第2話 伯爵令嬢はほんの少しだけ違和感を感じ……てはいない?
「よく来てくれたわねベティそしてティーネ」
「招待して頂き有難う御座いますわ王妃様」
今日は王宮のサロンにて王妃様主催のお茶会が催されている。
下は伯爵から上は公爵家までとは言えど何も国中の貴族が対象ではない。
当然そこは王妃様に選ばれた貴族家ばかりであるのは言うまでもない。
またこの場には何故か悪役令嬢もとい晴れて王子様の婚約者となったゲルラッハ公爵令嬢とその母親の姿は何処にも見当たらない。
本来ならば未来の王太子妃、王妃となる家だからこそこの場には誰よりも招待されなくてはいけない筈。
だが敢えて彼らを招待しなかったのは多分やけれども王妃様ご自身が公爵令嬢を認めてはいないという意思表示。
まあこれはこれで色々と問題が紛糾しまくりやと思うんやけれども、既に婚約者候補より外れた私には関係ないしはっきり言って知らんがな……だ。
そうしてお茶会は特に大きな問題もなく……いやいや王宮の、然も王妃様主催のお茶会の席で問題が勃発する事の方が可笑しい。
とは言え色々とはっちゃけた王妃様だからね。
何もなければそれでいい。
ただ問題があった時はこちらへ飛び火がしない様に母子で脱兎の如く逃げるまで……だ。
「まあ王妃様でしたのね。こちらの方で何かしら賑やかだと思いましたら……あら、お茶会を開かれておいででしたのね」
問題が向こうからやって来るとは流石に考えなかったよ。
一際大きなお声と王妃様へ向かっての不遜な態度で登場したのは御年10歳になられたばかりのゲルラッハ公爵令嬢と王太子だった。
怖いもの知らずと言うかうん、ある意味凄いキャラやな。
本物を見るのは今日が初めてやけれど確かにゲーム通りの勝気で綺麗な少女。
きっと大人になればめっちゃ美人になるのは当然やわ。
せやけど王妃様への態度はちょっと如何なものかな……何て思うのは私だけ?
また当然の事ながら騒ぎが起こると同時に私は自分自身は勿論の事お母様にもステルスを展開させた。
何故なら貰い事故を防ぎたいが為に決まっている。
そしてここは王妃様への挨拶なしに退場をするのは色々と無礼なのかもしれない。
だがそんな事は言ってられないよ。
うん何処でフラグが立てばだ。
何で未来が変わるかなんてわからないんやもん。
もう私の知るゲームとはかなり違っているのだこの世界。
だから何が起こり得るのかなんて想像も出来ないし対策も立てられない。
名前と登場人物が一緒だけの違う世界と化していたりする。
だってその証拠に王太子は悪役令嬢もといゲルラッハ公爵令嬢と婚約してしまった。
そうこのままいけば未来の王太子妃は私ではなくゲルラッハ公爵令嬢で悪役令嬢によって辺境伯へ――――ってちょっと待って⁉
悪役令嬢が王太子妃……王妃となればゲーム上での悪役令嬢となるのは一体誰なん?
そしてほんまに公爵令嬢が辺境伯の許へ下げ渡し……っていやいや辺境伯の好みは勝ち気な美人ではなかった筈。
だとすればほんまにこれからどうなるん!?
全くわからないしわかりたくもない。
ただただ平穏な人生を送りたいだけ。
でも今はお母様と一緒にこのお茶会から無事に退場しようっと。
そうして誰にも気づかれず静かに退場しようとした瞬間だった。
ちらりと視界に入ったのは、あの悪魔の様な王太子のめっちゃ怖過ぎる眼つきではなく何だろう、凄くぼんやりと、何だかどうでもいい様な感じの今まで見た事のない瞳がほんの少しだけ気になってしまった。
いやいやここで絶対に気にしたらあかん。
せや、私には一切関係ない事やしな。
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