第15話  犬猿の仲 Sideディート Ⅱ

 余計なものを映さなかったこれまでの私の世界。


 そしてベティと知り合う事でこれまで白と黒の二色しか存在しなかっただろう私の世界が見る間に鮮やかな色彩へと変わっていきましたよ。

 あれは今思い出してもそれはもう見事なくらいに……ね。


 だがそんな愛しいベティの傍には何時も――――リアがいましたよ。


 ええ間違いなく私の邪魔をしている事に直ぐに気付きましたね。



 先ずクラスも違えばそこは男女の必須科目と言うかです。

 普通科と淑女科の授業内容は全く違い私はベティと過ごす時間は非常に限られるのです。


 当然の事ながら私は父より彼女の実家であるリープクネヒト侯爵家へと婚約の打診をしたのは言うまでもありません。

 そう幸運だったのは彼女の実家と我がフォーゲル伯爵家が仕事の面で交流を以前から持っていたと言う事により私達の婚約はトントン拍子に進んだのですけれどもね。


 あれは後もう少しで婚約が無事なされると言う時でした。

 まさかのベティ本人から正式の婚約は学院を卒業してから――――と言われたのはね。


 はっきり言えば人生初の敗北と挫折を味わいましたよ。

 そんな新しい感情を教えてくれただろう彼女へ問い質そうとしてもです。

 常に愛しいベティの傍にはアレがべったりとくっつけば、正直に言ってこの私が以ってしてもあの年頃の女友達の間へ入り込む余地が見つけられなかったのです。


 まあまだ私は成人前でしたしね。

 然も女性に惹かれたのはベティが初めてだったのです。

 当然この私と言えども女性の扱いに全く慣れてはおりません。



 そう今日があるのも全ては愛しいベティを得んが為に私のたゆまぬ努力の賜物なのです。

 あらゆる視点から女性を、ベティを愛し彼女を私のものにせんが為の努力を行った結果です。


 当然の事ですがその全てにおいて他の女性を代用品と言えども相手にした事は一度としてありません。

 全て私の脳内でシュミレーションを重ねに重ねてです。


 とは言え学院卒業後にようやく愛しいベティとの婚約へと漕ぎ着ければです。


『ごめんなさい。リアがどうしても傍にいて欲しいと涙を流してお願いをするものですから……』


 あの瞬間アレに対し猛烈なる殺意が芽生えましたよ。


 

 ええ私とは違いアルとリアは卒業と同時に結婚をしたのです。

 確かにそれまでに何度もアルを焚きつけたのは他の誰でもないこの私です。


 学院時代は色々とリアは邪魔をしてくれましたしね。

 それにリアと私は紛れもなくベティを巡っての恋敵でしたので、敵を遠ざける効率的な手段としてまた腐れ縁のアルの積年の想いを叶える意味もありましたからね。


 そうそう結婚が決まった瞬間はリアが真っ赤になって怒鳴り込んできましたが、そこはきちんと返り討ちにしてやりましたよ。


 ベティとの婚約式の招待状を直接渡して……ね。


 後は未来の王妃として公務と世継ぎを儲ける為に色々と多忙になればです。

 私のベティへ容易に近づく事も出来なくなると思っていたのですが――――誤算でした。


 きっとらしくなく愛しいベティと無事婚約を果たせば喜びに浮かれていたのでしょうね。


 一年後の結婚式に心を躍らせておればです。

 結婚式の打ち合わせを始めた頃にリアの懐妊の知らせが入れば悪阻が酷い、はあ勝手にバケツを抱えて吐いていろ……とまあ相手がリアだけに、そこは身重の女性へ対する配慮が足りない所は大いに反省をしておりますけれどもね。


 だからと言ってと言う理由にかこつければです。

 ベティを話し相手として王太子妃宮へ伺候させれば、無事子を出産する迄宮へ留まって欲しいと言ってのけたのですよ!!


 無論それを聞いた私は反対をしましたよ。

 けれども時は既に遅し……ベティの屋敷へ飛んで行けば何としてでも思い留まらせようとしたのにっ、一足遅く彼女はリアの許へと向かった後でした。


 そうして無事出産を終えこれでベティが帰ってくるかと思えばです。

 今度は産後の肥立ちが悪いと言って何故か三年も、ええ何度も面会を申し出ましたよ。


 その度に『ベティ様は今御手が離せない状況です』と、判で押された様な言葉を何度聞かされた事でしょう。

 当然リアの夫であるアルにも直談判すればです。


 まるでこの世の幸せを全て手に入れた様なニヤケ切った表情で『いやぁベティには悪いと思うのだけれどね。でもリアがどうしてもって可愛くお願いをするのだよ』そう答えやがるのですよ。


 こいつリアの掌で上手く転がされおって!!


 何度アルへ殺意が湧いたかなんてもう答えられませんよ。

 

 実質結婚までに待たされた……愛しいベティとの愛を深める事の出来なかった期間は四年です。

 流石のリアももうこれ以上は無理だと察知したのでしょうね。


 それと同時に私がリアの父上である現宰相の補佐となり、彼と彼の家に関する弱みを幾つも握った事により宰相閣下が自ら王太子妃殿下へ色々と言い含めておいでのようでしたからね。



 漸く我が妻となった愛しいベティを監禁。

 家々ただ夫婦で愛を深め合っただけですよ。


 然もたった三ヶ月だけ。


 たったそれだけでリアは何度文句を言ってきた事でしょう。

 まあ全て無視をしましたがね。


 そうして私とベティの間に可愛い天使が舞い降りたのです。

 

 ああ可愛いクリスティーネ、私の宝物。


 ベティ同様にこの世に掛け替えのない存在。


 なのにアレはベティばかりではなく今度は愛らしいティーネにまで食指を伸ばそうとしている!!


 大方王子の婚約者と称しベティ同様にティーネも傍近くで侍らせようとしているに違いないでしょう。

  

 だがそうは簡単にさせやしませんよ。

 五年前は私がまだ未熟だったと言う事もありますが今は違います。


 私は愛する者達を何としても護ると決めたのですよ。

 たとえこの国を出ようともです。


 私は決してリアの思い通りにはなりません。

 そしてカール殿下、リアの息子……それ以上に面倒な相手となりましょうが私は堂々と貴方方へと打ち勝てば、見事愛する者達を護っていく所存です。 


 



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