第19話 伯爵令嬢と魔力測定の儀式 Ⅲ
名を呼ばれた者より儀式中央でちょこんと鎮座しているだろう黄金に輝く竜の像へと手を翳す。
ぶっちゃけ御神体と呼ばれし竜像は大きくない。
1mあるかないかの小さなもの。
故に台座の上でちょこんと鎮座している。
そして当然動かない。
また名を呼ばれる順番は何処の世界でもあるあるの忖度だ。
つまりはお貴族様からであり平民の子供達は最後。
それで以って高位の貴族の子息や令嬢からなのは言うまでもない。
そうして中くらいの、ちょうど真ん中辺りまで来た所で私の名は呼ばれたのである。
この順番に関してお父様と王太子があからさまに苛立っている様に見えるのはこの際まるっと無視する事にした。
だってその方が平和的……少なくとも私の心の中ではね。
「クリスティーネ・ハイデマリー・ティルピッツ」
「はい」
てくてくと竜像の前へと近づいていく。
そうして神官達へ促されるままに私は黄金の竜像へと手を翳す。
少しすればホワンとした白くも眩い光の中から浮かんだもの。
ステルス――――隠密。
それが私の魔力。
魅了とか魅了とか魅了ではなくっ、何物からも自身の身を隠す事が出来るこれからの私的には何とも素晴らしい魔力だった。
因みに魔力値は平均だ。
攻撃防御の魔法もど真ん中。
そこへ多少お情け程度の治療魔法……とは言っても簡単なものしか癒すしか出来ないレベル。
転生ものってこういう時は必ずチート能力ってものがあるのでは?
そう思いつつもやはりこれが現実なのだと妙に納得をするのは私だけなのだろうか。
とは言えステルスかぁ。
王太子達から身を隠す場合にはめっちゃ有効じゃね?
万が一本当にバッドエンドで辺境伯へ送られる時にはこの能力を上手く使って何処か遠くへとんずらをしよう。
儀式が終わればお父様とお母様は私の能力に満足してくれていた。
そう特にお父様が……ね。
まあそれに関してしつこくは突っ込まない。
王太子は側近達によって『陛下が呼んでいる』と伝えられればだ。
少し、うんほんの少しだけ部屋の温度は下がったけれども仕方なくと言った感じで王宮へと戻っていった。
うぇ~い王様最高!!
この調子で何時でも王太子を呼び戻してや~。
私はガッツポーズでめっちゃ喜んでいた。
だがしかしである。
この日を最後に王太子は我が家へ訪れるはなくなった。
まあ我が家……私としても精神が安定するのでそこは素直に喜んだのである。
そしてそれからひと月程経ったある日の事。
王太子とゲルラッハ公爵令嬢との婚約が伝えられたのであった。
ゲームの流れとは少し違うけれどもだ。
どうか末永くお幸せにやで。
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