第33話 世界の名はラシュドルグ



「俺はコイツを認めてないんだが、嬢ちゃんはどうなんだ?」



「えッ?僕?」


 急に話を振られてビックリした。

(僕は別に認めるとかそんなんじゃないんだけど?)

 

 アビゲイルさんも不安そうに僕を見ている。


「僕とアビーは友達で、義姉弟です。一緒にいたいですよ?」


 アビゲイルさんは今にも泣きそうな顔をしていた。

 僕の言葉に安心したのかもしれない。

 

「嬢ちゃんがいいなら勝手に着いてきたらいい。

 俺はお前を認めないけどな」


「お前は嫌いだ。もう認めてもらう必要もない。私はユウと一緒にいる」


 アビゲイルさんは僕に抱き着き、カインさんを睨んでいる。

 お気に入りの人形を取られないようにする女の子みたいに。

 

 アビゲイルさんってこんな人だったっけ?


「俺は嬢ちゃんが必要なだけだ。お前に何も求めていない」


「私もお前に興味ない。早く終わらせてどっか行け。消えろ。目障めざわりだ」


「お、ま、え、なぁッ‼やっぱり着いてくんな!おまえが消えろッ‼」


「断るッ‼私はユウのそばにいる!」


 なんでこんなに仲が悪いんだろう?

 2人とも僕より大人なのになんだか子供っぽい。

 この雰囲気がなんだか面白くて、


「ふ、フフッ、あははははっ!」


 僕は笑った。


「ユウッ!?なんで笑ってるんだ?」

「嬢ちゃん笑うトコねぇだろッ!?」


 僕はここにずっといたいと思った。


 この平和な場所に、楽しい場所に。

 僕を必要と言ってくれた2人の所に。


「平和だ、ねぇ。ププッ」



「ドコがッ!?」

「何がッ!?」


 息ぴったりじゃん。2人とも。

 あはははは。


 






 それから僕達は宿へと戻ってきた。


「はぁ!?記憶喪失ぅ?」


 僕はカインさんに簡単な事情を教えたんだ。

 この世界の事を知らなすぎる僕の事を不思議に思われない為に。

 それにスキルや、魔法の事を聞きたっかたし。





 カインさんやアビゲイルさんに聞いた話をまとめてみる。



 【スキル】とは


 スキルはなんでも特異な能力らしい。

 この世界の神様からの授かりもの。

 生まれながらに授かった者や、戦いの中で授かる者。

 場合によっては日常生活の中で授かる者もいるらしい。


 種類は数えきれない。

 どんなスキルがあるか誰にも分からないとか。


 もしかしたら、僕にもなにかスキルがあるかも。

 分かんないけど。



 【魔法】とは


 この世界にある魔法の素、魔素を使い、イメージを具現化する。

 ただ、誰にでも使える訳じゃない。

 そのイメージと適合、共調出来なければ具現化しない。

 逆に適合さえあれば複数の魔法を使えるみたい。

 その理由までは誰にも分からない。

 適合の条件さえ誰にも分からない。

 気付いたら使えていた、というのが現実みたい。

 ただ、セイレイが関係しているのでは?というのがこの世界の常識らしい。


 そして、それが発現した順に属性が付けられた。


 【第1魔法】 火

 【第2魔法】 水

 【第3魔法】 土

 【第4魔法】 風


 これが今でも一般的に使われる魔法。


 【第5魔法】 無


 これは属性の無い魔法。

 補助的な魔法らしい。

 カインさんが知っているのは身体強化効果の魔法だけらしいけど。

 

 【第6魔法】 闇


 これは主に魔族のみが使う魔法。

 ゲートという移動魔法や、

 影を操る魔法などがあるらしい。

 

 【第7魔法】 光


 それは伝説。

 使える者は数100年といない。

 ただ、癒しの光としてだけ伝わっているらしい。


 僕が使える魔法。

 それは僕だけにしか使えない魔法みたい?

 伝説なんて言われたら、テンション上がる。

 だって勇者みたいだし。

 だって主人公みたいだし。


 やったね!

 

 

 ついでにカインさんがこの世界の事を教えてくれた。


 世界の名は【ラシュドルグ】というらしい。

 ラシュドルグには4つの大陸があり、


 人族の地、ミッズガルズは西。

 亜人の地、ニダヴェールは南。

 魔族の地、ヴァルヘイムは東。

 最期に、未開の地が北にある。 



 今僕達がいる地はニダヴェール。




 これから僕達は仲間を増やしつつ、カインさんの故郷があるミッズガルズへと向かうらしい。

 そして魔族から人々を開放する。

 

 僕は僕で、道中で妹を探すんだ。 


 それが今からの目的。

 やるべき事なんだ。

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