第6話  伯爵令嬢は自身の行いに反省する

「でね、お兄様はこぉーんなに小さな頃から一人称は僕ではなく!! 然も思いっきり澄ましてよ。本当に少しも可愛らしくないの。その点一番上のエマ兄様はね昔から一人称はでその話し方が可愛らしくておまけにお顔はとても美しくて綺麗なの」


 親指と人差し指の幅はたったの2~5㎝。

 

 はっきり言って何処からどう突っ込んでいいのかわからないけれどもや。


 リゼ、あんたの5歳上のお兄様って一体何者なん。

 それで以ってこぉーんなに小さな時がそれくらいやったらや。

 現時点でその二番目のお兄様の身長は何㎝へ成長したのかを是が非とも聞きたいんやけれど!!




 親友となって早三年。

 私達はめっちゃ仲の良い関係を今も現在進行形で構築している。

 まあ大体何時も会話の始まりは大抵リゼの愚痴から始まるのやけれどもや。

 今日はかなりヒートアップしているのはどうやら噂の小人族。


 小人と言うのは私とジルの間で、まだ見ぬリゼの二番目のお兄様の渾名や。

 何かといえば直ぐリゼはを話題へ出してくるんやからな。


 だがしかし何時もながらその二番目のお兄さんと喧嘩……いやいや実際はそれすらもはっきり言えば成立してはいない。


 何故なら小人族のお兄様はリゼを全く相手にしてくれないと言うでのある。


                      byリゼの渾身の主張より。



 そして私とジルに姉弟はいない。

 所謂一人っ子。

 前世でも私に姉弟はいいひんかったからリゼの気持ちは今一理解が出来ひんな。


 しかしこうして限られた世界の社交をしていると何となくだけれどもだ。

 この三年のあいだで理解出来た事もあった。


 先ずと言うか大まかな所でやはりこの世界はゲームの設定と酷似している。


 また設定どおりこの国の公爵家は四つ、四公爵と呼ばれており序列トップは言わずと知れたゲルラッハ公爵家。

 序列二位は王妃様のご実家デュンヴァルト公爵家。


 この二家は常に拮抗していると言ってもいい。


 主な派閥は穏健派と革新派。


 勿論ゲルラッハ家が革新派なのは言うまでもない。

 以前に比べ最近では王族以上に力を持てばや。

 当主のゲルラッハ公爵は何時の日か王権を手中に収めたいと考えているらしい。


 おまけにこれは昔からだけれども色々と黒い噂の絶えないので有名。

 数年前からは妖しげな呪術まで傾倒していると言う。

 ある意味も糞もなくほんまにヤバい。

 だからして表立って……いやいや出来得る限り敵対したくはない家やな。



 序列二位のデュンヴァルト家はそう言う意味ではホワイト企業そのものという感じや。

 穏健派で王族を唯一と捉えるお家柄。

 目下公爵家の頭痛の種となっているのは王妃様のご体調が優れない事らしい。

 

 そう三年前のある日を境に王妃様は突如気鬱の病に罹られたとか。


 お母様が心配になって何度も王宮へ伺候されたのだけれどもだ。

 国王陛下までは会う事が出来たのに、何故か親友である筈やのに王妃宮へ入る事が叶わなかったらしい。

 

 現在王妃宮へ入る事を許されているのは息子である王太子と悪役令嬢……ってそうそう王妃様の看病をしている間に二人はすっかり打ち解けたとかでな。

 今では悪役令嬢は王妃様の一番のお気に入りとなっているみたいや。


 せやから自然と王妃様や王太子の周りはゲルラッハ家の者がよく立ち入っていると、小難しい顔をされたお父様が珍しく愚痴を零されていた。


 んーでも昔っからお父様はめっちゃイケメンやろ。


 イケメンの悩んでいるお姿。

 然も生きて動いて、おまけに直ぐ近くにいる。

 おまけに触っても怒られないいや寧ろ触れば直ぐに抱っこまでしてくれる!!


 これだけでご飯三杯は軽くいけるわな。


 とは言えだ。

 ここで問題なのは国王陛下。


 何故って?

 寵愛している王妃様が気鬱の病を患われてからほぼほぼ陛下に逢ってはくれへんと。

 また久しぶりに逢ったところで気分が悪いと言われればや。

 ぽいっと王様は直ぐ王妃宮より放り出されてしまうんやて。


 それをお父様の執務室でいじいじと、朝から晩まで湿っぽくも延々に愚痴られるものやからお父様は鬱陶しくて仕事が全く捗らないとお怒りモードなんや。


 まあ私的には一切関係がないからね。

 お父様には可哀想やけれどもや。

 王妃様が良くなられるまでは我慢して貰わんとな。



 私にとって最早関係ない世界での問題。

 ちょっと言い方は悪いけれどもや。


 関係のない世界で何が起ころうとも私にしてみれば知らんがな……である。


 だがここでまさかの親友を通してその関係のない世界の問題へと繋がっている何て一体誰が思う?


 うん、それは大きく回り回って気が付けばや。

 この後ちょっとした、ほんの小さな切っ掛けによってズルズルと、そちらの世界へ引き摺り込まれるなんて私は全然聞いてへんえ!!


 

 ……と言って高みの見物をしていたんが悪かったんやろか。


 そうして冒頭のリゼの愚痴へと戻るのであった。

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