第16話  あれから二年経ちました

 時が流れるのって思ったよりも早い。

 私がティーネとして、また王太子の婚約者候補となってしまってから約二年が経過した。


 精神的にはもっと……そう百年は経ったんとちゃうかって思ったんやけれど……。


 

 いやぁこの二年もの間……もうなんかね、全然ゲーム通りにいかないって言うかよ。

 抑々そもそもあのゲームの始まりは私=ティーネが12歳で王太子が17歳だったんやもんね。


 だから現在7歳である私の人生がどうなっているか何てモノは全くの予想外と言うかしっかり想定外である。


 おまけに5歳の時点で王太子とファーストコンタクトもあり得ないっちゃあり得ない。

 ほんまに何処までがゲームで何処からかがオリジナルと言うかそれともだ。


 この世界は実際に存在する世界であって偶々登場人物が日本で販売されていただろう乙女ゲームと被ったとか?



 いやいやそれは流石にないやろ。

 そんな事が罷り通ったらよ。

 日本で販売されているだろう乙女ゲームだけで幾つ世界が存在すると思うん。

 まさかと思うけれどそのゲーム全てに似通った世界が存在する何てあほな事はないよね?


 

 まあ今はそんな大きな話なんてどうでもいい。

 一番のそう私の生死に係る現実問題としてはだ。

 明らかに闇……そう恋愛小説ものの男主人公にあるあるの闇を思いっきり纏っているだろう王太子の存在がはっきり言って怖い。


 そしてその距離感が半端なく近いっっ。


 大体王子様業って色々お忙しい筈では?

 現在12歳の王子様は国王さんと一緒に執務を行っていると聞いている。

 うん未来の国王としては何かとお忙しいでしょう。

 だから我が家へ来る時間も普通にないと思っていたんよ。

 なのに――――。



『御機嫌よう麗しのクリスティーネ嬢。君に似合うと思ってペンダントを持ってきたよ』


『こんにちはクリスティーネ嬢君へ捧げる朝一番に咲いた、君の髪と同じピンクブロンドの薔薇を愛しい君へ捧げよう』



 何故だろう一日若しくは二日おきに必ずと言っていい程我が家へ訪れる王太子。

 極上の微笑みを湛えているのに何故かめっちゃ怖いと思う相手。


 まあそれはそうだよね。

 

 今はまだ無害かもしれない。

 でもその十数年後には確実に私をバッドエンドへと最後の一押しをしてくれるだろう人物やもん。

 

 出来得る事ならば一生関わり合いたくはない。

 そして遠くで目の保養……いやっ、その目の保養をする代わりに命を差し出せるんか私よ!!


 答えは即断即決でNOだ。


 そんなひと時の欲望を満たす為だけに己の命何かを差し出せっこないやん。

 だったら答えは一つしかない。


 そうこの状況から逃げるが一択!!



 幸い今生のお父様とお母様はめっちゃいい人達で、何よりも私を愛してくれている。

 去年の秋の除目じもくでは高齢の宰相閣下が退任され、その後任としてお父様が新宰相となられたんよね。


 それでお父様は宰相としての権力を如何なく発揮していると仰っていた。

 まあその辺に関しては余り詳しい事はわからない。


 うん簡単に言えば王太子と王様へを多めに割り振ればだ。


 普通に執務室へ籠りきりになるくらいの量を毎日させていると仰っていたのにも拘らず、何故か爽やかスマイルで颯爽と登場してくる王太子へ私とお母様は何も言葉を発する事も出来ずにただただ表情筋を親子揃って引き攣らせていた。



 おい、あんたお父様が振り分けた仕事はどないしたんや。

 まさか放り出したんとちゃうやろな。


 え、全部終わらせた?


 然も父親の、国王さんの分は置いてきたってあんた――――⁉



 私は最近特に思う。

 この王太子……何時の間にキャラ変したんやろうって。

 だってゲームの中の王太子はこんな闇を纏っていなかったんよ。


 めっちゃ爽やかイケメンだったけれどもだ。

 それに加え清々しい程の女ったらし且つチャラ男だったんやのに……ね。


 それともチャラ男属性が発揮するのはこれからなんでしょうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る