玄関を物陰から見ると・・・

 少女が待ち構えていた。

 怖くなった英一は裏にある通用口から帰った。

 次の日も・・・通用口から帰った。

 その次の日・・・正面玄関に少女の姿がないので、通用口を3階から見ると・・・少女が物陰から見張っていた。

 怖くなった英一は、警備員がいる裏口から帰った。

 その次の日・・・深夜に裏口から外に出ると・・・・




 そこには、涙を流している少女が佇んでいた。

 えぐえぐと泣きながら英一を睨む少女。

「ひどいです・・英一さん。私を避けるなんて・・」

 泣きながら近寄ってくるセーラー服の小さな女の子。

 ゆっくりと・・・両手を前に出し・・近寄ってくる



 殺られる!

 本能的に恐怖を覚えた。




 英一は走って逃げた。

「ここまでくれば、もう大丈夫だろう・・」


 15分ほど全力疾走。

 公園の中に逃げ込んだ。


 ラグビーで鍛えた走力。しかも相手はスカート。

 おそらく、もう追ってくることはないだろう・・・


 ぜいぜい・・・

 肩で息をする英一。


「あ~!!見つけました!」

 残念ながら、相手も足が速かったようである。


「もう、離しませんからね!」

 そう言って笑顔で飛び掛かってくる女子高生。

 言葉は可愛いが・・殺気があふれている。


 先日のように、腰のあたりにぶつかってくる。


 英一は、今度は足を前後に開き踏ん張った。これならば前からのタックルにある程度対処できる!!




 甘かった・・・




 相手は、英一のふくらはぎを持ち上げるようにつかみ腰に肩からぶつかって来た。


 朽ち木倒しという技である。


 再び、空中に浮かび上がった体をひねり、回転させる。


 ただし、先日とは大きく違う条件がある。

 ここは・・・公園の芝生の上であった。


 うつぶせで這いつくばった英一はごろごろと転がって逃げた。

 ”ボールが欲しい・・・”

 ラグビーボールを抱えていればクッションになるのに・・・


「あ~!また返されちゃった!」

 そう言いつつ、少女は英一の上に覆いかぶさってくる。


 上四方固め。

 少女の股間が英一の顔の上に覆いかぶさる。


 だが・・・体重差がありすぎる。

 力任せに持ち上げ、ひっくり返した。


「え〜これも駄目?」

 嬉しそうに、つぎの技を仕掛けてくる。


 腕ひし十字。

 袈裟固め。


 なんとか、体格差で逃れる英一。

 必死である。

 そんなことを繰り返しているうちに・・




「こら!!そこで何やっている!!」


 懐中電灯で照らされた。

 制服の男性・・警察官だ・・・助かった・・・。


「おまわりさん!たすけ・・・」


「ゲンさん?こんばんわあ」

「お嬢さん!?」


 どうやら、お巡りさんと少女は知り合いだったらしい。


「何しているんですか?こんなところで」

「ちょっと練習していたの」


 それを聞いたお巡りさんは、同情するような目をしてくる。

 英一は縋るように、助けを求めた。


「お巡りさん!?助けてください代わってください!」


 助けを求めた一般人に対して、公務員は笑顔で答えた。

「絶対嫌です」



 こいつ、見捨てやがったよ。

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