第2話 社畜はJKに押し倒された

 澤木英一26歳。会社員。


「だから、スポーツで体力があっても、残業できる体力があるってわけじゃないっての・・」

 ぶつぶつと言いながら、席を立つ。


 夜8時。

 席を立ったと言っても、帰るわけではない。腹が減ったので、近くのコンビニに食べるものを買いに行こうと思ったのだ。

 まだ、帰ることはできなさそう。


「お?どうした?もう帰るのか?」

 同期の嶋田が声をかけてきた。

「いやいや、コンビニに買い出しだよ」

「そっか、じゃあ気をつけろよ。最近、ここいらで通り魔が出るらしいからな」

「へえ・・・通り魔ねえ」

 元ラグビー部の英一は、体格に恵まれていた。かなり背も高ければ胸板も厚い。

 ふつうの通り魔なら裸足で逃げ出すだろう。

「ま、気を付けるよ」


 エレベーターで1階に降り、ビルの外にでる。

 近所のコンビニまではすぐである。


 オフィス街。この界隈はすでに人通りがほとんどない。

 すると、向こうからセーラー服を着た女の子が歩いてくる。

 高校生かな?この時間には珍しいな・・・。


 英一を見ると、女の子はとても嬉しそうに走って来た。


「あ・・あの!ちょっと付き合ってくれませんか!?」

「へ?」


 そして、英一の腰のあたりにぶつかってくる。両腕が両の太ももに強く抱きつく。

 英一の体が・・ふわっと浮いた。


 これは!! 

 英一は大学のラグビーの現役時代を思い出した。これほどまで綺麗にタックルを受けたのは久しぶりである。


 だが、残念なことにここは芝のグラウンドではない。


 アスファルトの上である。


 これは・・・死んだな・・・


 死の恐怖を感じながら、英一は必死に体を空中でひねった。

 腕や肘を突いたら折れる!


 落下の衝撃を回転エネルギーに変えるため、体をひねって回転させる。少なくとも頭を守るため、首に全身の力をこめた。

 肩に激しい衝撃を受ける。それでも体をひねってなんとか衝撃を受け流す。


 ごろごろと1回転して、仰向けになって止まった。

 肩に激痛・・・が・・折れたり脱臼したりはしていないようだ・・・


 ぜい・・・ぜい・・と荒い息をする英一。大けがは免れた・・・


「すごーい!!」


 死のタックルを掛けてきた少女は、仰向けになった英一の胸の上に抱き着いている。

「返したの、あなたが初めて!!」


 とても嬉しそうに、にぱっと笑う。


「お願い!私に付き合って!!」

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