第8話 僕の名前はユウ



 僕たちは無事にオオカミの群れを倒した。

 正確にはアビゲイルさん一人で、だけど。


 「すまないお嬢さん。

 いろいろと聞きたいことがあるのだが、

 少しだけ時間をくれないか?」


 確認してくるアビゲイルさんに僕はどうぞ、と頷いた。

 僕も聞きたい事がたくさんあるんだけど、急ぐ必要はないから。


 アビゲイルさんはオオカミの死骸へ歩いて近付き、

 腰にあるナイフを取り出してから、

 刃を立てて体内から何かを取り出し始めた。

 その何かを取り出されたオオカミの死骸は消えていった。


 「あれ?オオカミが消えた???」


 僕はアビゲイルさんが何しているのか分からなかった。


 「あの、アビゲイルさん?何してるのでしょうか?」


 アビゲイルさんは手慣れた動きでオオカミの死骸から紫の結晶を抜き出して、腰の袋に入れていく。

 なんだろう?あのクリスタル。

 宝石でも食べたのかな?

 僕の疑問にアビゲイルさんは手を動かしながら答えてくれる。


 「ん?知らないのか?この魔石はギルドで売れるのだが?」


 「魔石?ギルド?で売れるの?」


 魔石やギルドはゲームでよく出るからなんとなくは分かる。

 ただ、僕の知る現実には無かったものだから当たり前に言われても困惑するんだけど?


 「んむ?あぁ、私はギルド冒険者だから稼ぐ方法はこれしかない。」


 ギルド冒険者?

 なに?その職業?

 フリーターみたいなノリで教えてくれるけど命張り過ぎじゃない?

 ってかこのオオカミもそうだけど、

 なんでこんなにモンスター?がいるの?


 いや、そもそも赤い尻尾を揺らして頭の耳をピコピコさせてるなんて存在が答え、だよね。



 

 正解か分からないけど、僕はという事を今初めて実感した気がする。


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