第13話  犬猿の仲 Sideリア

「もうっ、貴方はこの国の王でしょ!! どうして何時もディートの上に立てないのよ!!」


「い、いや少し落ち着こうかリア」

「これが落ち着いていられる訳がないでしょう!!」


 本当に腹立たしいったらない。

 

「母上そう怒鳴られては……。コレでも一応我が国の国王だからで――――」

「お、おいカール今のとは少し酷くないか。俺はお前の父親で……」

「アルは少し黙っていらして!!」

「はいぃぃぃ⁉」

抑々そもそもカール、何故貴方までもがディートにまんまと言い込められてしまったのよっっ。アルならばまだわかるわよ。でも私が一番解せないのはアルでなくて生まれた時から賢かった貴方が大人しく引き下がる訳がないでしょ」

「お、おい妻と子で俺を貶めるなっっ」

「「貴方(父上)は黙っていて!!」


「ひ、酷い……」


 全く腹立たしい。

 本当に昔からだったわ。

 あの男――――ディート。

 フォーゲル伯爵家現当主であり私の愛しいベティの夫……ね。



 私達四人は学院で出会ったの。

 勿論ベティとはもっと幼い頃からの付き合いよ。

 私が公爵家の令嬢でベティは侯爵家の令嬢として家族ぐるみで仲も良くそして実の姉妹の様に育ったの。

 

 いえっ、厳密に言えば私は実の姉妹以上の感情を今も昔も……そしてこれからも抱いていくわっっ。


 ああそれだからと言ってアルを愛していない訳ではないのよ。

 それなりに恋愛感情もあるし、何と言ってもアルとの間にはカールと言う可愛い宝物を授かったのですもの。


 ただ……ね。

 もし法律や様々なしがらみがなければ、そして何よりもベティが私を受け入れてさえくれれば私はきっと――――。


 いいえそれ以上はたらればだわ。

 幾ら私がベティをどの様に愛していたとしてもきっと彼女は私を選ばない。

 

 そうディートヘルム・ライマー・ティルピッツ、あの男の存在がある限りベティの愛は永遠に私のものにはならない。


 そしてディートは私がベティを愛する様に彼もまた彼女を愛している。

 いえ、あれは私の愛情と同じと言うよりも想像し難いくらいの色々とヤバいものを抱え過ぎているわ。


 何故ならその証拠に結婚当時約三ヶ月もの間ベティをしていたのですもの!!


 幾らベティを愛しているからと言って私は彼女を監禁……してもいいかも――――ってあいつとは一緒にして欲しくはないっっ。

 


 私は何時もあのあどけなくも可愛らしい微笑みを愛でていたいのよ。

 鬼畜同然の監禁野郎と私は根本的に違うのです。

 だからディートを見限って何時でも愛しいベティを捕獲……こ、コホン、えーっと保護が出来る様に王宮の一室をちゃんと用意してあるのよ。


 ベティが望むのであれば郊外の離宮へ一緒に長期間滞在してもいいわ。

 その時は悪いけれど公務はアルとカールに引き継いで貰えばいいわね。


 何故なら可愛いカールは素晴らしく優秀なお子様ですもの。

 本当にアルのお馬鹿な所が全く似ていなくて、正直浮気疑惑を持たれないかと内心ひやひやしたものよね。


 勿論浮気なんてしていないわよ。

 でも本気なのは何時でも可愛いベティだけ。

 アルはまあまあ本気……かしら。

 お馬鹿な所が可愛いっていう感じ?


 その愛しいベティが子供を産んだの。

 然も女の子!!

 何かと理由をつけてベティーと生まれて間もないティーネの許へ向かったわ。

 すると聖母に抱かれる愛らしい天使が眠っているじゃない。

 もう興奮するなと言う方が無理だったわ。


 父親であるディートより受け継がれたものはキラキラと光り輝くエメラルドグリーンの瞳のみ。

 艶やかなピンクブロンドの髪やマシュマロの様に柔らかくも真っ白な肌と愛らしい容姿の何もかもが母親である私のベティの幼い頃と瓜二つ。


 ああこの様な喜びをまた味わえるだなんて本当に幸せだわっっ。


 愛するベティをディートに奪われた私は今度こそ、そう今度こそ愛しい者を絶対手に入れてみせる。

 


 それがたとえ愛する息子を犠牲にしようともよ。

 ごめんなさいね悪いお母さまで、どうか許して頂戴カール。

 でも私には可愛くて愛しい者が傍にいなければ生きてはいけないの。

 

 そして貴方の妃はこの子……クリスティーネに決定よ。


 きっと貴方も気に入ると思うわカール。

 だけどもし他に好きな女性が現れたのであらばその時は側妃若しくは愛妾として迎え入れなさいな。


 ああ勿論ティーネの事を貴方が心配しなくともよいのですよ。

 あの子の事はこの母が生涯を賭して護ってみせますからね。

 ですから形だけの婚約と結婚をして欲しいのです。

 貴方にはそれ以外を望んではいないのですからね。


 だからと言ってそこは貴方の母親らしく息子の幸せを祈っているわよ。

 これは紛れもない真実だから信じて頂戴。


 そうして今度こそむさ苦しい男のいない愉しい生活を送りましょう。

 出来ればベティも王宮へ来てくれるといいのだけれど……。



 さあこれから忙しくなりそうだわ。

 ふふんディート、今度こそ貴方の思う通りに何てならないわっっ。


 そう思っていたのにまさかのカウンターパンチを受けてしまった。


 いえっ、まだ勝負は始まったばかりだわ。

 ええ次こそは絶対にディートをぎゃふんと言わせてみせるのですからね!!

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