女子嫌いな俺が憧れの街で3人のヒロインと恋が始まる物語

真城かえで

第1話 苦手の理由

 てっぺんの見えないコンクリートでできたビルに囲まれその下では車や人が溢れかえるほど通っている。

 それもそうだろう、ここは眠らない街東京。人も沢山いれば、生活に困らないくらい会社やお店も溢れかえっている。

 女性の化粧の匂いや、おじさんの加齢臭、飲食店のいい匂いなどが混ざりあって一言では言い表せない匂いが漂ってくる。

 元々地方の田舎で生まれ育った俺は大都会である東京に常に憧れを抱いていた。

 そんな俺は憧れである東京の大学に進学することが出来た。

 大学と言っても頭のいい東大とかではなくそこら辺の平凡な大学だ。

 憧れの東京で生活している訳だがこの時点で夢が1つかなったようなものだ。

 大学生活ではすぐに友達もできて今頃憧れの街で男友達とワイワイ楽しくできるはずだった。はずだったんだが・・・

「ゆうたー次は可愛い可愛い花音ちゃんとどこ行くー?」

「離れろ花音!優太は今から私とショ、ショッピングするんだ!」

「優太くんは渡さないよ〜なぜならこの私、愛白とパンケーキ食べに行くのだから〜」

 見ての通り今俺は3人の女子と歩いている。

「え、なんで?」

 周りから見れば世界中の男たちが羨ましがる状況だと思う。

 だが俺からすれば羨ましがるどころか、この時間が苦痛で仕方ない。

 なぜなら俺は女子が苦手だ。というより嫌いだ。

 このことを男友達に言ってもほんとに誰も信じてくれない。ほんとに誰も。

 にわかにも信じがたいがこの女子3人は俺に好意を寄せている。

 こんなことを世の男共に知られようものなら・・・想像することすら怖いくらいだ。確実に殺されるだろう。

 俺が望んでいたのはこんなラノベの主人公みたいなハーレム生活ではなく、男友達とワイワイ楽しい大学生ライフなんだ。

 なんで俺はこの世で1番嫌いなもの。しかも3人もの女子と歩いてるんだ。

「なんでこうなったんだよぉぉぉぉ!!!」

 今はこの状況をどう乗り切るかということだけを考えていた。

 俺が女子を嫌うのはちゃんとした理由がある。

 俺だって高校生の時までは1人の女子に恋をしていた。


 遡ること2年前。この俺、加藤 優太は地元の高校に通う高校2年生だった。

 今は12月の夜ということもあり空気は冷たい。鼻先が冷たく気を抜いたら鼻水が垂れてしまうほどだった。

 ここは地方の田舎なので駅にいるのにも関わらず人通りがほとんどない。

 ポツポツと歩いている人はいるがその人たちは駅のすぐ近くに家がある人たちだろう。

 部屋着で外を出歩いてる風景を見ているとこんなの都会じゃありえないのかなぁ。などと都会へのくだらない憧れを抱いてしまう。

 大学は都会の大学に進学しようと密かに考えてたりする。

 こうやって周りを見ているのには理由がある。そこまで大した理由ではないが、今俺の隣には1人の女子がいる。

 彼女は三島 涼香 。俺と同い年で隣のクラスの女の子だ。

「今日寒いねー。ズズッ」

 涼香はポケットに手を入れて鼻をすすりながら言った。

「そうだな。」

 特に話すことも無く一言で返す俺だが本心はもっと話を膨らませて涼香との会話を楽しみたいと密かに思っていた。

 周りを見ていたのはちょっとでも話題を見つけようとしていたからだ。

 こう言う寒い日には自然と寒いというワードしか出てこないから困ったものだ。

「そういえば、優太くんって家この辺なんだよね?」

 何を話そうか考えていた時に涼香の方から話をふってくれた 。

「ああ。ここから歩いて5分くらいの所にだけど、それがどうしたんだ?」

「いやぁ特に理由はないんだけど。なんか変なことでも考えちゃったー?」

 意地悪な笑みを浮かべて涼香が言う。

「そ、そんなことないし!人をからかうなよ!」

 不覚にも動揺してしまった自分が恥ずかしい。

 まあ、好きな人から匂わせるような発言をされたら誰だって動揺するはずだ。するよな?

 俺は誰に問いかけてるんだ・・・

「ごめんごめん笑 ちょっと優太くんの反応が見てみたくて」

 頬を赤く染め照れながら話す涼香がとても可愛くて俺もつられて照れてしまった。

「なんで優太くんが照れてるのー笑」

 俺はクスクス笑いながら話す涼香につられて一緒に笑っていた。

 そこからお互い話すことがなくなりまた沈黙の時間が続く。こういうときこそ風の音だったり車が通る音がより際立って聞こえる。

 さむさむーと言いながら手に白い息を吹きかける姿を見てそんな姿ですら可愛く見えて自分の気持ちを抑えきれずにとうとう言ってしまった。

「好きだ。」

 緊張と寒さと期待が相まって顔が真っ赤になっているのが自分でもよくわかる。

 正直俺は付き合えると思ってる。だってさっきの会話も確定演出だし!毎日メールしてるし!

 OKされたら思い切って抱きしめて、その流れでキ、キs・・・

「え、無理なんだけど」

「え?」

 俺はフラれた。

「優太くんが私に好意抱いてるってわかった瞬間キモく見えてきた、私帰るわ。じゃあ。」

 小走りで帰っていく涼香の背中をぼーっと見ながら5秒くらい経ってハッと我に返り俺は直ぐに涼香を呼び止めた。

「待ってくれ涼香!今のは絶対OKする流れだろう!!」

「は?意味わかんない!益々キモイから。」

「グサッ」

 なんか刺さった音がした。

 そんな俺を気にも止めずまた小走りで帰っていく涼香の背中をもう俺は引き止めなかった。というか引き止める精神力が俺にはもう残っていなかった。

 ゲームでの目の前が真っ暗になったとはつまりこういうことなのかと思いながら俺は空を見上げた。

 空から途端に白い綿毛みたいなものが俺の鼻先に着いた。

「こんな時に雪なんて振られてもせつない気持ちが増すだけだろう。」

 ぽつりと呟いた俺はこの時誓ったんだ。

「もう恋なんてするもんか。」

 この日から俺は女子と目が合わせられないくらい嫌いになってしまった。

 というか女子が怖くて怖くて仕方がない。トラウマってやつだ。

 この出来事が俺を女子嫌いにした原因という訳だ。


 これはそんな女子嫌いな俺が3人のヒロインと繰り広げる恋の話。

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女子嫌いな俺が憧れの街で3人のヒロインと恋が始まる物語 真城かえで @kae_bunko

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